夫婦は別れたとたんに他人になり、相手を悪く言ったり、関係が断絶することだってあるでしょう。しかし、歌手のマルシアさんは2004年の離婚後も元夫と連絡をとりあい、父と娘との関係継続に心を砕きました。20年経ったいまも「感謝」が口をつきます。(全5回中の3回)
父親として務めを果たしてくれた
── マルシアさんは俳優の大鶴義丹さんと2004年に離婚しました。当時5歳だった娘さんは現在27歳で、出産もされています。娘さんが成長した現在、元のパートナーについてはどんな感情を抱いていますか?
マルシアさん:とても感謝しています。離婚して私の夫ではなくなったけれど、彼は娘の父親であり続けてくれました。父親としての役割をきちんと果たし、娘に愛情を注ぎ続けてくれたのは、かけがえのないことだと思います。何よりも彼がいなかったら愛する娘はいませんでした。彼と出会ったのは、「最愛の娘を授かるためだったのかもしれない」とさえ感じています。
彼のすばらしいところは、娘への思いをきちんと行動であらわすところです。娘が学生だったころは、学校の行事にはいつもきちんと参加してくれました。経済的な部分では20歳になるまで養育費を毎月払い続けてくれました。こんなにきちんとしてくれるとは思わず驚いたし、金銭的にはとても助かりました。別々の人生を歩んでも、一緒に子育てをした感覚があります。
パパの悪口を言ったことは一度もない
── 娘さんと父親は現在、どのような関係でしょうか?
マルシアさん:とても仲がいいです。ふたりの間には、私が立ち入れない絆みたいなものがあるようです。離婚したときにまっさきに感じたのは、私たち夫婦が別れても、娘から父親を奪うのは違うなと感じていたんです。だから「父娘として交流を続けてほしい」と願っていました。現在まで、良好な関係を築くふたりを見るのはうれしいです。
離婚当時、娘はまだ5歳でした。物心がついてまだ間もない時期だったので、娘には彼が父親であることは忘れないでいて欲しかったんです。娘が成長したときに「パパに会いたい」と思ったら、自分で会いに行ける環境は作っておきたいと思っていました。それに万が一私に何かあったら、娘にとって頼れる人はパパだけになってしまう。だから、娘と彼の関係をどのようにつなげていくかを最優先に考えていました。
── 娘さんと元夫さんの関係を良好にするために、具体的にはどんな行動をとられたのでしょうか?
マルシアさん:娘が小さいころは通っている学校に関することや、子育てに関する連絡事項の共有はしていました。また、離婚後は娘の前でパパの悪口を言ったことは一度もありません。そこは絶対に言ってはいけないと思うんです。ネガティブな言葉は口に出さないほうがいいですから。結局、全部自分に返ってくるんですよね。離婚を決めたときはすごく腹が立ったこともありました。でも、マイナスな感情って手放したほうがいいんですよ。好きなこと、楽しいことに目を向けていれば、いつの間にか忘れています。あとは、人と話して気分転換することも大事だと思います。これまでシングルマザーとして働きながら子育てするなかで、いろんな人に支えてもらいました。
それに、やっぱり娘にとってパパは尊敬する人であるべきだと思っていました。母親である私が悪く言えば、娘のなかのパパは嫌な存在になってしまうから、そこはずっと気をつけていました。私自身も彼のことをすごく尊敬しているんですよ。自分の親の次に尊敬している人と言ってもいいかもしれない。仕事に対する真剣な姿勢や、役者、小説家、演出家といろんな才能もある。仕事人として、ひとりの人間として、立派だと思います。やっぱり一度は結婚までした人だし。元夫の悪口を言うってことは、彼を愛した自分自身も否定することになるんだと思います。