「おかあさんといっしょ」でいつも元気な笑顔を見せていた上原りささん。そんなハツラツとした姿とは裏腹に、葛藤を抱えて活動していた時期もあったそう。ツラいときに支えてくれた先輩おにいさん、おねえさんからの教えとは。(全4回中の2回)

「地味」「暗い」と書かれ打ちのめされた

── 上原さんの「パント!」をリアルタイムで拝見していましたが、いつも素敵な笑顔に元気をもらっていました。

 

上原さん:ありがとうございます。ただ、就任当初は悩みながら活動していたんです。SNSで「地味」「暗い」「こんな子がなぜおねえさんになったの」と書かれているのを見てしまい、打ちのめされました。

 

前任のいとうまゆさん(4代目身体表現のおねえさん)に近づくにはどうすればいいのか悩んで、「まゆおねえさんが得意だったアクロバットもできるようにならなければ」と、アクロバット教室に通ったこともありました。

 

── 笑顔の陰でそんな苦悩を抱えていたんですね。どうやって乗り越えたのでしょうか?

 

上原さん:当時、一緒に番組に出演していた先輩おにいさん・おねえさんたちが、「りさちゃんは、まゆおねえさんじゃないんだから同じことをする必要はない」、「自分が持っているもののなかで、何ができるかを考えた方がいい」と、励ましてくれました。

 

家族からも「あなたにしかできないことがあるからこそ、選んでもらったはず」と言葉をかけてもらい、少しずつ「自分にしかできないことをやってみよう」と、思えるようになりました。

 

「おかあさんといっしょ」歴代おにいさん・おねえさんと(左から横山だいすけさん、茂森あゆみさん、上原さん)

自分にしかできないことを追求した先に

── 上原さんの「自分にしかできないこと」は、どんなことでしたか?

 

上原さん:小さいころから習っていたバレエや、憧れのタカラジェンヌの手先の動きや表情、そして高校の部活で取り組んだチアリーディングの魅せ方を、おねえさんとしての表現に取り入れていきました。

 

表情や、手先足先の動きは印象が変わる大切な要素。鏡の前で研究したり、スタッフの方々に意見を聞いたりして、私なりの表現をつくり上げていきました。

 

── 今までの経験や学びを、おねえさんとしての表現に活かすようになったんですね。

 

上原さん:あと、表現の幅を広げた結果、変顔ができるようになりました。昔、妹たちと変顔をして遊んでいて「それは変顔じゃなくてキモ顔だよ」と冗談で言われたのがショックで、ずっと変顔を封印していたんです。

 

── りさお姉さんの変顔はよくテレビで拝見していましたが、苦手だったんですか!?

 

上原さん:実は、最終オーディションでもカメラの前で変顔をするように言われたのですが、「できません」と拒否したほど苦手でした(笑)。

 

でも、当時共演していた先輩おにいさんたちが変顔で子どもたちを喜ばせていて、ついに三谷たくみさん(20代目うたのおねえさん)も「変顔がんばらなきゃ」と言い始めたので、「後輩の私がやらないわけにはいかない!」と、家で練習するようになりました。

 

変顔ができるようになると自分を縛りつけていたものが外れたのか、不思議と自分の心が動く表現を追求できるようになりました。

 

「おかあさんといっしょ」歴代おにいさんと(左から横山だいすけさん、上原さん、小林よしひささん)

おにいさん・おねえさんたちは第二の家族

── 上原さんにとって、共演者のおにいさん・おねえさんはどんな存在ですか?

 

上原さん:20代のほとんどを家族よりも長く、密な時間をともに過ごした「第二の家族」ですね。とくに、先輩たちは、いつも心に響く助言をしてくれる大切な存在です。

 

コロナ禍前は、3~4歳の子どもたち45人ほどと一緒に収録に臨んでいたのですが、合間で子どもたちが泣いてしまったり、ケンカが始まってしまうこともありました。もともと子どもは好きでしたが、就任当初はどう対応すべきか困ってしまって。そんなとき「私はこうしてみたら、うまくいったよ」といった先輩たちの体験談にはすごく助けられました。

 

── 具体的な体験談は「〜すべき」と言われるより受け入れやすいですね。アドバイスの方法は、仕事はもちろん、子育てでも参考になります。

 

上原さん:印象的だったのが、子どもたちが盛り上がり過ぎて収録が進まなくなってしまったとき。共演していた小林よしひささん(11代目体操のおにいさん)が、子どもたちの前で急に小声で話し始めたことです。さっきまではしゃいでいた子どもたちが、一瞬で静かに話を聞き始めたのを見て「こんな方法もあるのか!」と目から鱗でした。先輩たちは言葉だけでなく行動からも、教えやヒントを示してくれました。

 

「あつりさとチョッピーの森」であつこおねえさんと共演!

── 上原さんにとって、「おかあさんといっしょ」を見ている子どもたちは、どんな存在ですか?

 

上原さん:子どもたちはこれからの世界を担う宝だと思っています。だからこそ、大人としてもっと子どもを大切にできる社会をつくらないといけないと感じています。

 

最近は、あつこおねえさん(21代うたのおねえさん)と子ども向けイベントを開催しているのですが、今後もミュージカルや子どもたちと関わるお仕事を通じて、子どもたちに夢や希望を与えていけたらと考えています。

 

PROFILE 上原りささん

1991年生まれ。洗足学園音楽大学卒業。大学3年生のころ、NHK「おかあさんといっしょ」の「パント!」のおねえさん(5代目身体表現のおねえさん)に就任、7年間務める。現在は、ミュージカルや子ども向けイベントへの出演のほか、2020年には「はみがきジョーズ」でCDデビューも。11月18日『あつりさとチョッピーの森』を市原市民会館大ホールで開催予定。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/上原りさ