「エンクミ」の愛称で活躍した遠藤久美子さん。20代、多忙な毎日のなかでの唯一の癒やしは、楽屋での手芸タイムだったと明かします。(全5回中の2回)

 

20代のころの遠藤久美子さん
自作のビーズ作品を手ににっこり

移動時間と楽屋でのひとときが唯一の休憩時間

── 20代でご出演されたドラマ『Five』も印象的でした。ともさかりえさんや篠原ともえさん、鈴木紗理奈さんなど、当時売れっ子だった方々が出演していましたね。

 

遠藤さん:そうですね。共演者の方は、みなさんすごく忙しくて、いろんな現場をぬってきていましたね。現場で寝ている人もいたりしました。

 

──『ウリナリ!!』の「芸能人社交ダンス部」もそのころですよね。当時が一番忙しかったですか?

 

遠藤さん:一番忙しかったです。バラエティのお仕事もたくさん入れていただいて。車で寝て、うちに帰ってもすぐ出かけて…みたいな生活でした。

 

20代のころの遠藤久美子さん
20代のころの遠藤さん。移動時間と楽屋での時間が唯一のプライベートというほどの忙しさでした

── 当時を振り返っていかがですか?

 

遠藤さん:まずは「今日を精一杯生きよう」という感じでしたね。一度、40度の高熱が出てしまったことがあって。その日は競艇場を訪問して優勝者の方の花束をプレゼントするイベントに出演予定だったんです。

 

ふらっふらだったんですけど、当時は風邪をひいても自宅療養できるような雰囲気もなく…。「立てれば、まだいける」みたいな時代だったんですよね。

 

で、まだ立てたので、お花をお渡しに行った記憶があります。今思えば、外のイベントで風通しがよくてよかったなと…。ただ、そこで体調管理の大切さを学びましたね。そのときは本当に、プライベートの時間が、移動時間や楽屋での待機時間しかなかったんです。

 

20代のころの遠藤久美子さん
ドラマやバラエティにひっぱりだこでした

── 空き時間はどんなふうに過ごしていたんですか?

 

遠藤さん:ビーズアクセサリーが好きだったんです。ブレスレットや指輪、ネックレスを作ったり。あとは当時、鋲(びょう)を使って革製品を作るのが好きで。楽屋に道具を持っていき、金づちでトンカンたたいて、ベルトを作ったりしていました。

 

フェルトも好きだったので、フェルトを使ったカードを作って、スタッフの方にメッセージを書いて渡したことも。段ボールでフォトフレームを作って、フェルトやビーズで飾りつけして、太秦のスタジオでスタッフさんに「ありがとうございました」と言ってプレゼントしたり。そういうのが息抜きの時間だったんですよね。

舞台で知った、演技の楽しさ

── 当時の仕事でターニングポイントになったことは?

 

遠藤さん:舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』ですね。女優というお仕事が楽しい、と教えてもらった気がします。当時、共演者の方に「舞台って楽しいですね」って言ったら、「こんな舞台ないよ!最初がこの舞台でアンラッキーだな」って言われるぐらい(笑)。素敵な舞台だったんです。

 

作品もおもしろかったですし、演出家の方も優しかったですし、共演者もみんな仲が良かくて。

 

20代のころの遠藤久美子さん
ドラマやバラエティだけでなく、歌手としても活動していた遠藤さん

遠藤さん:それで当時の事務所の方に「女優のお仕事って、いいですね」って話をしたんです。でも、所属していたのがモデル中心の事務所だったので「女優畑かぁ…いないのよね…」って困っていて(笑)。それでも、年に1回は舞台をやらせていただけていました。

故・渡瀬恒彦さんが「心配なんだ」と縁をつなぐ

── 30代前半で一度フリーになったそうですね。

 

遠藤さん:そうなんです。前の事務所は元々Winkさんの所属事務所から独立したという経緯があって、アイドル育成に力を入れていました。だから私も「3年ほどかけてアイドルとして育てたい」と思っていただいたようで、歌もやらせていただけたり。

 

気づけばその事務所に所属して10年以上過ぎていて、事務所も私も「あら、この先どうしましょう…」と(笑)。バラエティもやらせてもらっていましたが、そこで活躍できるほどの才能もないですし、私自身、もっとお芝居もやりたいなと思っていたんです。

 

事務所としては、私を経営者にする案も考えてくれて、一瞬心が揺れたんですが「いや、性格的に私には無理でしょ」と(笑)。

 

ちょうど東日本大震災直後で自分を見つめ直したこともあって、2011年に独立する形になりました。ただ、しばらくしてドラマで共演していた渡瀬恒彦さんが「フリーでこの先どうするんだ。心配なんだ!」と、東映のプロデューサーにつないでくださって。そのプロデューサーが今の事務所を紹介してくださったんです。

 

── そうだったんですね。

 

遠藤さん:フリーになってからは、お金やスケジュールのことを、私と直接やり取りをしなきゃいけなかったので、やりづらさがあったみたいで。「どこかに所属してもらったほうが嬉しい」と言われたりすることもあったので、2012年から現在の事務所に所属することになりました。今は、お芝居もバラエティも、バランスよくやらせてもらっています。

 

PROFILE 遠藤久美子さん

1995年にマクドナルドのCMでデビュー。『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などのバラエティや舞台、ドラマなど幅広く活躍。2016年に映画監督の横尾初喜さんと結婚、二児を出産。横尾監督最新作『こん、こん。』にも出演中。

 

取材・文/市岡ひかり 写真提供/遠藤久美子