自閉症の長女を育てる自身の実体験をモデルに描いた、漫画『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』作者のみなと鈴さんは、SNSの普及で障害児育児がしやすくなったと感じているそうです。(全4回中の4回)

SNSのおかげで同じ境遇の親同士が情報交換できる時代に

── 漫画『ムーちゃんと〜』の中ではまったく未知の子育てが手探りで始まり、情報収集に奔走する様子が描かれていました。

 

みなとさん:今から14〜15年ほど前ですが、うちの子が自閉症と判明したときはまだ発達障害と言っても世間は「何それ?」という時代だったんです。「自閉症」という言葉はある程度浸透していましたけど、私を含めて詳細まではなかなか分かっている方は少なかったんです。間違った知識で「大きくなれば治るんでしょう?」とか「親がほっといたからなったんじゃない?」などと、しつけの問題ととらえている人さえもいました。今はさまざまな方がSNSを通じて情報を発信してくれているので世間の認識も変わってきたように感じます。

 

私自身、当時は今みたいにSNSも普及しておらず、住んでいる地域の中で情報を探す時代でしたので、今は身の回り以外の人ともつながれて、意見交換や情報交換が気軽にできるいい時代になったと思いますね。私のSNSのフォロワーさんたちも皆さんそういうお母さんが多いです。なので、これからの育児に不安を持つ方に「障害児育児はしやすくなった!」と、いい面に目を向けて楽しんで欲しいと思いますね。

 

漫画『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』第2話より
漫画『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』第2話より

── 自閉症と言っても千差万別なんだということを世間が理解しはじめている気がします。SNS上では同じ発達障害のお子さんを育てる親御さんが発信する日常から情報を知ることができたり、さまざまな年齢や発達段階に必要となってくる情報も知れたりという情報源としての機能がありそうですね。

 

みなとさん:SNS上には、まだ子どもの障害受容ができていない方や、とっくに受容はできているけども、子どもが成人した後のためにどんなことを準備したらいいか情報収集している方など、いろんな段階の方がいらっしゃいます。うちの子も今16歳で、あと2年で18歳と成人になるんですね。あと2年で何を準備したらいいんだろうと、次の段階に来ているところなんです。調べると、成人して親権がなくなるとできないこともたくさんあるようで。

 

そういう情報を先輩のお母さんたちから投稿で教えてもらったり聞いたり。私も参考になったものはリポストしてフォロワーさんに共有したりしています。実際、自分が経験していないことって「どこで教えてもらえるのか」から始めないといけないですよね。SNSのおかげで気軽に同じ悩みの仲間とチームワークが組めるような世界が広がってくれたのは本当にありがたいです。

 

── 匿名性があるというのもリアルな話ができたりするのかもしれませんね?

 

みなとさん:そうかもしれません。もちろん、娘が通う療育でできたお母さん方とのつながりもあり、助けられたり励まし合ったりということもできました。実際に親身になれるよさがある一方で、近しいからこそ相談できないこともあるんです。子どもそれぞれの発達障害のレベルがさまざまなので、受ける指導も対応も違ったりすることが原因なのですが…。

 

普通級や支援級に行く知的レベルのお母さんは重度のお母さんにこんな話していいのかと気を使って話すのを迷うことがあるみたいでした。遠慮なく話せるかどうかという点では、SNSは相手とリアルなつき合いがないからあまり深く考えずにひとつの情報として共有していけるメリットはありますよね。

 

漫画にも描きましたが、娘が通う特別支援学校の見学で、ドアのカギが上の方にもあり、全部で2か所あったりするわけです。それを「わー、これは助かる」と言うお母さんもいれば「ここまでするの?」とショックを受けたり、監獄みたいでヤダと思う方もいらっしゃるんです。同じ目線で学校や福祉施設を選ぶわけではないので、重度のお母さんからすると特別支援学校以外の選択肢があってそう思えることもうらやましい話だったり。本当、難しいですね。

 

でもポイントはそれがいいとか悪いではなくて、自分の子に適するか適さないか、希望する設備かどうかなので。気軽に相談したいけど、リアルだと言葉をすごく選んで 失礼にならないようにとか、傷つけないようにとか気をつかいながら話さないといけませんし、心の余裕がないときや疲れてるときにはそういうつき合いがつらい人もいますね。SNSという匿名のつき合いでそのあたりをうまくバランス取れるようになったというのは大きいですね。

 

漫画『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』第3話より
漫画『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』第3話より

インターネットが当たり前の世代に伝えたい大切なこと

── みなとさんもSNSで読者さんと繋がることで、さまざまな声が届くのではないでしょうか?

 

みなとさん:そうですね、直接ダイレクトメールでレビューをお送りいただくこともあります。漫画を読んでくださった方からのポジティブなご意見は一番の励みになりますので、そんな方たちの道しるべになるような漫画をこれからも描かなきゃなと思っています。

 

そんななかで最近思うことがあるのですが、今はスマホ1台あれば片手で情報収集できて、それが当たり前という世代の人たちが増えてきて、昔の不便だった時代を知らない人も多いんですね。そんな方たちから時々「主人公は不勉強だ」と言われるんです。なぜ自分から調べようとしないのかと(笑)。

 

今より10数年前はまだ情報を得るのが大変だった時代。書店に行って専門書を読んだり、パソコンで調べるとざっくりとした情報しかなく、ご自身でブログをやってらっしゃる方とかの情報を見たりするのがやっとでした。ヘタに掲示板なんかを覗くとメンタルやられてボコボコにされるだけだったんですよ。なので自分の足で出向き調べるということに奔走していました。

 

今は手のひらの上で情報が手に入るのが当たり前になりました。若い世代の方々にはそれがいかにありがたいことか実感してほしいなと思いますし、インターネットで便利な今でも、施設見学や相談など最後は自分で足を運び自分の目で確認することが大事なのは変わりません。その大切さも忘れないでほしいなと思うところです。

 

PROFILE みなと鈴さん

漫画家。自閉症の長女と定型発達の次女を育てる2児の母。1995年ソニー・マガジンズ『きみとぼく』よりデビュー。2006年コミックス『おねいちゃんといっしょ』(講談社刊)が第10回文化庁メディア芸術審査委員会推薦作品に。現在、自閉症の長女をモデルに描いた作品『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~』(秋田書店)をエレガンスイブで執筆中。

取材・文/加藤文惠 画像提供/秋田書店、みなと鈴