結婚を機にTBSを辞め、現在は11歳の女の子と9歳の男の子を育てている海保知里さん。育児で心がけているのは「家族の対話」だそうです。(全4回中の3回)

対話重視の育児で何でも話し合える環境作り

── 結婚を機にTBSを辞め、パートナーの赴任先であるアメリカで出産・育児を経験されました。海外での子育てはいかがでしたか?

 

海保さん:ニューヨークで出産し、上の子が2歳、下の子が8か月になるまで海外での子育てを経験しました。電車やカフェで子どもたちが泣いてしまっても、「元気な証拠だね!」と周りの人があやしてくれて、すごく助かりましたね。

 

とくに長女が人見知りの時期は、外で大泣きしてしまうことが多かったんです。でも、通りすがりのおばあちゃんに「知らない人に泣いちゃうくらいが安全ね!」と声をかけてもらい、心がやわらぎました。

 

無造作ヘアとパジャマ姿でお子さんの沐浴をする海保さん

── 現在、お子さんたちは小学校高学年になられました。育児で心がけていることはありますか?

 

海保さん:わが家では、とにかく対話することを心がけています。たとえば、宿題をすべきなのになかなか取りかからないことってありますよね?そんなときはまず「何でやりたくないの?」と、理由を尋ねます。

 

根気よく話を聞いていると、「体育の授業で疲れちゃって」と理由を話してくれるので、「そうなんだ」といったん受け入れて、「でも、宿題しなきゃいけないよね?まずここだけやってみる?」とか「じゃあ、少し休んでからやってみよう」と、お互い納得できるまで打開策を話し合います。

 

最近は「お母さんが隣にいたら、やる気出る?」なんて子どもたちに言うと、「それはウザいから嫌だ」と言われるようになり、ちょっとせつないです(笑)。

 

──「宿題しなさい!」と強制するほうが大人はラクですが、真摯にお子さんと向き合われているのですね。

 

海保さん:大人だって、家事や仕事をしなきゃいけないときに、ついスマホを見てしまうこともありますよね。大人だってラクしたいし、休憩したいんです。なので強制せず話し合うようにしています。

 

子どもたちとディズニーランドへ

対話を重視すると甘くなる?

── この先、もしかしたら「話したくない」ということも出てくるかもしれません。そういったときはどうしますか?

 

海保さん:わが家では、親子間で「気持ちを話してくれる、聞いてくれる」という信頼関係は築けていると思います。

 

たとえば、突然子どもが「今日は学校に行きたくない」と言い出したら、親は心配ですよね。でも、いつもお互いの気持ちを話し合っていると、根気強く聞けば少しずつ理由を話してくれるんです。

 

なかなか話してくれないことももちろんありますが、気分転換に散歩に誘う、少し休んでから聞くなど工夫すれば、ポツリポツリと話してくれます。普段から子どもととことん向き合っていると、親も子どもの少しの言葉から心の機微を読み取れるようになるかなと。お互いの気持ちを100%理解するのは難しいですけど、分かりたいですよね。

 

── ゆっくり話を聞く時間がつくれなかったり、心に余裕がなかったりしますが、子どもの話を根気強く聞く姿勢って大事ですね。

 

海保さん:穏やかに対話しようと心がけていますが、途中で怒ってしまうこともありますよ!この前、子どもから「さっきまで話し合っていたのに、急に怒り出すなんて情緒不安定だよ」って突っ込まれちゃいました。

 

対話を重視すると、結果的に親として甘くなってしまう点は課題です。子どもたちの気持ちを受け止めて、「じゃあ、半分だけでも宿題頑張ってみる?」と譲歩しちゃうことも多くて。

 

先日ふと、「このままじゃ子どもたちがダメ人間になってしまうかも…」と心配になり、「親が厳しく言うのは、子どもにちゃんとした大人になってほしいからなのよ」「お母さんは甘いから、『これ以上はマズい』と気づいたら自分たちで軌道修正しなさい」と、子どもたちを諭しました。ま、理解しているかは謎です(笑)。

 

ただ、親が「これ以上はダメ!」と言いながら子どもについて回るよりも、子どもの自主性を育めるはずと自分に言い聞かせています。

 

「お母さんの顔」ピンク色の上品な着物姿で、娘さんの髪を直す海保さん
── お父さんは、どのようなスタンスで育児をしていますか?

 

海保さん:夫も子どもたちとの対話を重視しながら育児をしています。私が怒ってしまったときは、夫が私と子どもの間に入ってくれるし、夫が怒ったときは私が仲裁しています。仲裁役が途中から怒ってしまうこともありますが(笑)、役割分担して育児していますね。

いろんな人との出会いが将来の可能性を広げる

── お子さんたちの成長を感じるのは、どんなときですか?

 

海保さん:放課後のわが家はわりとオープンなので、お友達がうちにゲーム機を持ってきて、みんなで遊ぶことも多いんです。ゲーム中の子どもたちのやり取りを耳をダンボにして聞いていると、数年前は遊ぶゲームのことでもめたりしていたのが、最近は譲り合いができるようになってきました。

 

時折聞こえてくる気配りやフォローの言葉にも、子どもたちの成長を感じます。姉弟間のやり取りでも、ささいな口喧嘩はまだ多いですが「次はこうしてみよう」と落ち着いた話し合いができる瞬間もあり少しホッとしています。

 

── 日々の生活のなかでお子さんととことん向き合い、些細な成長を感じられるのは、海保さんが家庭優先でお仕事されているからかもしれません。

 

海保さん:そうですかね…。いま、家庭優先の状況のなかお仕事をさせていただけるのは、今まで出会ってきた方々とのご縁があってこそだと思っています。

 

いろいろな人との出会いが将来の可能性を広げると実感しているので、子どもたちにも今後たくさんの人に出会ってほしいです。多種多様な考えを知って、自分の世界や可能性を広げてくれたらと思っています。

 

PROFILE 海保知里さん

1999年TBSにアナウンサーとして入社。「サンデー・ジャポン」や「はなまるマーケット」などで活躍。2008年にTBSを寿退社し、アメリカで出産・育児を経験。現在は、日本で2児を育てながら、絵本の読み聞かせをライフワークに幅広く活動している。2023年10月よりYouTubeにて全編英語による日本観光ガイドチャンネル「Travel Japan」のナビゲーターも務めている。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/海保知里