お笑いの仕事をしながらゴミ清掃員としても働く芸人・マシンガンズの滝沢秀一さん。自身の経験を元に描かれた漫画『ゴミ清掃員の日常』が話題に。こちらは実は夫婦共著で、漫画を担当したのは妻の友紀さん。なぜ夫婦で漫画を作り上げることになったのか、滝沢友紀さんに伺いました。(全2回中の1回)

 

ゴミ清掃員としても働く芸人・マシンガンズの滝沢秀一さん
ゴミ清掃員としても働く芸人・マシンガンズの滝沢秀一さん

幼い子どもを育てながら働き方で悩んでいた

── 漫画『ゴミ清掃員の日常』では原作・構成を秀一さん、漫画を友紀さんが担当されたそうですね。もともと絵を描くお仕事をされていたのですか?

 

友紀さん:いいえ、まったく(笑)。漫画家デビューは48歳なのですが、それまではずっと歯科クリニックで受付をしていました。

 

42歳で長男、46歳で長女と、40代になってから高齢出産をしました。仕方のないことですが、保育園に預かってもらっている子どもがとにかくしょっちゅう体調を崩すんです。歯科クリニックは少人数で回しているため、急な欠勤は迷惑をかけてしまうとずっと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 

── それで辞めてしまった?

 

友紀さん:悩んでいたタイミングで、夫から今度出すコミックの絵を描かないかと言われたんです。といっても、私は仕事で絵なんて描いたことなくて、描くとしたら、せいぜい家族へのメモ書きにイラストを添える程度でした。

 

でも自宅でできる仕事なら、子育て中でも人に迷惑をかけることもないし、人生においてこのようなビッグチャンスはもうないのでは!と思うように…。急な提案に驚きましたが、もともと漫画が好きで子どもの頃からずっと読んでいて漫画は好きでしたし、本の編集担当の方からの後押しもあり、やってみようかなという気になったんです。

 

48歳で漫画家デビューを果たした滝沢友紀さん(右後方)
48歳で漫画家デビューを果たした滝沢友紀さん(後列右)

── すぐに本格的な漫画が描けたのですか?

 

友紀さん:いえいえ、まさか!描き始めてみたら、ブレずに線一本を描くのがこんなに大変なのかと驚きました。iPadで漫画制作用のソフトを使って描いているのですが、そのソフトの講習会に出たり、地道に練習をし、描き方を徐々に覚えていきました。

 

最初は描きたいポーズと似ている写真や絵をネットで探し、それを参考に描いていましたが、この探す作業にとにかく時間がかかってしまい…。1コマ描くのに膨大な時間を要しました。そこで夫にお願いして、描きたい絵のモデルになってもらいました。夫は、清掃員の制服を着て、実際に作業をしているポーズし、写真に撮って、それを見ながら描くようにしたところ、だいぶ作業がしやすくなりました。

 

他にも清掃工場の内部をネットで検索して参考にしたり、ゴミ収集車のミニカーを見ながら描いたりもしました。まさかこんなに大変だとは思いませんでした…。でも、漫画の発売日が5月30日の「ごみゼロの日」と決まっていたので、約10か月で120ページを描き上げなければならず、もう必死でしたね。

 

── 5月30日の「ごみゼロの日」はお二人の結婚記念日だそうですね。

 

友紀さん:そうなんです。結婚したのは清掃員を始める前で、15年以上前のことなので、本当に偶然なのですが(笑)。当時は大安だったからなどの理由でその日に決めたと思うのですが、夫がゴミ清掃員として働いて、それを通して芸人としても活躍していることを考えると、運命だったのかもしれませんね。

ゴミ清掃員の妻でも知らなくて驚くことばかり

── マシンガンズの滝沢さんはX(旧Twitter)で、漫画のエピソードをたびたびご紹介されています。Xに掲載して、特に反響のあった内容はどちらになりますか?

 

友紀さん: 11万いいねがついた「コロナ禍におけるゴミの出し方」はすごい反響でした。次は、8万いいね以上ついた「ペットボトル工場」ですね。ペットボトルは回収以外にペットボトルの工場勤務があり、そこではリサイクルのため手作業でラベルをはがしたり、キャップを外したりという作業が行われていました。色付きのペットボトルはリサイクルできないこと、ビンが混じっていると作業が止まること、夏はペットボトルの量が多くて腱鞘炎になる人がいるなど、私自身もこのコミックを描くにあたって初めて知りました。

 

8万いいね以上ついた「ペットボトル工場」の一コマ
8万いいね以上ついた「ペットボトル工場」の一コマ

── 他にも知らなくて特に驚いたことは?

 

友紀さん:夏の暑い時期の作業が大変なのはわかっていたつもりでしたが、コミック化にあたり、夫によく話を聞いてみると思っていた以上でびっくりしましたね。ゴミ清掃員はゴミ回収のために実は1日中走っていて、夏は熱中症で倒れてしまう可能性もあります。凍ったペットボトルやタオルを持っていっても、あっという間に溶けてしまうそうです。

 

また、夏はゴミについている虫が多いという問題もあるそうです。特に注意が必要なのは毛虫。そこに毛虫がいなくても毛虫の毒や毛が残っていて触ってしまうと、皮膚がブツブツになってしまうこともあります。

 

── それは知りませんでした…。大変な仕事ですね。清掃員の大変さをわかっているからこそ、自宅でのゴミの捨て方に対しても厳しいチェックが入りますか?

 

友紀さん:夫の指導もあり、気をつけるようにしています。たとえば水分が残っていると焼却炉のエネルギーを奪ってしまうので、プラスチックの袋や油のついたものは、洗った後にしっかり乾かしてからゴミに出すようにしています。

 

そんな両親を見て育っているからか、娘は「もったいない精神」が強いですね。清掃員の方に敬意を払っているのを感じます。息子はズボラところもありますが(笑)、分別がわからないときは勝手に捨てずに、どうしたらいいかちゃんと聞いてくれますね。

 

PROFILE 滝沢友紀さん

お笑い芸人・マシンガンズの滝沢秀一の妻で、二児の母。48歳でイラストや漫画の仕事を始め、コミック『ゴミ清掃員の日常』や『ゴミ清掃員の日常 ミライ編 あたらしい時代で、しあわせになるゴミ出し術』(共に講談社)で、漫画を担当している。

取材・文/酒井明子 画像提供/滝沢友紀