モデル歴約30年という鈴木サチさんは、第一子が1歳、第二子が生まれたばかりという大変なタイミングでピラティスインストラクターの資格を取得。さらに、第四子妊娠中に、自身が経営するピラティススタジオをオープンしました。「これがしたい」と思ったら即行動に移すパワフルさは、一体どこからくるのでしょうか。(全4回中の3回)

いつでも「できない」ではなく、「やりたい」が勝つ

モデルの鈴木サチさん
自身が経営するピラティススタジオでのレッスン

── 子育てが大変な時期に、長く活動してきたモデル業と両立する形で「ピラティスインスタラクター」の資格を取得されたそうですね。大変な道のりだったと思いますが、どうやってモチベーションを継続されたのでしょう。 

 

鈴木さん:それ、よく聞かれるんですよね(笑)。むしろあまり深く考えていなかったからできたのかも。「出産したばかりだから」「子育てが大変だから」と理由をつけてなにかを諦めるっていう発想自体がないんですよね。

 

いまの状況に関わらず、単純にやりたいと思ったらやる、調べる、行動する、失敗する、もう1回やり直す。ただ、その繰り返しです(笑)。

 

ピラティスインストラクターの資格を取ったときは、上の2人がまだ小さいうえにフルワンオペだったので、確かに子育てはすごく大変でした。そのうえで勉強もするとなると、ほんとに時間がなくて。子どもたちを寝かしつけてから勉強しようと思っているのになかなか寝ない…!ということも。そういう日は膝の上で寝かせつつ勉強したりもしました。「子どもが夜中に起きるから勉強できない」と思うことはなかったけれど、ただただ「大変だぁ」って感じでしたね(笑)。

 

──「起きてきちゃったな、いったん中断しようかな」という程度で、それをマイナスと捉えてイライラしたりしないんですね。

 

鈴木さん:起きてくることも想定内なので、自分でできる範囲で工夫して時間を確保していました。「やりたくてもやれない」ことを環境や人のせいにしても仕方ないので。

 

── 2013年にはホノルルマラソンに出場して完走されていますが、そのときも同じようなマインドだったんですか?

 

鈴木さん:そうですね、単純に「マラソンに出場したいからやる」というだけ(笑)。とはいえ、現実的には子育てしながらだと時間の工面が難しいことも当然あります。だから、マラソンに出場するために「この時間が空いているからここで練習できるな」とか「ごはんを作り置きしておかないと」などと、「実現するためにどうしたらいいか」を常に考えていました。

 

モデルの鈴木サチさん
「いつかホノルルマラソンに出場してみたい」という夢が叶った

人間関係の失敗からピラティスがキライになったことも

── ピラティスインストラクターの資格を取って、仕事として成り立たせるまでの道のりは順風満帆だったのでしょうか? 

 

鈴木さん:思いつきで行動してしまうぶん、失敗は多いです。「とりあえずやってみてから考える」というスタンスで、物事を進めてきました。実際にやってみて「違うな」と感じることもあるし、失敗したこともいっぱいあります。

 

── 差し支えなければ、どんな失敗だったのか教えてください。

 

鈴木さん:20代のころに一度、ピラティスのインストラクターになりたいと思ったことがあったんです。そのときはよく調べもせず「ピラティス インストラクター 資格」とネットで検索して、一番上に出てきたスタジオをポチっとして入会しちゃった。そこのピラティスの先生とソリが合わなくて…。ピラティスが苦痛で終わってしまったことがありました。

 

── そのときもそれほど悩まず、もう次の道を探す気持ちに切り替えたのですか?

 

鈴木さん:基本的にはそういうタイプなのですが、そのときはなんかもう、ピラティス自体が嫌いになっちゃって。「もう2度とやりたくない」と思ってしまい、しばらくピラティスから離れていました。それが、2人目の出産後にたまたま再開するきっかけがあって。今度こそしっかりリサーチして自分に合っていそうな先生やスタジオを選びました。

産後3か月でモデル復帰「ピラティスのスゴさ私が伝えなきゃ」

── それは、どんなきっかけだったんですか。

 

鈴木さん:第二子を出産したのが6月14日だったんですけど、3か月後の9月の撮影に復帰してほしいと言われて。となると、3か月で体型も体調も戻さないといけないわけで。第一子の産後は体型も体調もなかなか戻らなかったので「どうしたらいいんだろう…」と迷った末、まず加圧スタジオに行ってみたんです。そこで出会ったのが、たまたまピラティスの先生で。

 

第一子のときは18キロ増えた体重がぜんぜん減らなくて悩んでいたのですが、第二子の産後、そのピラティスの先生のもとへ週1回通ったら、3か月でみるみるうちに体型が戻ったんです。体調もよかったから、「私、そういえば結婚する前からピラティスインストラクターやってみたかったんだった」って思い出して。

 

モデルの鈴木サチさん
自身の妊娠中もピラティスで心と体の均衡を保っていたそう

── 通うだけにとどまらず、インストラクターを目指したのはなぜだったのでしょうか。

 

鈴木さん:私がピラティスで、産後にすごく前向きになれたんですよね。だから、世の中のママにもこの感覚を知ってほしいと思いました。「これは、私が伝えていかないとダメなやつだ」と思ったんです。使命感にかられた…というか。それも、ただ言葉で「産後はピラティスがいいんだよ」とかではなく、産後の体型戻しに悩んでいるママに「私自身が直接、ピラティスのよさを教えていかないと!」と思い立って。

 

そこからです。私もイチから勉強し直そうと、産前産後ピラティスを学びました。ライセンスを取得するために、必死に勉強をしましたね。フルワンオペで大変な時期ではあったけど、当時は「やりたい」という気持ちしかありませんでした。おかげさまでスタジオもオープンし、現在ではモデルと並行してピラティスインストラクターの仕事もいただけるようになりました。

 

── 取材後、第五子を出産されて約1か月が経ちました。今はどのような状況ですか?

 

鈴木さん:1か月検診が終わったら、ピラティスを再開する予定です。産後はどうしてもホルモンバランスが崩れて鬱々としがちですが、私にはピラティスがあるから大丈夫!という感じで、心身ともに安定しています。

 

PROFILE 鈴木サチさん

1979年愛知県生まれ。10代からファッションモデルとして活躍。モデルとして約30年活躍するかたわら、ピラティスのSTOTT PILATES(R)認定インストラクターを取得し、第四子妊娠中の2022年に自身のスタジオをオープン。ピラティスインスタラクターとしても活動中。2013年にホノルルマラソン出場し完走するなど、スポーツが得意な一面も。プライベートでは、14歳、11歳、5歳、2歳、0歳の5児の母。

 

取材・文/松崎愛香 写真提供/鈴木サチ