40年以上の運転キャリアをもつ高橋ひとみさん。愛車の変遷はなかなかパワフルなエピソードばかり。一方で南アフリカの観光大使を9年務め、プライベートでも同国を訪ねるほどハマったとか。趣味に沼落ちした様子を聞きました。(全5回中の5回)

19歳で免許をとってから車好きとして名車を乗り継いで

── 大のクルマ好きとしても知られる高橋さん。愛車のアバルト「695Cリヴァーレ」は、日本で65台しかない限定モデルだそうですね。

 

高橋さん: この車とは、2022年からのつき合いになります。それまでゴールデンレトリーバーのももえを乗せて一緒にお出かけできるようにと、メルセデスベンツの「AMG43」というワゴンタイプの車に乗っていたんです。

 

でも、大きくて馬力のある車だったので、家の前の狭い道路で何度も切り返しをしていたら、アスファルトをほじくっちゃって(笑)。だから、ももえがいなくなってからは、もうワゴンはいらないなと思っていたんです。

 

そんなとき、知り合いの方が乗っていたこの車を見て、独特なデザインにひとめぼれ。でも限定車で、すでに完売して手に入らない。ガッカリしていたら、その方が「譲ってもいいよ」と言ってくださって。以来、私の大切な相棒になりました。

 

コンパクトな見た目ながら、パワーがあるので、エンジン音がかっこいいんですよ。私が現場に行くと、メイクさんたちが「エンジン音を聞かせて」と集まってくるんです(笑)。狭い立体駐車場にも停められるし、馬力もあるから坂道や段差もスイスイ登れて快適。一生乗りつづけたいと思うほど気に入っています。

 

── たくさん車を乗り継いでこられたと思いますが、愛車遍歴を教えてもらえますか?

 

高橋さん: 19歳で免許を取って最初に乗ったのが、父が買ってくれたいすゞの「ジェミニ」でした。当時、女子の憧れの車は「ジェミニ」か日産の「シルビア」だったんです。

 

その次が、叔母から譲り受けたフォルクスワーゲンの「ビートル」。カブトムシの愛称で知られる車ですね。マニュアル車でエアコンもついていませんでしたが、撮影所にも自分で運転して通っていました。ちょうど『スケバン刑事』を撮影していたころだったかな。

 

その後は、ずっとポルシェです。あのコンパクトで丸みを帯びたフォルムがたまらなく好きで、最初に乗ったのは白の「944」。次がメタリックなワインレッド色の「911のカブリオレ」。

 

あるとき、「『944』って『911』が買えない人が買うのよね」と、誰かが話しているのを小耳に挟み、それがあまりに悔しくて(笑)、911のオートマが出たタイミングで買い換えました。

高速道路でパトカーに呼び止められた理由

── スポーツカーがお好きなんですね。さっそうと運転される姿が目に浮かびます。

 

高橋さん:でも、絶対にスピードは出しません。以前、高速道路でパトカーに呼び止められて、「違反なんてしていないのに、なんだろう…」と窓を下げたら、「スピードが遅すぎますよ。危ないから流れに乗って!」と注意されました(笑)。

 

きっと後ろが詰まっていたんでしょうね。遅いと渋滞を巻き込こしてしまうので。いまでも高速道路では、必ず一番左の車線を走ります。

 

── マイペースでいらっしゃる(笑)。高速道路で他の車にどんどん追い抜かされていくポルシェって、あまり見ない光景です…。

 

高橋さん: そうですよね。私があまりにもスピードを出さないので、みんなから「ポルシェがかわいそうだ…」と言われます(笑)。

南アフリカのサファリでの感動はいまも忘れられないほど

── ところで、2015年から南アフリカ観光親善大使として活動されています。ご自身も何度も訪れていらっしゃるそうですね。

 

高橋さん: 観光親善大使になる前に、お仕事で日本人女性が嫁いだワイナリーを訪れたのが、南アフリカとの最初の出会いでした。その後、航空会社に勤める夫の知り合いのご縁で、9年前から親善大使を務めさせていただいています。

 

南アフリカは日本から遠いので旅行に行く人は多くはありませんが、ヨーロッパでは憧れの高級リゾート地として知られています。

 

南アフリカのサファリに魅了された高橋さん

都市部は発展していてなんでも調達できるし、街並みもキレイ。お肉も野菜も新鮮で、ケーキやパンもすごく美味しい。素晴らしいワイナリーがたくさんあるので、ワイン好きな人にもおススメですよ。

 

都市部から少し離れると素晴らしい大自然が堪能できて、サファリでは野生動物の姿を観察できます。私はサファリが大好きで、南アフリカを訪れる旅にツアーに参加するのですが、はじめて見たときのあの感動は、いまでも忘れられません。

 

── どんな経験だったのでしょう?

