想像以上にハードな研修

2014年に移住したカナダ・モントリオールの街並み、2023年5月撮影

── 研修がスタートされていかがですか?

 

空飛ぶおりょうさん:思っていた以上に、本当にハードです。研修がある日は、正午から夜8時まで会社で研修を受け、帰宅後は深夜と出勤時間まで勉強します。最初の6か月間は見習い期間で、テストは5月末まであります。この間に行われるすべてのテストに合格しないと本採用にならず、必死に勉強しています。

 

── テストはどんなことをするのでしょうか?

 

空飛ぶおりょうさん:たとえば飛行機のドアの緊急時の開閉の実技試験がありました。私は無事に合格できましたが、CA経験者でも落ちてしまうクラスメイトもいました。

 

── クラスメイトにはどのような人たちがいますか?

 

空飛ぶおりょうさん:3つのクラスがあり、それぞれ約25人で構成されています。参加者の年齢は20代から50代以上までさまざま。同僚との会話は英語とフランス語です。私のように未経験者から、過去に客室乗務員として働いた経験を持つ人までいて、バックグラウンドはさまざまです。私のクラスメートの中には前職で販売職を務めた人や、旅行代理店、ネイリスト経験者などがいます。

 

── 同僚との間にジェネレーションギャップを感じることはありますか?

 

空飛ぶおりょうさん:基本的にはありませんが、雑談では20代の話題についていけないことはあります。ただ、仕事の話は年齢関係なく、わからないところなどを教え合っています。

紆余曲折した人生経験はどれも今に繋がっている

── 今、航空会社に転職できたことを振り返ってみて、採用された理由について、ご自身ではどう考えていますか?

 

空飛ぶおりょうさん:たぶん、航空会社が求めていた要件と、私のスキルが一致したからだと思います。また、私が勤務している会社では、夏に向けて国際便を増やすため、英語、フランス語、日本語を話せる客室乗務員を必要としていたようです。

 

私は異業種からの転職ですが、ホテル勤務で培ったお客様対応の経験やクレーム対応のスキル。移民コンサルタントとしての経験から、入国手続きに関する説明もできます。また、ITサポートの経験から、機内でのIT機器トラブルにも対応できるので、客室乗務員の仕事でも、これらの経験を活かせるところはあると思います。

 

── 40代で未経験の職種に転職することについてどう考えましたか?

 

空飛ぶおりょうさん:日本ではハードルが高く感じるかもしれませんが、カナダでは40代での転職も珍しくありません。また、私はカナダに10年以上住んでいて適応しているせいか、とくに不安はありませんでした。

 

また、昔からやりたいことには積極的にチャレンジしてきたし、失敗しても経験になるだろうという考えもありますし、自分で自分の可能性に制限をしなかったことも大きいと思います。40代で未経験の業種への転職は、足踏みをする人もいるかもしれませんが、できるかできないかより、やりたいかやりたくないか。40代でも挑戦を諦めなかったことで、チャンスをつかめたのだと思います。

 

PROFILE 空飛ぶおりょうさん

岡山県出身。外国語大学卒業後、ホテル業界に就職。31歳でカナダに移住。日本語教師やゲーム会社、移民コンサルタントの会社を経て、2024年3月からカナダの航空会社で客室乗務員として勤務。

 

取材・文/間野由利子 写真提供/空飛ぶおりょうさん