生前整理は死ぬ準備ではなく、今を生きること

ひとり暮らしの男性からの依頼で処分した、トラック2台分の本の一部

── モノが多い家や人になにか特徴はありますか?

 

ドイツさん:今までいろいろな家を見てきて、モノが多いと思う人にはふたつの特徴があります。ひとつめはストックを大量にする人。日用品はもちろん、いつ使うかわからないのに「もし壊れたら…」と、屋根を補修する瓦を大量に買い込んでいる人もいました。瓦は屋根が壊れてもそこまでたくさん必要なわけではないのに、軒下いっぱいにびっちり置かれていることもあります。しかも、1枚がとても重いので、一度に持てるのがせいぜい4、5枚。捨てるのも大変なんです。コロナ禍や災害によってラジオや懐中電灯などを買う人も増えました。適量なら大切な備えですが、家のスペースは限られているので、不安によって必要以上に備蓄してしまうと家にモノが溢れてしまうのです。

 

ふたつめはモノをやたらと掛けたがる人。カーテンレールやドアにハンガーを、さらに壁にフックをつけてそこに帽子やバッグをかける。キッチンの壁に調理器具や輪ゴムをたくさん掛けている人もよく見ます。結果、適切な収納量やモノの数が把握できなくなり、必要以上のモノが増え、家中に溢れてしまうように思います。

 

── でも、片づけや捨てるのが苦手な人も多いですよね。なにかコツはありますか?

 

ドイツさん:苦手な人は片づけをしていても「いつか使うかもしれない」となんでもとっておきたがります。だからこそ「最初に絶対に捨てないモノを決めておき、それ以外は捨てる」と決めることが大切です。たとえば貴重品、生活必需品のほか、お気に入りの写真だけは残しておきたいとか。ただ、そう決めたとしても身内の方が片づけに参加すると「懐かしい」「高かったから捨てるのがもったいない」と感情が入ってしまい、なかなか片づけが進みません。

 

なので、捨てないモノを決めても片づけに行き詰まるようであれば、私たちのような専門家など、第三者に介入してもらうのも有効です。第三者であれば余計な感情を挟まずにいるモノかいらないモノか冷静に判断でき、物を減らしやすくなると思います。

 

── すべてのモノをとっておくことはできませんしね。

 

ドイツさん:「生前整理をする」と聞くとちょっと勇気がいりますよね。「私にはまだ早い」「まだ死ぬわけではない」など、自分に遠いことのように感じてしまいます。でも、「死ぬ準備」などと考えずに早いうちからモノを捨てて片づけることは、いらないモノに囲まれた生活しづらい環境から抜け出し、のびのび生きることにつながると思います。

 

そして万が一自分の身になにかあったときも、モノが少なければ残された人たちがプロに頼ることなく身内だけで片づけることができます。モノが多い状態を当たり前とせず、周りの人のためにもぜひモノを少しずつ片づける習慣を意識してみてください。

 

取材・文:酒井明子 写真:ドイツみちこ