飼育放棄などで動物愛護センターで保護されたり、野良となってしまう動物たち。「すべて救いたいけど、それはできない」と話すのは、アコムのCMで一世を風靡したタレントの小野真弓さん(43)。活動を長く続けるために見据えていることがあると言います。(全4回中の1回)

ペットを飼うようになり動物の保護活動に興味をもち

── 現在の小野さんは、動物の保護活動に力を入れているそうですね。なぜ取り組もうと思ったのでしょうか。

 

小野さん:もともと動物が大好きで、6年前、ペットショップでチワワとマルチーズのミックス犬をお迎えしました。そうしたら、近所にうちの子たちの姉妹を飼っているご家族がいて!一緒に散歩に行ったり、食事をしたりするようになりました。

 

── 愛犬の姉妹がたまたま近所にいたとは、驚きますね。

 

小野さん:そうなんです。ペットショップにいた子犬の姉妹に出会えるだけでも奇跡的なうえに、飼い主のご家族とも親しくなれるなんて、素敵なめぐり合わせだと嬉しくて。それがきっかけで「この子たちにはもっと他のきょうだいがいたのかな?お父さんやお母さんはどうしているのかな?」と、気になり、ペットを取り巻く状況について調べるようになりました。

 

そこで厳しい現実を知って…。愛情深く動物に接する、良心的なブリーダーさんがたくさんいる一方で、動物を商品としてしか見ていない人たちもいるんだと学んだんです。一部の悪質な人たちは、高値で売れる子犬だけを必要としていて、親犬は子犬を産む機械のように扱い、劣悪な環境に放りっぱなしにしている場合もあるようで…ショックでした。そこでペットはもちろん、捨て犬や捨て猫など、つらい環境に置かれた動物たちがいることに気づいたんです。自分にできることはないか考えるようになりました。

「かわいそう」だけでは動物を保護できない

── 具体的にどんなことをされたのでしょうか?

 

小野さん:最初は捨てられた動物を保護し、飼育しながら引き取り手を探す民間の動物保護団体に、活動支援になるようお金を寄付しようと思いました。でも、保護団体もたくさんあるから、どこに寄付をしたらいいのか迷ってしまって。

 

そこで、動物の保護に関わる行政機関である保健所や動物愛護センターで、保護された動物たちのお世話ができないかと考えたんです。でも、こういった行政施設は基本的に公務員が働いているため、一般人は気軽に出入りができません。実際にボランティアをすることになったときのために、トリマーの資格を取得しました。

 

あるとき、愛護センターでボランティアしている方と知り合うことができました。「私もご一緒させてください」と連絡したところ、快諾してもらって、現在は犬や猫を保護してお世話をし、里親を見つける活動を中心に行っています。

 

── 保護活動をする際、気をつけていることはありますか?

 

小野さん: 一番大事なのは「長く継続して保護活動を行うこと」だと思っています。かわいそうな動物はたくさんいるので、保護活動には終わりはないんです。道端で捨てられて、目ヤニで目が開かないとか、明らかに病気を持っていそうなつらそうな子たちを見ると、みんなお世話をしたいし、連れて帰りたくなってしまいます。

 

でも、感情に流されて自分のキャパシティを超えた頭数を引き受けてしまうと、金銭面でも生活面でも崩壊し、結果的に周囲に迷惑をかけてしまいます。だから、きちんと管理できるのか冷静に判断する必要があります。長く活動を続けるためにも、まずは自分の生活の基盤をしっかりつくることが大切だと思っています。だから本業である芸能活動に取り組み、活動を続けていきたいです。現在のわが家には、もともと飼っている1匹の犬と、6匹の猫がいます。2匹の猫は新しい家族(里親)を探しているところです。

坂上忍の保護活動スタッフとしても働くいま

── 坂上忍さんが運営される動物たちの保護ハウス「さかがみ家」の一員としても活動されていますね。どんなきっかけで一緒に活動することになったのでしょうか?

 

小野さん:以前テレビ出演したときに坂上さんと話す機会があり、そのときに保護活動やトリマーの資格勉強をしていることなどをお話ししていました。坂上さんからも動物の保護ハウスを作ろうとしている話をうかがっていました。

 

その後、坂上さんが千葉県袖ケ浦市に「さかがみ家」をオープンしました。私も千葉県木更津市に移住していたのですが、「スタッフとして協力してほしい」とご連絡をいただき、「私に協力できることがあればなんでもやります」とお伝えしたのがきっかけです。「さかがみ家」ではトリマーとして、保護されている犬や猫たちのお手入れをしています。「さかがみ家」は一般社団法人で、スタッフも仕事として保護活動に取り組んでいるため、私もスタッフとして働いたぶん、時給をいただいています。

 

── ボランティアとして活動するのと、仕事として取り組むのとでは、異なる部分はありますか?

 

小野さん:ボランティアでも仕事でも「動物たちを幸せにしたい」思いは一緒だと思います。現状では、保護活動を支えているのはボランティアの方がほとんどです。ボランティアを行う人がいないと、保護活動自体が立ち行かなくなってしまいます。ただ、活動が負担になり、途中でやめてしまう人がいるのも事実です。「さかがみ家」は寄付やクラウドファンディングに頼らず、動物の保護活動を仕事としてとらえています。スタッフとして働けば給与も出るから、経済的な理由で活動を断念する人も少なくなる気がします。その結果、継続的に活動を続けることができるはずです。

 

ボランティアとして取り組むか、仕事として保護活動に向き合うか、人それぞれだし、どちらが正解というわけではないと思います。私は、個人でもボランティア活動をしながら、「さかがみ家」のスタッフとして働いたことで、動物保護に関して、いろんな考え方やアプローチ方法があるんだと学ばせてもらいました。ぐっと視野が広がったと思います。

 

PROFILE 小野真弓さん

おの・まゆみ。1981年生まれ、千葉県出身。「アコム」のCMで人気に火がつき、グラビアアイドル、俳優として活動。2019年、東京から千葉県木更津市へ移住。 地域猫活動や預かりボランティアを行い、俳優の坂上忍氏が所有する動物保護ハウス「さかがみ家」のスタッフとしても活動中。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/小野真弓