2人の息子が小学校受験を経験した青木裕子さん。子どもにマッチする学校選びが大切だと思いながらも、一生懸命に取り組む過程で「どこかには受かって」と願うようになった時期もあったそう。そんなときに、夫の矢部浩之さんのブレないひと言がありがたかったと言います。(全3回中の2回)
小学校受験はマッチング「就職活動と似ている」
── 小3と小5の兄弟を育てる青木さん。息子さんは2人とも小学校受験を経験していますが、ふり返って感じることは?
青木さん:小学校受験は「子どもや家庭の特性と学校の相性」が大切だと感じました。私自身は小学校受験を経験していないのでわからないのですが、高校や大学受験と比べて、自分にマッチする相手(学校)を選ぶ点で、小学校受験は就職活動と似ているなと思います。有名校に行くことがすごいのではなく、家庭の教育方針や「6年間こんなふうに過ごしてほしい」といった希望をふまえ、合う小学校を探すイメージですね。わが家では「どんなふうに子どもを育てていきたいか」など教育方針について、夫婦で話し合う時間を大切にしました。
── 「自分たちに合う学校を探す」という考え方なんですね。でも、いざ受験となると迷ったり、ストレスを感じる人たちもいます。
青木さん:受験は合否がわかれますから、受験直前の時期は多少、しんどく感じることがあるでしょう。「この学校に行かなきゃ」と、学校ありきで受験を始めると特にしんどいだろうと思います。また、小学校受験は点数だけで不合格になるものでなく、生活態度や友達との接し方を見られ、親の面談も含まれることもあります。何がダメで不合格なのかわからず、それまでの子育てを否定された気持ちになるのもわかります。経験上、就職活動もそれまでの人生を評価される部分があり、落ちると人生を否定された気持ちになるので、やはり似ていますね。
ほかの受験者との兼ね合いも合否をわける要素になりえます。ある意味マッチングだと割りきって「しょうがないな」と、受け止められる自分を持っておくといいと思います。
── 小学校受験は、複雑な要素がからみあう世界なんですね。
青木さん:いまは世の中も、複雑な方向に動いているのではないでしょうか。偏差値で進学先を決めるよりも、それぞれの価値観で生きていくことが求められる社会になっていくでしょう。私は偏差値で学校を決め、就職活動もこれくらいの会社に行けばいいのではと、わかりやすい尺度の中で生きてきた人間なので、これからの子どもたちは大変だろうなと思います。だからこそ、自分の価値観で物事を決める力を身につけるには、やはり、子どものときからたくさんの経験を積み重ねることなのかな、と考えます。
── ご長男の受験は、最初にどんな話をしましたか?また、兄に続いた弟の受験時はどんなふうに考えましたか?
青木さん:長男が通っていた幼稚園では受験するお子さんが多かったので、本人も受験を希望しました。志望校選びやどういう取り組み方で臨むかは、家族でよく考えましたね。どうしても私立の小学校に行かないといけないと考えていたわけではないので、わが家や子どもに合う学校に入るという目的を見失うことはやめようと、最初に話をしました。よく、第二子のほうが受験はしんどいと言われます。お兄ちゃん・お姉ちゃんが先に入っているから、同じ学校に入れなければ困るという気持ちがあるからだと思います。でも、うちは本当に性格の違う兄弟なので、同じ学校に入れようとする気持ちはまったくなく、気楽だったかもしれません。実際は同じ学校に入ったので、行事などの際は同じ学校でよかったと感じていて、結果オーライです。
受験校選びで右往左往する私を支えてくれた夫の言葉
── 受験については、ご夫婦でも話し合いをされたのですか?
青木さん:私がリサーチして、夫に説明しました。夫自身は教育についてこだわりが強いわけではありませんが、私が示したものに対して「それはいい」「それは違う」などと夫なりの意見を述べてくれました。
私だけだと「どこかには受かってほしい」という気持ちになり、最初は考えなかった学校も受けようと言い出すときがあって、その際は夫が「それはちょっと違うんじゃないか?」と、思いとどまらせてくれました。私は「こっちの学校もいいかも」と、フラフラしてしまうときに、夫がぶれないでいてくれたのはありがたかったです。それでいて、彼は知らないことは「知らない」とはっきり認めることのできる人なので、小学校受験を真っ向から否定することもなかったです。
── 受験についても、夫婦の役割分担がうまくいっていたのですね。
青木さん:そうですね、一緒に右往左往されても困りますし、あまり意見されても、私がワーッとなっていたかもしれないので、ちょうどいいバランスでした。夫は、勉強は教えませんが、いざというときに力になってくれました。