2021年に突然、夫が時津風部屋の親方に。当然、妻の小泉エリさんもおかみさんという大役を担うことに。「急におかみさんって務まるの?」「いきなりの重責でストレスは?」相撲界で育ってきたわけでもない、いち相撲ファンだった女性が歩むことになった運命。しかも、小さいお子さん3人を育てながら。側からみれば目が回りそうな状況でも、話しているときの小泉さんの目は輝いていました。
いきなり、相撲部屋のおかみさんになる
── 2021年、小泉さんの夫である元土佐豊関が時津風部屋を継ぐことになりました。マジシャンや吉本芸人として活動していた小泉さんが突然「相撲部屋のおかみさん」になることが決まり、どんな気持ちだったのでしょうか?
小泉さん:「青天のへきれき」とはこのことだなという感じでした。親方(夫の時津風親方)も、まさか自分が部屋を継ぐとは思っていなかったんです。もともと私は子どもの頃から相撲が大好き。でも、相撲界のしきたりなどについては何も知りません。しかも、当時はコロナ禍。人との接触を控えなくてはいけない時期で、何から始めたらいいかも分からない状況でした。
── とても大変な時期だったと思います。おかみさんとしての経験はまったくないなかで、最初はどんなことに取り組んだのでしょうか?
小泉さん:まずは時津風部屋に所属する力士に「おかみさんとなった私にどんなことをしてほしいか」を聞いてみました。すると「敬語をやめて、本名の下の名前で呼んでほしい」と言われたんです。でも、相撲の大ファンである私からすると、恐れ多い要望です(笑)。力士は憧れであり、神さまのように尊い存在。それをなれなれしく本名で呼び、タメ口で話すなんてとんでもないと思って。でも、力士全員が同じ意見だったので、頑張ってフランクに接するようにしました。
また、力士全員の親御さんの電話番号を聞き、一人ひとりにご挨拶の電話をかけました。力士は10代などの若い人が多いので、親方が代わることを心配する親御さんもいるだろうなと思ったんです。すると「親方とおかみさんを本当のお父さんとお母さんだと思って頑張りなさいと送り出しています。よろしくお願いします」と、みなさん言ってくださって。とても心強かったですね。

一人ひとりの子ども時代のエピソードや、相撲を始めたきっかけなどをお聞きして、全員の力士の歩んできた道のりを知ることもできました。
その後も場所ごとに親御さんに連絡をして、「今場所は調子がいいですね」などとお話をするようにしています。力士の様子や稽古姿を撮っては親御さんにLINEで送るなど、近況報告のように連絡はまめにしています。
「礼状書きに部屋の修繕」やることは山ほど
── まるで本当のお母さんのようにこまやかな気配りですね。
小泉さん:お母さんみたいな存在なんて恐れ多いです。私のなかでは、本当のお母さんの代わりではなく、「担任の先生」みたいな感覚かもしれません。当時はちょうど子どもたちが幼稚園に通い始めた時期で。私自身が「子どもが幼稚園でどんなふうに過ごしているんだろう?」と知りたかったから、自分が先生方にしていただいて嬉しかったことを真似しているんですよね。
── 力士たちにはどのように接しているのでしょうか?
小泉さん:できるだけ相撲とは関係のない話をするように心がけています。恋バナもよくしていて「じつは彼女がいるんです」なんて話も聞いています。当然ですが、私は相撲経験がありません。相撲のアドバイスはできないから、私は力士たちのいちばんのファンとして、応援する立場でありたいと思っています。
── おかみさんとしてはふだん、どんな仕事をしているのですか?
小泉さん:関係者などから差し入れをいただいたらお礼状を書く、後援会へのご挨拶、相撲部屋のガスコンロの修理の手配といった、裏方の仕事を一手に担っています。でも、おかみになって5年経ちますが、いまだにおかみの仕事の全容がわかっていないんです。知らないことだらけ…というより、知らないことに気づいてすらいないのかもしれません。毎日、学ぶことが多いなあと感じています。