テレビ番組「みいつけた!」のサボさんとして親しまれる俳優の佐藤貴史さん。15年目に突入した番組と関わるなかで感じていることについて聞きました。(全3回中の1回)
サボさんは育児に新しい視点をもたらしてくれる
── 小劇場を中心に活躍されてきた佐藤さん。当初、子ども向け番組への出演に戸惑いはなかったですか?
佐藤さん:僕が育った小劇場の世界は、ある意味、何を言っても面白ければ許される世界です。でも、子ども向けの番組ではそうはいかないじゃないですか。台本通りのサボさんも面白いけれど、せっかく一緒に作品を作るなら、台本以上に面白くしたい。だけど、どこまで面白くしていいのかわからなくて、線引きが難しかったですね。最初は撮り直すことも多かったです。
サボさんって、いい加減で、適当なことを言うんだけどみんなから愛されるキャラクター。そういう部分は僕と近い気がして、人間らしくどこか抜けている隙ができるようにしています。
撮り直しで言えば、僕は栃木出身で発音になまりがあるので、指摘されることが多かったです。標準語に直さないといけないんですけど、どう間違っているのか、自分ではよくわからなくて。例えば「イチゴ」って、栃木では「チ」にアクセントが来るんですけど、標準語は平たんに発音しなくちゃいけない。アクセント辞典を買って勉強しているんですが、なかなか難しいですね。撮り直しはだいぶ減りましたが、今でもたまに注意されます(笑)。
── 番組の中でサボさんが担う役割をどう考えていますか。
佐藤さん:サボさんって大人のキャラクターなんですが、子どもと同じ目線に立って子育てをしているんです。早く起きられない子どもがいたら、「早く起きろよ」って命令するんじゃなくて、ゲームみたいに「誰が一番か、勝負だ!」という提案ができる。
普段の生活って忙しいから、保護者も大人目線で子どもと関わることが多いと思うんです。そんななか、子どもと一緒に面白く起きられる方法を考えてくれるサボさんの役割は、大きいんじゃないでしょうか。
これまでにない世界観「みいつけた!」の魅力
── テレビ番組「みいつけた!」は、今年で放送15年目ですね。開始当時はこんなに長く続くと思っていましたか?
佐藤さん:全然思っていなかったですね。これまでにない世界観だったから、制作スタッフも1年で終わると思っていたようです。コッシーは椅子のキャラクターだし、サボさんは変なことを言うし、オフロスキーは画面越しに問いかけてくるし。放送開始直後は、視聴者から批判的な意見もあったと聞いていますが、そのうちハマる人が出てきて、長く続くようになりました。子どもと観ているうちに好きになってくださった方も少なくないと思います。
── 斬新な切り口の番組で、印象に残りますよね。佐藤さん自身が、番組に愛着を抱くきっかけなどはあったのでしょうか。
佐藤さん:初代スイちゃんが卒業するときですね。視聴者から惜しまれるスイちゃんを見た時に、「愛される番組って、こういうことか」と実感しました。
「みいつけた!」や「いないいないばあっ!」、「おとうさんといっしょ」などのキャラクターが勢揃いするイベント「ワンワンといっしょ!夢のキャラクター大集合」では、たくさんのお客さんを前に公演するのですが、サボさんって体が大きくて声が低いから、登場すると怖くて泣いてしまう子もいるんです。だけど、「あ、この子も泣いてる。あの子も泣いてる」って言うと、パパさん、ママさんたちが笑ってくれる。そのうち子どもたちも気持ちがほぐれてきて笑ってくれる。スタジオで撮影していたときには感じられなかった、みなさんの笑顔に接して、「なんていい仕事なんだろう」って思いました。
パパさんママさんたちを笑顔にしたい
── 今年3月には「みいつけた!」エンディングソング「まいにちがギフト」でご自身初の作詞に挑戦されました。
佐藤さん:失敗してしまうことがあっても、身近な幸せに気づくことで、日々はキラキラする。普通の毎日こそが宝物というメッセージを等身大の言葉で綴りました。視聴者の皆さんにはあたたかく受け止められているようです。
いつも思っているのは、パパさん、ママさんたちを笑顔にしたいということ。親が楽しくしていれば、子どもたちの未来もきっと明るい。番組が長く続くにつれ、そう思うようになりました。
PROFILE 佐藤貴史さん
1974年12月17日生まれ、栃木県出身。2000年から劇団「サモ・アリナンズ」に参加する。テレビではEテレ「みいつけた!」でサボさん役としてレギュラー出演するほか、ドラマや舞台、映画などに出演する。資格をとるほどサウナにハマり中。
取材・文/ゆきどっぐ 画像提供/NHK