40代女性・みにごんさんの長男は重度の牛乳アレルギー。小学校入学での問題は給食でした。どのように対応したのかなど、当事者ならではの難しさについて聞きました。(全2回中の2回)
「給食では飛沫も注意」学校は座席も配慮してくれた
── 重度の牛乳アレルギーがある息子さんが小学校に入学するとき、給食についてはどのように対応されましたか?
みにごんさん:入学前年の秋、就学前検診で食物アレルギーについて記載する箇所がありました。「食物アレルギーがある」といっても、その症状は人それぞれです。
長男は牛乳、乳製品、乳タンパク質を含む加工食品すべてに反応する重度の牛乳アレルギー。当時、わずか0.07mlの牛乳でも体調に影響が出てしまいました。
小学校側は長男のことを何も知らないため、長男にとって牛乳が非常に危険であることを伝える必要がありました。小学校とは面談が2回行われ、2回目は校長、教頭、養護教諭、栄養教諭、担任、学年主任、自治体の教育委員会の方々が集まってくれました。
── 小学校側とはどんなことを話したのでしょうか?
みにごんさん:長男の通う小学校はきめ細やかに対応してくれたと思います。給食の献立表は、アレルギー児確認用の献立表が配られます。
でも、それだけだとどのメニューにどの食材が使用されているのかわかりません。たとえば「バター使用」とあっても、カレーライスに使われているのか、サラダなのかは不明です。その点を不安だと伝えると、主な使用食材のアレルギー物質一覧表と、すべての食材の情報をデータとして送ってくれました。
また、配膳に間違いがないよう、一品でも乳製品を用いた献立がある日はお弁当持参になりました。お弁当は校長室に保管させてもらっています。みんなが給食を配膳しているときに長男自身が取りに行きました。
── 丁寧な対応で安心ですね。実際、給食が始まってからはどのような様子ですか?
みにごんさん:毎日牛乳が出るため、小学1年生のときはどんな献立でも欠席しない限り毎日、補助の先生が入って隣で見てくれていました。座席も他の生徒の食べこぼしや飛沫がかからないよう、ふだんの座席とは異なり、教室の最後列に移動しています。
給食当番にも基本的には参加せず、スプーンやフォークを配る係になっているようです。また、給食にはパックの牛乳が出ます。リサイクルのため、生徒が牛乳パックをつぶし洗浄するのですが、長男の学年はこの洗浄を行わないことになりました。
1年生のクラスメイトに説明「みんな真剣に聞いてくれて」
── クラスメイトにはどのように説明したのでしょうか?
みにごんさん:小学校との面談時、クラスメイトにどう説明するか質問したところ、給食が始まる日に養護教諭の先生が学年全体へ長男の牛乳アレルギーがあることを話してくれるとのことでした。
それだけでも十分でしたが、小学1年生がどれくらい理解してくれるのか心配で、給食の様子を見学も兼ねて、私がクラスメイトの前でお話をすることにしました。
子どもたちには、長男が乳製品を食べると危険になるかもしれないこと、牛乳が身体につくだけで体調を崩すかもしれないことを話しました。だから、掃除当番や給食当番も、みんなと同じようにできなくて、もし苦しそうにしていたら先生を呼んでほしいこと、そして、本人が治そうと頑張っている様子も伝えました。
子どもたちは私が思っている以上に真剣に聞いて、素直に受け止めてくれました。直接、クラスに行って私が話したことは、いまでもよかったと思っています。
2年生に進級したときもクラス替えがあったため、クラスメイトに手紙を書いて、担任の先生に代読してもらいました。保護者会でも、保護者の方たちにアレルギーのことを私から直接お伝えしました。
栄養教諭の引き継ぎがうまくいかず苦労したことも
── 小学校でのアレルギー対応は順調だったようですが、つまずいたことはありますか?
みにごんさん:最初からとても丁寧な対応をしていただいていました。ところが、年度の途中で、長男の給食管理をしてくれていた栄養教諭が突然の体調不良で小学校に栄養教諭不在の時期がありました。その先生が長期休職されて数か月後、新しい栄養教諭が着任されました。
長男は一品でも乳製品が含まれる献立がある場合はお弁当持参にしていたのですが、栄養教諭が代わってから、牛乳を使用した献立があるのにお弁当持参対応ではないことがありました。栄養教諭は各小学校に原則1名なので、業務内容を細かく把握している方が他にはいなかったようです。
以前から複数の先生と面談を重ね、アレルギーについての情報は共有していました。でも先生たちも多忙なため、引き継ぎがもれてしまったのだと思います。
もちろん、急に専門職の職員が抜けたので、周囲も新しい栄養教諭も混乱して大変だと思います。とはいえ、新しい栄養教諭に最初から長男の事情を説明しないといけないのは苦労しましたし、私にとってはショックで悲しかったです。
SNSの情報によれば、給食のアレルギー対応は学校や先生によって異なるのが実情のようです。そして、担任、養護教諭、栄養教諭、校長先生が変わるたびに運用が変わります。
私の場合も担任が変わると、先生の危機意識の違いで、対応方法が少しずつ異なりました。2年生の担任はとても慎重で食後の手洗い、うがいは他の子どもと別の場所を使用するようにしたり、給食後は静かに過ごすよう配慮を徹底したり、注意深く対応してくれました。
重度の食物アレルギーは、なかなか理解されにくいのかもしれません。ただの好き嫌いだと勘違いされ、「少しくらいなら大丈夫」と軽く考える方もいます。
でも、アレルギーを持つ子にとって、アレルゲンとなる食べ物は命にかかわる危険なもの。本人もいろいろ食べたいのに本当に我慢して、早く治ってほしいなど、いろんな思いを抱えています。
さいわい、長男は理解のある小学校で過ごせています。でも、まだ小学4年生。長男が進学予定の中学は給食があります。あと5年半、何ごともなく過ごせるよう、気を引き締めていきたいと思います。
取材・文/齋田多恵 写真提供/みにごん