19歳年上の夫とふたりの子どもたちと暮らすイラストレーター、横峰沙弥香さん。最近、小学生の子どもたちの疑問や悩みに答える夫の発言に、数々の名言が散りばめられていることに気づいたそう。イソップ童話の名作『北風と太陽』の展開にツッコミを入れる息子に対し、父が提示した意外な視点とは?

勝ち試合と知りながら勝負にのった「太陽」に釈然としない息子

人生で大切なことをわが子に伝えるために「童話」を使う。

 

これは夫がとりがちな手法で、以前にも『王様の耳はロバの耳』を使ってネットリテラシーについての話をするというエピソードを取り上げたことがありますが、先日夫と息子がなにやらおもしろそうな話をしていたのでのぞいてみたところ、ふたりが見ていたのは『北風と太陽』でした。

 

横峰さん連載第9回_漫画1

どちらが強いかで争う北風と太陽。そこに通りかかった旅人を見て、北風が太陽に勝負を仕掛けます。

 

「あの旅人の服を脱がせることができたほうを勝ちと決めよう」

 

先行の北風は強い風を吹きつけて旅人の服を脱がそうとしますが、寒さのあまり余計に服を着込む旅人。対して太陽は旅人に向けてポカポカと温かい日差しを送り、旅人はあっさりと上着を脱ぐ…という流れですが、まめはこの物語にひっかかりを感じたようです。

 

横峰さん連載第9回_漫画2
横峰さん連載第9回_漫画3

明らかに自分に分があるとわかっているのに、太陽はなぜ黙って勝負にのったのか。まめが違和感をもった部分はここで、自分なら心苦しくてそんなことはできないと。

 

さすがにそれだと自分が圧勝しちゃうから、もう少し公平なルールを提案するよとボヤくまめに夫は続けます。

「それが社会というもの。北風にだけはなるな」

横峰さん連載第9回_漫画4
横峰さん連載第9回_漫画5
横峰さん連載第9回_漫画6
横峰さん連載第9回_漫画7

そう。それが社会というもの。イキった末に当たり前の結論すら見失ってしまった北風の愚かな選択も、周囲からしてみれば肥やし以外の何物でもなく…。自身が結果を出すために、たいていの大人は搾取という手段に出るでしょう。みんな守るべき生活がありますから。

 

それがいいか悪いかは置いておいて、とにかく北風にだけはなるな、というのが夫のアドバイスでした。

 

PROFILE 横峰沙弥香さん

よこみね・さやか。イラストレーター。長崎県出身、1984年生まれ。2015年、第一子誕生を機に、長男「まめ(愛称)」との日常を絵日記にしてインスタグラムに投稿を開始する。2017年に長女「ゆめこ(愛称)」が誕生。著書に『まめ日記』(かんき出版)、『まめ日和』(光文社)、『ちんちんぼうずのだいぼうけん』(KADOKAWA)、電子書籍『へたのよこずき1・2』(主婦と生活社) などがある。