結婚する気もないし、相手もいない。そんななかで出会った52歳での運命。「友だちから」の出会いはどうやって大切な関係へと進んだのでしょう。結婚へのプレッシャーもなく、自然体でことが進んだ高橋さんの歩みに耳を傾けてみると。(全5回中の4回)

「結婚を考えたことはなかったけれど」52歳のときに現れた紳士

── 52歳のときに、2歳年下の方と結婚されました。交際2週間というスピード婚が話題になりましたね。 出会いのきっかけはなんだったのでしょう?

 

高橋さん: 夫とは、友人が開いてくれた食事会で出会い、その後も何度かみんなでご飯を食べにいく仲間のひとりだったんです。

 

あるとき、私が仕事でイタリア(フレンツェ)に行くことになったのですが、なぜか当時はまだ友人のひとりだった夫が、「僕も行っていいかな?」と言ってきて。彼は航空会社勤務でチケットがすぐに取れるので、イタリアにはよく洋服を買いに行っていたらしいんですね。「私は仕事だから、ご一緒できませんよ?」と伝えたのですが、ついてきちゃって(笑)。

 

でも、結果的にイタリアに一緒に行ったことで、彼の人のよさを知ることができました。現地で少し時間があったので、メイクさんたちとウフィツィ美術館に行くことになったのですが、語学堪能な彼がチケットを取ってくれ、完璧にエスコートしてくれたんです。

 

みんなの荷物は全部持ってくれたり、ドアもサッと開けてくれたりして、紳士的でスマートな姿に好感をいだきました。身長も180cmほどあるので、フィレンツェの街で一緒に撮った写真を見たら、背の高い私とバランスがよくて「あら、なんだかいいじゃないの」と(笑)。東京に戻ってから2人で会うようになり、交際期間2週間で婚姻届を出しました。

 

── まさに急展開ですね。ただ、独身暮らしが長いと自分のライフスタイルを変えるのが億劫になって、なかなか結婚に踏みきれないケースが多いものです。なにが決め手になったのでしょう?

 

高橋さん: じつは、これまで一度も結婚したいと思ったことがなかったんです。別に独身主義というわけではないのですが、ちゃんとプロポーズしてくれる人がいなかったというのもあります。

 

でも、夫は交際してすぐに「結婚してください」と言ってくれて、「それならしてみようかな」と。酔っぱらっていたので、お酒の勢いもあるかも(笑)。夫は飲めないので、私だけ飲んでいたんです。

母親も太鼓判を押してくれた彼の人間性

── 短い交際期間を経ての結婚はいかがでしょうか?

 

高橋さん:交際2週間でのプロポーズだったから、決断できたのかもしれません。長くつき合っていると、お互い嫌な部分が目につきだして、「それならひとりのほうがラクだわ!」と思ってしまいそうで。

 

2人とも初婚同士で、それまで自由に生きてきましたから。だから、イヤなところを見る前に、「エイヤッ」と決めてしまったのがよかったのかもしれないなと。

 

── 年齢を重ねてからの結婚は、「勢い」と「タイミング」が大事だと。

 

高橋さん: タイミングは、すごく大事ですよね。ちょうど50代になり、変化を求めていた時期というのも大きかったと思います。お仕事でも、バラエティーに挑戦するなど、自分の殻を打ち破って新しいことを取り入れたいマインドでした。そうしたタイミングで彼に出会ったのも、運命かもしれませんね。

 

亡くなった母も、彼のことをすごく気に入っていたんです。当時、母の体調が悪くて入院していたのですが、私が仕事でお見舞いに行けないときも、彼が何度も病院に通って、母に付き添ってくれました。母からは、「すっごくいい人だから、絶対に離婚しちゃダメよ」と言われましたね。

 

── お母さんもきっと安心したでしょうね。

 

高橋さん: そう思います。母は独身の私を心配していたので、安心させることができてよかったなと。

 

夫は家のこともいろいろとやってくれ、掃除やゴミ出しなどの家事、アイロンがけも完璧。唯一の弱点は料理ができないことですが、私の靴もピカピカに磨いてくれるんですよ。ただ、ファッションへのこだわりが強すぎて、口うるさいのがタマにキズ。買ってきた靴をそのまま履こうものなら、「それはありえない!」と言われてしまうんです。

 

淡いピンクのファッションに身を包み、優しい笑みを浮かべる高橋さん

── そのまま履いちゃダメなんですか?

 

高橋さん: 夫いわく、「買ってきた靴は、いったん綺麗に磨いて防水スプレーをしてから履くもの」だと。そして、一度履いたら今度は防水スプレーを落として、もう1回磨いてからしまうんだそう。でも、そこまで行くと、もうめんどうくさい! 

 

私のファッションにもチェックが入ります。とくにサイズ感には厳しくて、「その服の丈の長さ、合ってないんじゃない?お直しに出せば?」などと口を出してくるので、「いいの!私はこの丈が気に入ってるの!」と揉めたりします。

晩婚のメリットは「大人としてうまく折り合いをつけられること」

── 今年で結婚10年目になりますね。あらためて、「晩婚のメリット」はなんでしょう?

 

高橋さん: さすがに、いい大人同士なので、お互いに我を通しすぎず、ある程度のところで上手に折り合いをつけながら歩み寄ることができるんじゃないかと思いますね。向こうがだいぶ我慢してくれているのかもしれませんけど。

 

── 年齢とともに価値観が凝り固まって頑固になるケースも多いですが、柔軟さは大事にしたいですね。

 

高橋さん: 結婚当初は独身時代のライフスタイルが変わるので、多少のぶつかりあいもありましたが、いまではお互いずいぶん柔らかになりました。ときには、諦めも大事です。

 

夫も以前はわりと潔癖症ぎみだったのですが、私が独身時代から飼っていたゴールデンレトリーバーのももえと一緒に暮らすようになって、少しぐらい服に毛がついていても気にしなくなりました。

 

これからも一緒に過ごす時間を楽しみながら、歳を重ねていければいきたいなと思いますね。

 

PROFILE 高橋ひとみさん

1961年東京都生まれ。1979年、寺山修司演出の舞台『バルトークの青ひげ公の城』で女優デビュー。83年に『ふぞろいの林檎たち』でドラマに初出演。現在まで数多くのドラマや映画、舞台に出演し、近年はバラエティ番組や情報番組などでも活躍している。2015年より、南アフリカ観光親善大使、19年より大田区観光PR特使を務める。現在、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演中。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/ホリプロ