元プロサッカー選手の夫と2人の娘たちの夢をサポートしてきた小野千恵子さん。子育てがひと段落した頃、「仕事をしたい」という思いがわいてきたそうです。

子育てがひと段落したタイミングで40歳でモデルを再開

── 約20年ぶりにモデルとして活動を再開されたきっかけを教えてください。

 

小野さん:子どもたちが中学生くらいになると、親の手がかからなくなりますよね。これまで子育てに時間を費やしてきたけれど、「この先の人生はどうするんだろう」と考えたとき、「自分のために何か新しいことを始めてみたいな」と思ったんです。

 

私は学生のうちに結婚をしたので、就職したことがありません。モデルの仕事はしていましたけれど、会社に勤めた経験がないので、「社会に出ても何もできないんじゃないかな」という劣等感をずっと持っていました。

 

「社会復帰したいな」と思っていたタイミングで、フラダンスのママ友で雑誌『STORY』の編集部でライターをしている方が声をかけてくださったんです。ちょうど当時の編集長が、私が『CanCam』のモデルをしていたときの編集担当の方で。「これだけの巡り合わせが揃っているんだから、やってみようかな」と思って再スタートしました。40歳のときです。

 

40歳の時、モデル業を再開!
40歳のとき、モデル業を再開!

── 学生の頃と比べて、カメラの前に立つ気持ちに変化はありますか。

 

小野さん:全然違いますね。若い頃は、なんでもできる気がしていたんですけど、歳を重ねると自分のダメなところも見えてくるので、「ほんとうにこんな私でいいのかな」というネガティブな気持ちもわいてきて。一方で、「やってみたい、挑戦したい」という気持ちもあるんです。「しかたがない。まだまだダメだけど挑戦していこう!」という気持ちですね。

 

いちから勉強するつもりで、いろんな人に話を聴いたり、カメラマンさんにも「初心者ですので、何かあったら教えてください」とお願いしたりしながらやっています。

 

それまでファッションや美容を置き去りにしていたので、最前線のプロの方たちにいろいろとしてもらえるのはありがたいです。子どもが小学生の頃、プリンセスになりたがったのと同じ感覚かもしれません。

 

── 反響はいかがでしたか。

 

小野さん:娘たちがとても喜んでくれました。「恥ずかしい」と言われるかな、と思っていたんですけど、娘と娘のお友達が喜んでくれていることは支えになっています。お友達が私のインスタをフォローしてくれているので、娘に「私がお弁当を開ける前に、友達がお弁当の中身を知っているんだけど」と言われます(笑)。

「犬に関わる仕事なら一生続けられる」と起業

── これからの目標や、やってみたいことがあったら教えてください。

 

小野さん:2022年に、大型犬向けのファッションブランド「LAUW(ラウー)」を立ち上げました。モデルのお仕事も好きですが、「一生できることを見つけたい」という思いがあって、どんなことならできるだろうと探していました。

 

いろいろな分野で成功している方たちにお話を伺うと、みなさんが「とにかく好きなことをやりなさい」とアドバイスしてくださったんです。「自分が好きなことでもない限り、この年齢から始めても続けられないよ」と。

 

そう言われて、「私、犬のことだったら一生続けられるかもしれない」と思ったんです。大好きな犬に関わる仕事が、社会貢献につながればいいなと思っています。

 

犬に関わる仕事で社会貢献も
犬に関わる仕事で社会貢献も

── いまも犬を飼っていらっしゃるのですか。

 

小野さん:大型犬を2頭飼っています。子どもの頃から動物は大好きでしたが、結婚してすぐ、オランダで飼っていた犬を亡くしてしまったのがあまりにも悲しくて、それからしばらくは犬を飼えずにいました。でも、次女に「飼いたい」とずっと言われていて、ちょうどコロナ禍で自宅にいる時間が増えたタイミングで、ブリーダーさんのところへ子犬を見に行ったんです。

 

私はオランダに住んでいた頃から、一生に一度はバーニーズマウンテンドッグを飼ってみたいと思っていました。クマみたいに大きくて気の優しい犬です。「いま飼わなければ、一生夢はかなわないかもしれない」と思って、バーニーズマウンテンドッグの子犬を迎えました。

 

そのあと昨年12月に、スタンダードプードルを迎えました。行くところのない犬たちの引き取り先を探すお手伝いをしていて、どうしても行き先が決まらない子がかわいそうになってしまって。2頭は最初は仲よくできなかったんですけど、いまは仲よしです。

 

夫・小野伸二さんも応援してくれている
夫・小野伸二さんも応援してくれている

── 具体的に、どのような社会貢献をされているのですか。

 

小野さん:いま私がやらせてもらっているのは、「動物介在教育」のボランティアです。小学校の道徳の時間にワンちゃんと一緒に伺って、命の大切さをお話しします。「言葉のわからないワンちゃんとも1時間でこんなに仲よくなれるんだから、隣のお友達とどうすればもっと仲よくなれるか考えてみよう」ということをお話しします。

 

「LAUW」のグッズの売り上げの一部で、犬の保護施設などにも支援をしています。海外のチャリティー活動を見習って、買い物をしたり、SNSで発信したり、普通の人のちょっとした行動を大きな動きにつなげることができたらいいな、そういうことが認められる世の中にしたいな、という思いがあります。

 

これからも、私にできることを見つけて、挑戦していきたいですね。

 

犬の保護施設などに支援している(c)木村敦
犬の保護施設などに支援している/(c)木村敦

 

PROFILE 小野千恵子さん

ファッションモデル、実業家。大学時代に『JJ』モデルとして活躍し、22歳で元プロサッカー選手の小野伸二さんと学生結婚後、オランダへ渡る。17年間の主婦生活を経て、40歳で『STORY』モデルとして復帰。犬と家族のブランド「LAUW(ラウー)」ディレクター。2人の娘さんは大学生と高校生。

取材・文/林優子 画像提供/小野千恵子