 

高橋さん: サファリでは、ライオン、ゾウ、バッファロー、サイ、ヒョウの「ビッグファイブ」と呼ばれる野生動物がみられるのですが、会えるかどうかは運しだい。とくにヒョウはあまり姿を見せないので、運よくすべての動物に会えれば、かなりラッキーなのですが、初めて訪れたときから、ビッグファイブに出会うことができました。

 

サファリでは、レンジャーの方にジープのオープンカーで案内してもらうのですが、ライオンも、すぐそばで見られます。ライオンはたいていメスが狩りをするので、オスはメスとはぐれたら食事にありつけません。ジープのそばで大の字になって寝ころぶオスライオンを見て、「もう。自分で狩りに出ればいいじゃないの」と、ライオン一家に思いを巡らせながら観察したり(笑)。

 

象の大群に遭遇したこともあります。象の親子が寄り添いながら目の前をゆったりと横切る姿を見て、「この光景を目に焼きつけたい!」と胸が震えましたね。

雄大な自然や豪華列車にお土産も喜ばれる南アフリカの魅力

── 象の大群が横切る光景が見られるなんて、一生の思い出になりそうですね。

 

高橋さん:本当にそうでしたね。安全な場所にジープを停め、夕陽のなかで優雅にワインを飲みながら雄大な景色を眺めていると、まるで自分が映画の主人公になったかのような気分になります。真っ赤な夕陽に照らされて、動物たちのシルエットが左右にポンポンと浮かび上がってきて、それはもう幻想的で!あの光景を一度見ると、動物園では物たりなくなってしまいますね。

 

サファリでは、野生の厳しさを目の当たりにすることも。あるとき、1頭のバッファローがライオンたちに食べられそうになっているところに遭遇しました。仲間のバッファローたちが助けようとするけれど、ライオンの群れに近寄れない。よく見ると、バッファローに群がるライオンたちのなかに、歳を取ったガリガリのおばあさんライオンがいたのですが、自分自身もかなり弱っているらしく、食べる力がなくてグッタリしたまま。

 

食べられていく仲間を助けたくても助けられないバッファローたち、食べたいけれど弱って力がなくて動けないライオン。動物の生き抜く力に胸をうたれ、人生観が変わるほど感動しました。

 

── ありのままの動物たちの姿を見られるのは貴重ですね。ほかにも、南アフリカといえば、豪華列車「ザ・ブルートレイン」も有名です。高橋さんも乗車されたことがあるそうですね。

 

高橋さん: まさに大人のための贅沢で特別な空間でしたね。2泊3日かけて1600キロを移動するのですが、車両に足を踏み入れると、そこはもう別世界。クラシカルで豪華な車内、大きな窓から広がる雄大な大自然を見ながら、時間を忘れて過ごせて、夜はドレスアップして素晴らしいディナーを堪能し、フカフカのベッドで眠りにつく。

 

24時間空いているバーラウンジでいつでもお酒を楽しむこともできるんです。ご年配のご夫婦が仲よさそうにずっとおしゃべりをしながら食事やお酒を楽しむ姿を見て、「私もこんな夫婦になれたらいいな」と憧れますね。

 

海や山、砂漠、野鳥や野生動物の観察など、見たいものや行きたい場所、時期によっていろんな光景が見られるので、いつ行っても楽しめるのもこの国の魅力。

 

観光地から外れると危険な地域もありますが、足を踏み入れなければ、安全で快適、夢のような時間が待っていますよ。南アフリカは美容も盛んなのでスパもたくさんあり、現地でしか取れないオイルなどを使った化粧品やハンドクリームなどはお土産にも喜ばれます。

 

きっと心が揺さぶられるような経験ができると思うので、ぜひ一度訪れてもらいたいですね。ドレスとハイヒールもお忘れなく!

 

PROFILE 高橋ひとみさん

1961年東京都生まれ。1979年、寺山修司演出の舞台『バルトークの青ひげ公の城』で女優デビュー。83年に『ふぞろいの林檎たち』でドラマに初出演。現在まで数多くのドラマや映画、舞台に出演し、近年はバラエティ番組や情報番組などでも活躍している。2015年より、南アフリカ観光親善大使、19年より大田区観光PR特使を務める。現在、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演中。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/ホリプロ