タレントや女優として活動するなか、テレビ番組のコメンテーターとしての歯に衣着せぬ発言が話題となっている山田まりやさん。最近『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)に出演された際のエピソードや、昨年から力を入れているシングルマザーへの支援についてお話を伺いました。(全3回中の2回)
女優業はセーブ「息子の人格形成が育まれる今を優先」
── 現在はどのようなお仕事が多いのでしょうか。
山田さん:今は7つの資格を活かして商品開発のお仕事をメインにしています。役者はテレビや映画や舞台にかかわる間、スケジュールと身と心もすべて明け渡し、命懸けで挑む大変なお仕事だと思っています。最初のころは何とか両立したいと、舞台で1か月の地方公演の際には息子も連れていき、地方の保育園に1か月通わせたりもしました。でも、何かトラブルがあったときに責任が取れないですし、全身全霊で挑めないのならばしばらくはお断りしようと決めました。
── 今は息子さんとの時間を大事にされているのですね。お聞きしていると、年代によって自分に必要なキャリアの選択が的確だなと感じます。
山田さん:子どもはスポンジのように、いいことも悪いことも何でも吸収してしまいます。親や学校や習い事の先生たちだけではなく、YoutubeやTikTokなどのSNSからや道ですれ違うすべての人たちからいろんな影響を受けてしまうなかで、できるだけ喜怒哀楽を受け止め、昇華させてあげたい。人格形成が育まれる大事な時期に心と身体にたくさんの愛と栄養を届けてあげたいと思っていて。
そのためにはやはり自分がまずは人生を味わい楽しみ尽くし、優しさをシェアできる人間でありたいと考えてからは、仕事への取り組み方も変わりました。
── 昨年、母子を支援するための団体・MwMJAPAN(ムゥムジャパン)を設立されました。山田さんのなかでボランティア活動、特に母子を支援する活動のプライオリティが高まっているのでしょうか?
山田さん:数年前にある女性誌で、大学で貧困世帯の研究をされている先生と対談させていただいたことと、子どもの貧困問題に取り組むNPO法人キッズドアの代表・渡辺由美子さんから直接お話を聞かせていただく機会があり、すべてのしわ寄せが子どもに行ってしまうことがずっと気になっていました。
先日出演した『朝まで生テレビ』でも発言させていただきましたが、昨年の子どもの自殺者数が514人だったことを知り、それだけ将来に希望が持てず身近に頼れる大人がいない環境のなか、自殺という選択をしてしまった子どもたちがいる…こんなとんでもなく悲しい現実を無視して少子化対策なんて言っている場合ではないと思っています。
周りの大人や身近な親の不安は子どもに伝染してしまい、未来に希望を持つ力、自己肯定感が低くなる原因にもなります。一人ひとりの幸福度が上がり、他者を思いやる余裕がなければいけません。
昨年立ち上げた一般社団法人MwM Japanでは、母子はもちろん、父子もともに心豊かに暮らせるシステムをつくることが目標です。自身がシングルマザーに育てられた経験から金銭的不安が大きかったので、シングルマザーの雇用支援と貧困世帯の子どもたちの応援に繋がる活動に力を入れていきたいと思っています。
昨年12月には継続的な支援に繋げるためのオリジナルブランド「lino_rima(リノリマ)」を立ち上げ、売上げの一部を寄付させていただいています。大人も子どもも、おなかも心も満たされ心躍る毎日を過ごせることを願っています。
ママたちのリアルボイスをメディアで届けたい
──『朝まで生テレビ!』には金髪で出演され話題となりました。少子化問題について「今の社会では、子どもたちが将来の希望を持てない。女性が子育てや結婚したいと思えない」との鋭い指摘に司会の田原総一朗さんが反論し、激論をかわす一面も。「よく言ってくれた!」とSNSを賑わせました。
山田さん:あの番組は台本がないので、始まってみないとどうなるかわからないんです(笑)。『山田まりや』として番組に呼ばれている以上は、今私が思っていることをそのまま発表しないと意味がない。だからきちんと伝えたいことは言おう、と頑張りました。
少子化問題にしても、政治家の方は”データが〜“っておっしゃるのですが、普段からデータを目にする機会ってあまりないじゃないですか。やっぱり子育ての問題って今、子育てをしている当事者のほうが理解していると思うんです。
人気ドラマ『踊る大捜査線』でも、「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ」っていうセリフがありましたよね(笑)。政治家の方々が話している内容に違和感を抱いたり、”実際のママたちは違う意見なんだけどな“っていうリアルな声を伝えたいと思って発言していました。
── 山田さん自身も子育てをされているなか、どんなことが気になっていますか?
山田さん:どんな状況下にある家庭でも、これからを生きる子どもたちには窮屈な思いから解放されてほしいし、自由な選択肢をいくつも増やしてあげたい。多様性を受け入れ、共鳴、共存する器、柔軟性を養うための交換留学ツアーなど企画できるように頑張ります。
誹謗中傷する人の言葉は「道端に落ちているフンと一緒」
── 山田さんの周りの方々は、現在の活動についてなんと?
山田さん:身内や周りの方々からは炎上などを心配されたりもしますが、テレビで、しかも生放送となると限られた時間のなかでの発言になりますし、すべての人に理解を得るのは不可能です。
ですが、自分の意見を話してくださいと呼ばれている以上、炎上を怖がっていては発言できません。10代のときから若い世代代表としてコメントを求められることが多く、『サンデー毎日』の連載を見てくださったニュースステーションのプロデューサーさんにゲストで呼んでいただき、あの久米宏さんに「15分あげるから自由にしゃべっていいですよ」と生放送の直前に声をかけていただいたこともありました(笑)。
このときは、いじめ問題などの話から「学校の先生は社会に出てまだまだ人生経験が浅いので、勉強以外のことを子どもたちに教えるにはたりなさすぎるのでは。いろんな経験をして30歳を過ぎないと教職に就けないようにしてもいいのではないかと思います」と発言し、賛否両論ご感想をいただきました。
── はっきり意見をいうと、批判されたりすることもあると思います。そのような時は、どのようにして気持ちを切り替えていますか。
山田さん:気持ちを切り替えるというよりは、道端に落ちているフンを見るたびに思うのですが、こんなことをするのは、迷惑を迷惑だと思えない、自分の行動に責任が持てない、そんな大人を見て育ってきてしまった被害者なんだろうなぁ、とかわいそうな気持ちになります。こんな書き込みをする暇がないくらい充実した時間を過ごせるようになってほしいなぁと願います。
── 今は、仕事や生きづらさから閉塞感を抱えてしまう人も多いかもしれません。そのような人たちにアドバイスするとしたら?
山田さん:閉塞感や生きづらさを打破するために、旅を経験してほしいです。日本にいるとどうしても物があふれていて、知らず知らずのうちにぜいたく病になってしまいがちですよね。インフラが整い、公衆トイレもすごく綺麗ですし、浴槽でお湯に浸かれますし。夜に子どもや女性が出歩けて、落とし物もほぼ返ってくる。治安のよさなどは海外に比べるとありがたいことだらけです。
しかしながら一人ひとりの幸福度はとても低い。今ある幸せに感謝してから、あらためて自分が好きな満たされることを増やしていってほしいです。
PROFILE 山田まりやさん
第1回 ミスヤングマガジングランプリを受賞後、1996年デビュー。グラビアアイドルとして活動を始める。以後、テレビのバラエティ番組、映画・舞台のほか、コメンテーターとして幅広く活動中。近年はボランティアなど支援活動にも取り組んでいる。
取材・文/池守りぜね 写真提供/山田まりや