長男(9歳)が重度の牛乳アレルギーを持つ、みにごんさん(40代)。子どもの食生活とどのように付き合っているかを聞きました。(全2回中の1回)
「離乳食を食べようとしない」病院に行ってみると
── 長男の牛乳アレルギーに気づいたきっかけを教えてください。
みにごんさん:食物アレルギーの知識がないうえに母乳で育てていたため、赤ちゃんのときは気づきませんでした。長男は、離乳食を食べようとしない子でした。食べないことでの発達が遅延して、粉ミルクを入れたおかゆを食べさせようとしたときに口のまわりに発疹やかゆみが出ることから、食物アレルギーの疑いで大学病院を紹介されました。
血液検査で牛乳に対する数値が高いことがわかりました。1歳3か月のころ、アレルギーの「食物経口負荷試験」を実施したところ、注射器1滴、約0.05mlの牛乳で呼吸苦を起こしてしまったんです。
そこで初めてことの重大さに気づきました。牛乳やチーズ、バターなどの乳製品だけでなく、乳タンパク質を含む加工食品でさえ、下痢、嘔吐、発疹、血圧低下や意識障害などのアナフィラキシーを引き起こす可能性が高いのです。
離乳食を食べなかったのもアレルギーがあったことで、食べ物に敏感だったからかもしれません。食べられるものが限られてしまう長男がかわいそうだったし、この先どうなるかと、目の前が真っ暗になりました。
惣菜店のサラダでアナフィラキシーになった訳
── 牛乳アレルギーがわかってから大変だったことを教えてください。
みにごんさん:買い物をするとき、加工品はすべて成分表示をチェックしなくてはいけなくなりました。それまで知らなかったのですが、乳製品はもちろん、ハムやソーセージにも乳成分が入っていたり、どんな製品にも香料や乳化剤として乳成分が入っていたりする可能性があるんです。
長男が食べられる商品が置いてあるお店は限られ、お店をはしごしないといけなくなりました。フルタイムで働いているため、買い物に時間を取られるのは大変でした。
成分表示があいまいな場合もあり、「アレルゲン」として記載がないのに、原材料を見ると「脱脂粉乳」と書いてあることもあり、苦労しました。
はじめて長男がアナフィラキシーを起こしたのは、乳製品・乳成分が不使用とされていた総菜店のサラダを食べたときです。意識がはっきりしなくなり、救急搬送されました。
後日、お店を追及したら表示に記載はなかったのに、乳成分を使っていたことがわかりました。成分表示だけが頼りなのに…、誤りや抜けがあることもあり、自分が手作りしたものしか信用できなくなって。それでも、「ここに行けば食べられる商品がある」とわかるようになり、買い物にも少しずつ時間がかからなくなりました。
外食でもアレルギー表を置いていないお店は多く、原材料の情報を表示しているチェーン店しか行けなくなりました。とはいえ、情報があるからといって、食べられるものがあるわけではありません。いつも長男が食べられるおにぎりを持っていないと不安で、食事の時間をはさんで外出できませんでした。
── 1歳半から通ったという保育園ではどんな対応だったのでしょうか?
みにごんさん:保育園ではきめ細かく対応してくれて、給食はアレルギー物質を使わないものに置き換えてくれました。たとえば蒸しパンだったら豆乳蒸しパンに変更し、豆乳などに置き換えられないメニューのときだけ別献立にしてくれたので、安心できました。
── アレルギーの治療はどんなことを行うのですか?
みにごんさん:保育園の年中から医師の指導のもと、自宅で経口免疫療法(原因食物を医師指導のもとで経口摂取させ、閾値上昇または脱感作状態としたうえで耐性獲得を目指す治療法)を0.07mlから始めました。
いまでも乳製品は飲んだり食べたりはできませんが、負荷試験治療が進み、それまで完全除去していたものを微量でも口にできるようになり、前向きな気持ちになりました。
同じころ、エピペン(アナフィラキシー症状を一時的に緩和させるための緊急補助治療に使用される医薬品のこと)の処方も開始し、「もしものとき」の安心感が得られました。ただ、「エピペン=重度のアレルギー」と烙印を押された気にもなり、複雑ではありました。
── ふだんのおやつはどんなものをあげていますか?
みにごんさん:通常のケーキ、アイス、パンは食べられません。でも、調べていくうちにアレルギー用のケーキやパンを作っているお店があると知りました。
あとは手作りをすることもあります。「牛乳は豆乳」に、「バターは豆乳バター」に置き換えればお菓子類はだいたい作れます。なかなか手に入らないけれど、豆乳生クリームも市販されています。パン教室に通ったり、パティシエにシュークリームの作り方を習いに行き、乳製品を使わない工夫を聞きに行ったりしたこともあります。
長男も自分が基本的に市販のお菓子を食べられないと理解しています。手作りは大変ですが、「僕、これ食べてもいいの?」と目をキラキラさせているのを見ると、うれしくて頑張れます。
アレルギーのない5歳の弟もお兄ちゃんを気づかって
── みにごんさんにはお子さんがふたりいるそうですが、下の子にはアレルギーはあるのでしょうか?
みにごんさん:5歳差の次男にはアレルギーはありません。だから、次男が食べたがるお菓子を買うことはあります。そのときは、長男のそばで食べないように配慮させ、食べこぼしがないよう気をつけさせています。
次男も5歳になり、「お兄ちゃんのそばで食べると危険」と理解してくれます。もっと幼いころは危険がともなうため、乳製品は次男にも食べさせていませんでした。次男には食べられるものを控えさせてしまい、かわいそうでした。
一方で、長男が食べられないものを目の前に置くのも不憫です。兄弟どちらにも寄り添った食生活を考えるのは難しいですね。
私のまわりには重度のアレルギーを持つ子がいなかったため、情報交換などもなかなかできませんでした。SNSのおかげで、同じ悩みを持つママたちとも知り合え、心強かったです。
取材・文/齋田多恵 写真提供/みにごん