「宝塚に入る」というかつて母の夢から始まった舞台人生。今は10歳年下の伴侶との日々を重ねながら、がんを乗り越え、今またミュージカルの舞台女優にチャレンジしているそうです。(全4回中の4回)

運命の相手は身近な人

愛華みれ
神頼みで伊勢神宮を参ったことも

── ご主人との出会いはどのようなものだったのでしょうか?

 

愛華さん:私が宝塚の舞台に立っていたころから、スポーツマッサージの先生としてお世話になっていたんです。お友だちというより、完全に先生と患者の関係で。でも、舞台が終わって施術を受けながら、気づいたらいろんなことを話していました。

 

「ここの筋肉が凝っているのは、何か『イィー』って体に力が入るような原因がありましたか?」と聞かれると、「昨日、これが頭にきて…」と他人だからこそ話せることがたくさんありますよね。毎回「明日も元気に舞台に立てるようにメンタルを整えましょう」と。そうやって少しずつ、気づいたら彼は私のことを全部知っている人になっていました。

 

── そこから結婚へと進まれた背景は?

 

愛華さん:40歳を過ぎて、「私にはもうご縁がないのかな」って思っていた時期があったんです。ある日、気分転換にひとりでドライブに出かけて。私、信号が赤になったら右か左かなど直感で決めて進むのが好きで。そうしているうちに羽田空港に着いたんです。そこで出雲行きの便を見つけて、思いきって飛行機に乗りました。出雲大社でお参りをして、近くの八重垣神社へ。私、宝塚の舞台のストーリーに出てきた八重垣神社にお参りしたいと思っていたんです。

 

八重垣神社には良縁を占う「鏡の池」がありました。和紙を池に浮かべて近くで沈めば身近な人とご縁があるという占いなんですが、私は「遠くで沈んでもいい、外国の人でもいいから」と思って水に浮かべてみたら、すぐ目の前でストンと沈んだんです。

 

実はそのとき神様に「来年、私に『好きです』とか『つき合ってください』とかアピールしてきた人と結婚します。誰でもいいです」と祈ったんです(笑)。それが10月のこと。その年の大晦日に、今の主人から「よかったら年越しに来ませんか」と誘われて。私「来年」と言ったからまだ今年じゃないと思っていたら、年が明けた1月1日に「一緒になりませんか」と言われたんです。「あ、この人だ!」と(笑)。神様とのお約束どおりに、そうしておつき合いが始まりました。

 

── 病気が見つかってからも、ずっと支えになってくれたそうですね。

 

愛華さん:実は、がんになったことが結婚のきっかけにもなったんです。それまでの私はひとりで生きていく気満々でした。でも病気で少し弱気になって、初めて周りの優しさに気づけたんですね。特に忘れられないのが、副作用でうつ状態になってベランダから下ばかり見ていたとき。彼に「月がとても綺麗ですよ」と言われ、見上げた満月に不思議と心が癒やされました。「私なんてちっぽけな存在で、生きるも死ぬも私が決めることじゃない。ただ、今を精一杯生きればいい」と。そのときの月の満ち欠けが何か生命の営みに通じるような気がして。「まぁ、お月さまが決めてくれるでしょう」と、すーっと肩の力が抜けたんです。

 

家族からは鹿児島に帰ってきなさいと言われたんですが、私は東京で治療を受けたくて。ありがたいことに、彼の家族までもが病院に送り迎えをしてくれたりと、みんなで支えてくれる体制ができていったんです。最後は彼のお父さまから「そろそろ、うちの子をもらってくれないか」って(笑)。1月1日は私の母の誕生日でもあり、宝塚でもトップお披露目を1月1日にしたこともあってご縁を感じ、2009年1月1日に入籍しました。役場の方が気を利かせてくれて、1月1日1時1分にしてくださったんです。

義母に夫婦げんかを諭されて

愛華みれ
結婚披露宴では真っ白なドレスで登場

── ご結婚されてからの生活はいかがですか? 

 

愛華さん:主人は10歳年下なのに職業柄か落ち着いていて。「あなたは、もうちょっと落ち着きなさい」なんて私が諭されることも(笑)。でも、私が病気のときに「病気も性格のひとつだよ」と言ってくれて、その言葉にすごく救われました。お互い、いいところも悪いところもあるけれど、それも含めて個性なんですよね。私も主人の「ここはどうかな」と思うところも「それも彼らしさね」と受け止められるようになって。2人でそれぞれのたりないところを補い合いながら過ごしています。

 

── 今は義理のお母さんとも同居されているそうですね。

 

愛華さん:ええ。夫婦げんかをしたときなど、まるで実の母のように「もう、お母さん聞いて!」と相談に行くんです。主人も「え、お母さんに言いに行くの?」って(笑)。いっぽう、母は「もう寝なさい。こんな時間にけんかしなさんな」っていったんは諭してくれるんですが、翌日、私が言えなかった気持ちを主人に代弁してくれたりするんです。すると主人が「あのときはごめんね」と。そんなお母さんはいつも私の公演を楽しみにしてくださって、お友達も誘って観に来てくれるんです。キラキラした舞台を見て喜んでくれるのがうれしいですね。