19歳年上の夫とふたりの子どもたちと暮らすイラストレーター・横峰沙弥香さん。最近、小学生の子どもたちの疑問や悩みに答える夫の発言に、数々の名言が散りばめられていることに気づいたそう。そんな夫が「悪口を言わない」と決めている意外な理由とは──。
人の悪口を言わない夫「嫌いな人間がいないわけじゃないけど」
夫は人の悪口を言わない。だからといって嫌いな人間がいないというわけではなく、人並みに特定の誰かを疎ましく思ったりすることはもちろんあるのだそう。そんなとき私だったらお酒でも飲みながら身近なだれかに愚痴って溜飲を下げたい気持ちにでもなりそうなものですが、夫はそうはならないらしい。

たとえば誰かからひどい扱いを受けて傷ついたとして、自分の気持ちを理解してもらうために、そのときの状況を思い出して人に説明するという作業がまずキツい。思い出すのも気分が悪いことをわざわざ思い出して人に話すことで、イヤな気持ちを2度味わうことになるのだと。
たしかに私も似たような理由でネガティブな出来事を自分の書くエッセイや絵日記に残さないよう気をつけています。ただでさえイヤな記憶は脳に固定されやすい。わざわざ細かいディティールまで思い出して推敲なんてしていたら一生忘れられない気がする。
悪口はたとえるなら「少量の毒」
それから、悪口って言った直後はスッキリするけれど、時間が経つにつれてじわじわと罪悪感が襲ってきますよね。夫いわく、その罪悪感が薄れてしまうことがイヤなのだそう。




「悪口」の成分はいわば「少量の毒」。自分で扱いこなせるうちはいいけれど、刺激の強い快楽に体が慣れきってしまうとそれらは手軽な娯楽となり、気がつくとそこに溺れている。しかも「悪口」は無料でできてしまうものですから、溺れてしまったが最後。その毒を体から抜ききるのはほぼ不可能なので、最初から手を出さないほうがいいという選択なのだそうです。

夫は長年吸っていたタバコを苦労して辞めた経験があり、その言葉にはたしかな重みを感じました。そばで話を聞いていた息子にもしっかりと伝わったようで、以来息子の口から友達の愚痴を聞いたことがありません。
私とお酒の関係にも通ずるものがあり、自分もいろいろ気をつけようとハイボールを飲みながら思ったのでした。

PROFILE 横峰沙弥香さん
よこみね・さやか。イラストレーター。長崎県出身、1984年生まれ。2015年、第一子誕生を機に、長男「まめ(愛称)」との日常を絵日記にしてインスタグラムに投稿を開始する。2017年に長女「ゆめこ(愛称)」が誕生。著書に『まめ日記』(かんき出版)、『まめ日和』(光文社)、『ちんちんぼうずのだいぼうけん』(KADOKAWA)、電子書籍『へたのよこずき1・2』(主婦と生活社) などがある。