前夫との子2人と現在のパートナーとの子3人と暮らす、いわゆる「ステップファミリー」という形を選択しているモデルの鈴木サチさん。前夫との離婚を経て「子育て=母親がやるもの」という呪縛から逃れ、現在は肩の力を抜いて自分らしいママライフを送れているといいます。現在のパートナーとは、あえて事実婚を選択しているという鈴木さん。その思いとは? (全4回中の2回)

家事分担はルール化しない「できる人がやればいい」

モデルの鈴木サチさんと夫
現在のパートナーとはお互いが自然体でいられる関係性をキープできているそう

── 現在のパートナーとは、家事や育児に対する価値観は共有できていますか?

 

鈴木さん:そうですね。育児にはとても協力的です。でも「分担は特に決めず、できる人がやればいい」という自分の考えは変わっていなくて。だから、相手が得意じゃないことを無理に押しつけるつもりはないんです。

 

── とはいえ、5歳と2歳と0歳の3人は、かなりお世話が大変な時期ですよね?

 

鈴木さん:それはそうですね。でも例えば、現在のパートナーが、オムツ交換でウンチになると「ううっ」ってなったりしていたとしても、それは「やってくれない!」ではなく、「不得意だから仕方ない」という感覚でしかなくて。

 

── 「できることを、できる人がやる」で、お互いバランスよくやれているんですね。

 

鈴木さん:もちろん、私に甘えている部分もあるんでしょうけど…そこはバランスよくやってくれているなと思っていて。私も多くを求めたりしないし、前向きな意味で“期待しない”ので。

 

── 自然な関係性なんですね。

 

鈴木さん:そうですね。いまの関係性が、お互いに心地いいなって思います。

パパじゃないけど、言いたいことは言い合う

── 現在のパートナーは上の2人のお子さんとの血の繋がりはないわけですが、どんな感じで日常を過ごしていますか?

 

鈴木さん:離婚したとき、上の2人は小学校1年と年中だったので、「父親と離れて暮らす」という認識は、もうすでにあったようです。彼らにとっての父親は前の夫だけ。「父親」という存在はやっぱり一人しかいないものなので、現在のパートナーに「上の2人の子どもたちの父親になってほしい」という感覚はないんです。

 

パートナーとしても、「自分のことを父親と思ってほしい」とか「パパと呼んでほしい」という思いは、ないみたいですね。周囲の人や親族のなかには「お父さんと呼ばせたほうがいいのでは」などと言ってくる人もいましたが、そんなの気にしない(笑)。私たち家族が心地よければ、それでいいじゃない?って。

 

ちなみに、子どもたちが現在のパートナーを呼ぶときは、普通に名前で呼んでいます。でも、「友達」というのともまた違う。「家族」という関係であり、一番近くにいる大人…そんな存在です。そのことは一緒に暮らすことになった当初、彼から直接子どもたちに伝えていましたね。

 

モデルの鈴木サチさんのお子さんたち
一緒にゲームをする子どもたち。「みんな仲良くしてくれて本当に嬉しいですね」

── 家族間が円満になるように、ルールを作ったりはしていますか? 

 

鈴木さん:そういうのは特に作っていないんです。上の2人は今の家族の形をすでに理解しているし、言いたいことを言い合える関係だと思います。パートナーと長女は、しょっちゅう喧嘩したりしていますし(笑)。血は繋がっていないけれど、思ったことをある程度、正直に言い合える関係が築けているのはよかったなぁと思います。

 

── きょうだいは仲良しですか?

 

鈴木さん:とっても仲良しです!上の2人は、下の子たちを超〜かわいがっていて。一番上の娘なんかは、「なんでうちの弟ってこんなにかわいいの〜!かわいすぎ!」ってずっと言っていたり(笑)。きょうだいはみんな、気持ちが繋がっている感じがします。

あえて事実婚を選択した理由は

── 現在のパートナーとは事実婚で籍を入れていないそうですね。「籍を入れる」ことに意味を見い出せないなど、明確な理由があるのでしょうか。

 

