学生時代に開いてそのままの口座や、すでに辞めた習いごとの会費用につくった口座。そのまま放置しておくと、警察から連絡がかかってくるなんてケースもあるそう。どういうこと?ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんに聞きました。

未利用口座「知らぬ間に500円の利息支払いに」

使っていない口座を持っているだけで、1000円ちょっと損するとしたら、どう思いますか?たとえば、三菱UFJ銀行では2年以上未利用の普通預金口座に対して、年間1320円の未利用口座手数料を設けています(2021年7月以降の新規開設口座対象)。

 

背景にあるのは銀行の経営難です。紙の通帳には1口座200円の印紙税負担を伴うため、収益を生まない未使用口座の有料化を進めている流れは避けられないでしょう。

 

過去に開設した口座なら上記のような手数料は発生しませんが、だからといって安心はできません。銀行の口座を複数持つ人は多いと思います。ふだん気づくことなく、いまは使っていない口座をもっている可能性があります。

 

たとえば、学生時代のアルバイト先の給料振込用、家賃や習い事の引き落とし用など、過去に指定されてつくった口座を、いまは使わないのに解約せず残っているパターンです。

 

こうした口座の放置リスクとして、知らない間に借り入れになっているリスクがあげられます。これは銀行で総合口座を持っていると、普通預金の残高が不足した際、定期預金などを担保に自動融資される「口座貸越し」のサービスによるものです。

 

年1回の会費の引落し用の口座として利用し、その会費を何年分か入金して放置。あるとき、通帳記入をしたら「貸越し利息500円」といった記帳を見て、発覚したというのが一例です。利息は微々たるものですが、払う必要のないムダなお金ですよね。

 

そのほか、口座を未利用のまま10年くらい経過すると「休眠預金」の扱いとなり、解約するのに非常に手間がかかるリスクや、相続時の遺産の把握に家族が困るリスクなどが考えられます。

口座を放置していて「詐欺犯」と疑われるケースも

もっとも警戒しなければならないのは「不正利用の温床」になるリスクです。不正利用とは、振り込め詐欺などの犯罪を指します。典型的なパターンを紹介しましょう。

 

ある日、突然、使っていない口座に、見知らぬ相手から入金が。放置している口座なので、入金に気づかないこともあれば、金額が少額だと無視する人もいるようです。

 

口座の管理は自主的に行うのが暗黙のルール。それを怠った結果、自分の口座が不正利用されていた疑いで警察から銀行に連絡が入り、口座を凍結された例を聞いたことがありました。

 

では、見知らぬ相手からの入金に、どのように対処すればいいのでしょう。対処のしかたを間違えると、犯罪集団の一味と疑われるケースもあるため、注意しなければなりません。

 

入金を無視することや引き出すなど、お金をみずから動かすのはNG行為です。また、知らないお金の入金があった場合、よくある手口として、相手(詐欺犯)から「入金先を間違えたので返してほしい」と直接、返金するような連絡があります。

 

このとき、それに応じるのではなく、銀行の窓口経由で「組み戻し」の手続きをするように相手に伝えるのが賢明です。そうすれば、犯罪に加担しません。

 

「組み戻し」とは、振込み処理後に宛先や金額など、その内容に誤りがある場合に行う手続きです。自分ではなく、必ず振込み相手を主として組み戻しを依頼してください。

 

そうすれば、不正利用に加担していると疑われずにすむでしょう。なお、組み戻しには800円程度の手数料(銀行によって異なる)がかかります。使っていない口座の放置にいいことはありません。自分の口座は整理して、不要な口座は解約手続きを進めましょう。

 

PROFILE 塚越菜々子さん

ファイナンシャルプランナー。10年超の税理士事務所勤務を経て独立。主に共働き世帯の女性を中心に年間200件以上の家計相談を行う。YouTubeでも女性に役立つマネー情報を幅広く発信している。

 

取材・文/百瀬康司