「リカ活」とは、着せ替え人形「リカちゃん」を大人が楽しむこと。いつ頃から、なぜ「リカ活」が盛り上がってきたのか、株式会社タカラトミー マーケティングの沼田瑞穂さんと広報の柳寺薫乃さんに伺いました。
大人向けの「リカちゃん」はほぼ完売状態
──「リカ活」はいつ頃から起きているのでしょうか?
沼田さん:コロナ禍の影響で「リカ活」をされる方がとても増えた印象があります。ファンの方が始めてくださったのですが、外出できないなかで、「何か楽しみを見つけたい」という大人の方たちが、自宅でできる楽しみのひとつとして始められたようです。
「リカちゃん」にかわいいお洋服を着せたり、「リカちゃん」と散歩や近くのお店にお出かけしてみたり、以前から大人の方の「リカちゃん」の楽しみ方は多様でしたが、それらを撮影してSNSに「#リカ活」のハッシュタグで投稿する方が増えて、「リカ活」が広がったようです。
タカラトミーでは、2015年から大人の方向けの「リカちゃん」として「LiccA Stylish Doll Collections」を発売していて、この冬、大人の方により楽しんでいただけるよう、「ネオリカボディ」の販売を開始しました。初めて手足の関節が動くようになっていて、これまでよりもより細やかなポーズが取れたりするのですが、タカラトミー公式ショッピングサイト「タカラトミーモール」で4日で予約完売するほどの反響をいただきました(昨年12月中旬時点)。
──タカラトミーさんが「リカ活」に気づいたきっかけは?
沼田さん:以前から、「リカちゃんサイズ」の洋服を作ってくださった方などの投稿は見ていたのですが、ここ数年、特にInstagramでの投稿がすごく増えたと思います。そういったなかで、「リカ活」という言葉も自然に生まれて広がっていったようです。
──「リカ活」から感じる最近の傾向はありますか?
沼田さん:とても皆さん凝っていらっしゃって、洋服やヘアスタイルだけでなく、こだわりは背景や小物にも感じます。ご自身がイメージされる世界観を、小さなリカちゃんの世界で存分に表現してくださり、クリエイティブな方が多いのかなと感じています。
また、完成した「作品」をSNSでシェアして、楽しみ合うのも今の時代らしいなと思います。かわいいものを見たり、お気に入りのリカちゃんにかわいいお洋服を着せたり。ご自分が着るお洋服というよりも、かわいいリカちゃんのいる空間を愛でるような癒やしが求められているのかなと思います。
「リカちゃん」のファッションは子どもたちの声を重視
──「リカちゃん」が発売され、昨年で55周年と伺っています。そもそもなぜ「リカちゃん」は生まれたのでしょうか。
沼田さん:「リカちゃん」が生まれる前は、海外製のお人形が主流でした。そこで、日本のお子様の手にも親しみやすく、夢中になれるようなお人形として初代の「リカちゃん」が生まれました。「リカちゃん」は、「リカちゃん」や家族、友だちなどのプロフィール設定もしっかり作り込んでいます。
── 実は、「リカちゃん」のパパとママは国際結婚で、「リカちゃん」には三つ子の家族もいるんですよね。それに、「リカちゃん」はファッションがいつもおしゃれな印象です。
沼田さん:お洋服は現在、社内の開発メンバーが複数デザインを起こしたうえでお子様たちに調査も行っています。「好きなものはどれですか?」とヒアリングして、実際にお子様の支持が高いデザインを商品化しているんです。
重視しているのは、今のお子様が思う「かわいい」を更新し続けることです。今のお子様が好きなデザインを意識しながら作っています。
コロナ禍にあらためて実感した「おもちゃの大事さ」
── 少子化と言われている今、おもちゃの役割は何だと思いますか?
柳寺さん:タカラトミーグループは「おもちゃ」から「アソビ」をすべての基点とし、「おもちゃ」が持っている「ワクワク・驚き・感動・笑顔 」 から「アソビ発」として、お子様だけでなくKidults( アソビ心を持った大人)にも楽しんでいただける商品を展開しています。
おもちゃの役割をあらためて実感したのは、コロナ禍のステイホーム期間でした。多くの人が不安を感じていた環境のなかで、おもちゃを人と人をつなぐコミュニケーションツールとして楽しんでいだたき、おもちゃでお子様たちの心が元気になるお手伝いができたのかなと思いました。
お子様の心の成長に寄与できるところや、皆様が元気になれるきっかけのひとつになれることは、おもちゃの役割として大きいのかなと思っています。
「頑張ったご褒美」に「リカちゃん」を自分に贈る大人も
沼田さん:リカちゃんの「リカ活」が広がるように、大人でも、「何かで頑張ったとき、自分へのご褒美にリカちゃんを買う」という方が増えているんです。
おもちゃは子どものものだけではない、大人にとっても大切なものになっている、そんな存在へとシフトしているのを感じています。
── おもちゃは、大人になっても自分を励ましてくれるように思います。
柳寺さん:今年秋、「リカちゃん」のおじいちゃんが初めて登場したんです。おじいちゃんの存在自体はリカちゃん50周年のときに公開されてはいたのですが、商品化は初めてで。
最近は共働き家庭が増えているなかで、おじいちゃんやおばあちゃんが子育てに参加するご家庭も多くなって、「リカちゃん」のおままごとの世界でも、自然な流れとしておじいちゃんが登場することになりました。
あわせてリニューアルしたリカちゃんハウス「ブランコとすべりだいのある ラ・メゾン」には、置き配のポストがあったり、ビデオ通話があったり、ペット需要も反映した形でペット用品も充実化しています。「リカちゃん」は流行を取り入れながら常に変化しているので、子どもの頃に「リカちゃん」で遊んでくださっていた方々には、「今、こんなふうにリカちゃんの世界が広がっているんだ」と驚いてもらえるとうれしいです。
取材・文/高梨真紀 画像提供/株式会社タカラトミー