鈴木さん:まさに、その通りです。前の夫に「子育ては母親がするものだ」と言われたときに、じゃあもし結婚してなかったらどうなの?と思ったんです。「結婚ってなんなんだろう」って。実は、夫の姓を名乗ることにも違和感がありました。そのことを結婚式のときに思わず相手に言ってしまったぐらい(笑)。父親からもらった「鈴木」姓なのに、なぜ違う名前に変わらなきゃいけないの?と葛藤があったんです。

 

結婚することで紙(婚姻届)を出して大きく変わるのって、姓が変わることぐらい。夫婦の関係性は、その都度築くものだから、籍を入れているかどうかは関係ないんじゃないかなと思ったんです。家族っていうのは、別に紙の契約がなくても繋がっていられる、と。

 

── その考え方に、パートナーは賛成だったのですか?

 

鈴木さん:「結婚するつもりはありません」というのは最初から伝えていました。この先、籍を入れていないことで不都合があったらそのときに考えよう、と。例えばどちらかが入院して、夫婦でないと病室に入れないとか、そういったことがあれば、また考えます。パートナーとしては「子どもが自分の姓でないのは正直違和感があるし、少し寂しい」とは言っていましたが…それでも、私の考えを理解してくれていると思います。

 

── 上の2人と下の3人のパパが違うことについて、いままで説明が難しい局面はなかったのでしょうか?

 

鈴木さん: 今の形を「なんで?」って聞かれたことは一度もなくて。第三子はこの間5歳になったばかりなので、お姉ちゃんやお兄ちゃんに別のお父さんがいることはまだわかっていないと思います。でも、もしかしたら上の2人が「お父さん」と呼んでいないことを少しは認識しているのかもしれません。

 

ただ、下の子たちにとっては、今の環境が生まれたときから当たり前なので。上の2人がパパに会いに行って不在だったりすると、「どこ行ったの?」と聞いてくることはあるけれど、「お姉ちゃんたちのお父さんのとこだよ」と答えると、「ふうん」となんとなく納得していて、それ以上は疑問をもたないようですね。

 

成長するにつれて状況を理解しはじめたら、ちゃんと説明しなくちゃなとは思っています。

 

モデルの鈴木サチさんとお子さんたち
今年の初詣の様子。年末年始は家族と一緒にゆっくり過ごすことができたそう

── 日常生活のふとしたときに、小さな嘘をついたりごまかしたりなどはしないように意識していますか。

 

鈴木さん:ことさらに隠したりはしないですね。パートナーと上の2人の子どもは、血は繋がっていないですが、でも私目線だとみんな繋がっていて、みんな家族。私がそういう感覚だから、みんなもそうなのかなぁと。血は繋がっていないから言いづらいとかそういうのはなく、一緒に暮らす「家族」として、風通しはいいと思います。

 

── 血の繋がりで、なにかを判断することはないと。

 

鈴木さん:そうですね。上の子たちは多少思うところはあるとは思いますが、もう7年ぐらいこの形なので、本当の父親より長く生活を共にしているわけですよね。今のパートナーとは、本当にいい距離感。全部を正直に言えているわけではないかもしれませんが、「家族」だと思っていると思います。

 

学校で聞かれたりすると、「一緒に住んでるお父さんと、一緒に住んでないお父さん」などと言ったりしているみたいです(笑)。

 

── 素敵なファミリーですね!

 

鈴木さん:そうですかね(笑)。トラブルがないわけでもないですし、お互い「えっ?」と思うところもあるし。でもあんまり、多くを求めてもね。完璧を求めても、それぞれ感情があるわけだから。いわゆるステップファミリーではありますが、そんななかでもけっこううまくやっていけているのかな、という感覚はありますね。

 

PROFILE 鈴木サチさん

1979年愛知県生まれ。10代からファッションモデルとして活躍。モデルとして約30年活躍するかたわら、ピラティスのSTOTT PILATES(R)認定インストラクターを取得し、第四子妊娠中の2022年に自身のスタジオをオープン。ピラティスインスタラクターとしても活動中。2013年にホノルルマラソン出場し完走するなど、スポーツが得意な一面も。プライベートでは、14歳、11歳、5歳、2歳、0歳の5児の母。

 

取材・文/松崎愛香 写真提供/鈴木サチ