亡くなって10年経った今も残しているもの
── 夫婦で子育ての方向性など、決めていたことはありましたか?
ダンカンさん:いっさいない。子どもは自由で伸び伸びしていればいいし、俺とママリンの子どもだから、悪い人になるわけないよねって言ってました。息子たちは、小さいころから野球をやっていたからかちゃんと挨拶もできたし、長女も合わせて上の人に対して敬意を払うことはできてると思いますね。
── お仕事で忙しかったと思いますが、お子さんと向き合う時間はありましたか。
ダンカンさん:全部ママリンに任せっきりですよ。何から何まで任せっきりで、学校行事は授業参観も運動会もほとんど行かなかったな。ママリンに父兄で参加する競技にも出てもらったし、根が積極的な性格だからうまくやってくれてたみたい。自分が面倒見たって言えるのはいちばん下の虎太郎だけですね。虎太郎は風呂入れたり、プールに連れてったりすると、あれがしたいとか、ここが痛いとかいろいろ言うんだけど、なんて子どもって愛しいんだろうって思ったね。そう考えると、上の2人に対してはこんなに素晴らしい時間があったのに、みずから放棄してほんとうにもったいないことをしたなって後悔しました。
── 奥さんから「私ばっかり家事や子育てをしている」と言われたことはありますか?
ダンカンさん:いっさい言われなかった。そういうもんだと思ってたんじゃないかな。
── けんかもすることもほとんどなさそうですね?
ダンカンさん:どうだろうな。本気のけんかはなかったでしょうね。最後、病気が進行していたころに軽い口げんかみたいにはなったことがあったけど、たぶん抗がん剤の影響もあってつらかったんだと思います。メールがきて「ごめんなさい。全然役立たずですけど、これからもよろしくお願いします」ってちょうど結婚25年目くらいだったと思います。ママリンが亡くなって10年経つけど、いまだに携帯電話は解約せずに持っています。
PROFILE ダンカンさん
1959年生まれ。埼玉県出身。俳優、放送作家、脚本家。1983年にたけし軍団入り。現在は株式会社TAP所属、同社専務取締役。
取材・文/松永怜 写真提供/ダンカン