2019年にプロゲーマーのふ〜どさんと結婚。3年後に長男の湊くんを出産しますが、「言葉が遅い」「友だちとうまく関われない」といった傾向が見受けられて── 。(全3回中の2回)

息子の診断にショックで何も手がつかない

長男出産直後の倉持由香さん
2021年、長男・湊くんを出産

── パートナーのふ~どさんとの出会いは?

 

倉持さん:ゲームセンターです。ゲームのイベントで仲のいいプロゲーマーさんに紹介してもらって、ひと目ぼれをしました。中野ブロードウェイにある小さなゲームセンターで「ストリートファイターⅣ」という格闘ゲームで活躍する姿がかっこよくて。たまたま2人とも地元が船橋だったので、中野から船橋まで総武線で帰る間に仲よくなったのが交際のきっかけです。

 

夫は結婚してから「妻がグラビアアイドルなんて嫌じゃないですか?」とたまに聞かれるんですけど、私がグラビア活動をすることを夫はまったく嫌がらないですね。夫はゲームが大好きで、プロゲーマーという職業がないころからゲームをやってきて、世界大会で優勝してプロゲーマーになったんです。「自分も好きなことをやっているので、妻も好きなことをやったらいいと思う。嫌なことはやらなくていいし、やりたいことはやったほうがいい」というのが夫の考えで、私がやりたいことを尊重してくれるのがありがたいですね。私も、夫のやりたいことはずっと尊重したいと思っています。

 

── ステキなパートナーですね。

 

倉持さん:夫は感情の起伏がなくて、いつもフラットなんです。15年間のつき合いのなかで、怒ったり泣いたり、声を荒げたりしているところを見たことがないんですよ。夫が参加している格闘ゲームの大会では、負けたらすぐに敗者復活戦が始まります。負けてもすぐに気持ちを切り替えて「どうして負けたのか、次はどうすればいいか」を分析しないといけないから、そのせいかもしれません。私はジェットコースターみたいに感情の振れ幅が大きいタイプなので、いつでも落ち着いている夫の存在に助けられています。

 

息子の湊が自閉スペクトラム症と診断されて、私がショックで何も手につかなくなってしまったときも、夫が冷静に励ましてくれて救われました。

「ここで悩んで時間を止めても意味がないよ」

お宮参りでの倉持由香さん
お宮参りでの記念ショット

── 湊くんが診断を受けたのはおいくつのときですか。

 

倉持さん:2歳半のころです。1歳前までは、発達の遅れを気にすることはありませんでした。月齢の発達目安の通りにハイハイもしていたし、立って歩くこともできたので。気になり始めたのは1歳からですね。言葉が出なくて、1歳半検診で指摘もされたんですけど、「男の子は言葉が遅いことがあるよ」といろんな人から言われて、そんなものかな、と。でも、2歳になってもしゃべらないし、保育園でもお友だちとうまく関われない。ひとりでおもちゃを並べて遊んでいるのを見て、もしかしたら…とは思っていました。

 

病院を受診したのは、2歳半のとき。きっかけは、湊が頻繁に吐くようになったことです。1日に何度か、少量の甘酒のようなものを戻してしまうことが続いて、小児科をはしごしたのですが原因がわからず、大きな病院で検査をしても胃腸には異常がないからと、児童精神科を紹介されました。病室に入って2、3分で、先生に「おそらく自閉スペクトラム症の可能性が高いです」と言われました。「定型発達の子なら、初めての場所や初めての先生に緊張して親の後ろに隠れたり、先生を見つめたり、挨拶したりするのに、湊くんは一目散におもちゃへ向かっていってひとりで遊んでいますよね。これは自閉スペクトラム症の特性に当てはまるんです」とのことでした。後日、詳しい発達検査を受けたら、やはり自閉スペクトラム症と診断されました。吐くのは「反すう」という、自閉スペクトラム症の子によくある行動だったみたいです。

 

── 診断されたときは、どんなお気持ちでしたか。

 

倉持さん:診断された直後は、霧の中にいるというか。思い描いていた未来が急に見えなくなってしまった気がしました。これからどうなってしまうんだろう、湊はいつか「パパ」「ママ」って言えるんだろうか。ランドセルを背負って学校へ行く日を想像していたけれど、そんな日は来るのかな、40歳、50歳になった湊とどう向き合えばいいんだろう、などといろいろ考えたら不安になってしまって。1か月くらい、仕事も育児もろくにできない状態でした。

 

そのとき、夫が「ここで悩んで時間を止めてしまっても意味がないよ。1分1秒でも早く、湊のためになることをしていこう。一緒に湊のことを攻略していこうよ」と言ってくれたんです。そこから、前を向くことができるようになりました。

 

── 具体的にはどのように?

 

倉持さん:まずは、住んでいる区で再度診断を受けて「通所受給者証」をもらいました。そうすると療育施設に通えるんです。今も、保育園に通いながら週に1回、療育に通っています。療育の効果を実感しているので、私たちは早く始めてよかったと思っています。湊には感覚過敏があって、大きい音が苦手なんです。以前は、小さい子の泣き声を聞くと耳を塞いだり、泣き声を止めたくて口を押さえつけようとしたりしてしまっていたのが、最近は泣いている子をハグしに行ったり、一緒に悲しそうな顔をして涙を流したりするようになりました。絵カードなどで根気よくコミュニケーションを取ってきた効果が出てきて、飲み物がほしいときはマグや冷蔵庫を指差しますし、「おでかけしよう」と言うと玄関へ歩いていって、自分でスッとベビーカーに座ります。意思疎通ができるようになった安心感からなのか、反すうで戻すことも減りましたね。

 

私は、湊の特性や関わり方を学ぶために「児童発達支援士」の資格を取りました。自閉スペクトラム症児の母としてテキストを読むと「湊にはこんなふうに見えているのかな」と湊の気持ちを読み解きながらスーッと内容が入ってきます。学ぶことで、私自身の気持ちの整理にもなりましたね。今年4月にはNHKの『バリバラ』という障害についてタブー視せずに取り扱う番組で、湊のことをお話しさせてもらいました。