「お金が貯まらない」「貯めたいんだけど、つい使っちゃう…」。それは意志だけの問題でしょうか?「いえいえ、置き場を変えれば貯まります」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さん。置き場とは?意志と関係ない?解説してもらいました。

貯金できるかどうかに「意思は関係ない」

お金が貯まらない理由として、「意志が弱いから」「我慢がたりないから」などととらえがちですが、それは誤解です。意志や我慢をコントロールするのは難しいですよね。

 

ダイエットがなかなかうまくいかないのと同じように、意志や我慢の強さに頼っていたら、むしろ貯蓄しづらくなるだけ。収入の多寡も関係ありません。収入が高くても、その分、使ってしまうケースがあるからです。

 

貯められる人に共通するのは、お金の「置き場」を選ぶのが上手なこと。置き場とはお金を預ける場所を意味します。置き場は「管理は必要ない」「目のつかないところに追いやる」「強制的に引き出せなくする」といった工夫をする必要があります。こうすることで、自然と貯まっていくのです。

 

お金が自然と貯まる置き場の代表例は次の6つです。

 

  1. 「ふだん使わない普通預金」
  2. 「定期預金」
  3. 「つみたてNISA」
  4. 「個人型確定拠出年金」
  5. 「財形貯蓄」
  6. 「貯蓄型保険」

 

理由をそれぞれ説明していきます。まず、1.「ふだん使わない普通預金」2.「定期預金」ですが、これは、確実に貯めることを目的にした置き場です。

 

給与振込や光熱費の引き落としに使用しているメインバンクの普通預金口座でやりくりをし、残高をふやそうとする方もいるかもしれませんが、これはうまくいきません。

 

頑張ってやりくりをしようと思っても、預金残高があれば必要以上につい使ってしまうことも。お金を見えない場所に移動させる必要があるんです。

 

「ふだん使わない普通預金」を活用するのも手ですが、「それでもつい引き出してしまうかも」と不安な人は、「定期預金」に預けましょう。定期預金なら満期まで解約ができないため、お金が確実に残せるようになります。

iDeCoのデメリットを活かせば「貯金」につながる

一方、増やすことを目的とする置き場が、3.「NISA」と4.「個人型確定拠出年金(通称・iDeCo)」です。

 

「NISA」は、専用口座を開設して投資を行う仕組み。投資信託を自動で積み立ていくもので、運用益が非課税となる税制優遇を受けられるのが利点です。長期投資を前提とし、10年や15年以上先に使うお金の置き場として適しています。

 

運用する投資信託はいつでも自分の意志で売却できるため、抑止力が低いと思われがちですが、そうでもありません。投資信託の資産は値動きによって上下します。

 

下がって資産が減っているときは「損したくない」、上がって資産が増えているときは「まだ増える」気持ちになるので、売却のハードルは意外に高いのです。

 

ただし、NISAはあくまでも投資の枠組みです。いざというときも含め、生活するために必要な最低限の貯金「生活防衛資金」がいっさいないときは控えましょう。

 

「iDeCo」は、老後のお金を貯める専用口座を開き、投資商品などを買いつける仕組みです。つみたてNISAと同じく税制優遇を受けられるものの、原則60歳まで解約不可という難点があります。ただ裏を返せば、お金を引き出せない「強制力」として働き、老後資金作りの最適な置き場になり得るのです。

 

注意点はiDeCoの専用口座をつくると、毎月、手数料が発生すること。金融機関によって手数料に差があるので、ランニングコストの低いところを選ぶようにしてください。

 

残る置き場は5.「財形貯蓄」と6.「貯蓄型保険」。この2つは人によって活用できるか否かが分かれます。

 

「財形貯蓄」は会社が給与や賞与から一定金額が自動で天引きされて積み立てられる制度です。福利厚生の一環として導入されている会社では従業員が利用可能。給与振込前に貯蓄されているので、知らないうちに、確実に貯められます。

 

「貯蓄型保険」は終身保険、個人年金保険、学資保険などが該当し、保険なら強制的に引き落とされるので貯められるという人向きです。本来、貯蓄と保険は切り離すべきですが、保険を好むのであれば資産づくりの場とするのも選択肢だと思います。

 

お金を貯められる人は、こういった置き場を組み合わせながら、有利に資産を働かせています。まず貯まる仕組みを利用し、次にそのお金を眠らせず増やす仕組みに移行させる。「貯めながら増やす」置き場を確立し、資産を賢く育てていきましょう!

 

PROFILE 塚越菜々子さん

ファイナンシャルプランナー。10年超の税理士事務所勤務を経て独立。主に共働き世帯の女性を中心に年間200件以上の家計相談を行う。YouTubeでも女性に役立つマネー情報を幅広く発信している。

 

取材・文/百瀬康司