小4の男の子が夏休みに描いたイラスト「47都道府県のご当地ネコ」をX(旧Twitter)に投稿したら大反響!母・なみそさんに制作秘話を聞きました。
いちばん時間がかかったのは京都府「舞妓はんネコ」
── 息子さんは何をきっかけに「ご当地ネコ」を描き始めたのですか。
なみそさん:小学校の国語の時間に、47都道府県の名産を勉強したのがきっかけです。とても興味が湧わいてきたんでしょうね。家でもYouTubeにある「日本地図の歌」を聴いて繰り返して歌っていました。自学自習の宿題の題材として、各地の名産を調べながら、ちょこちょこご当地ネコのイラストを描いていたんですよね。それがすごくかわいかったので、「ほかの県も描いてみない?」という流れになりました。
一番にできたのは、宮崎県の「マンゴーネコ」です。私の出身地だから描いてくれたんですね。そのあとは、九州地方から北上していって、北海道の「じゃがいもネコ」でフィナーレを迎えました。
福岡に住んでいるので九州はなじみがあるんですけど、行ったことがない県はイメージがわかなくて…。夏休みに私の実家に帰省したときに、おじいちゃんおばあちゃんにアドバイスをもらったり、知り合いに声をかけて教えてもらったりしました。たとえば「埼玉県はひな人形の生産が日本一」というのは、私も今回初めて知りました。
── デザイン力に驚かされます。1枚につきどれくらい時間をかけて仕上げるのですか。
なみそさん:青森県のリンゴや栃木県のイチゴみたいに、早いものは2、3分で下絵を描いてしまいます。A4のコピー用紙にえんぴつで下絵を描いて、「マッキー」の太いほうで仕上げたら、iPadに取り込んで色をつけます。トータルで1時間くらいですね。
なかにはめちゃめちゃ時間がかかった作品もあります。たとえば京都の「舞妓はんネコ」は、たまたま京都に着物に詳しい友人がいるので、描きあがってから見てもらったんです。
最初はイメージで描いたので、舞妓さんが番傘を持って座っていたんですよね。でも「番傘を持って座っていることはないから、扇子を持たせたら」とアドバイスをもらって描き直しました。舞妓さんの「だらりの帯」や、髪飾りには季節の花を選ぶことも教えてもらって、今の姿になりました。息子と二人で芸妓さんと舞妓さんの着物の違いを調べたりして、私も勉強になりました。
── それぞれの衣装にも凝っていますね。
なみそさん:佐賀県の「陶芸家ネコ」は、ゲーム『桃太郎電鉄』に出てくる陶芸職人の影響があると思います。福島県の「フラダンスネコ」は、保育園のときに毎年地域の方たちがフラを踊りにきてくれたことを思い出したみたいで、「あのときのおばあちゃんたちと同じ恰好しとう(してる)」と言いながら描いていました。
学校の授業と本人の思い出と、マンガとゲームと周りの人のアドバイス…いろいろな人の力を借りて、できあがりました。
── 7月13日から8月28日まで、毎日描くのは大変ではなかったですか?夏休みの自由研究を兼ねていたのでしょうか?
なみそさん:自由研究の宿題は出ていなかったので、学校には出しませんでした。本人が好きなことなので、「しんどい」とか「やめたい」とかは一度も言わなかったですね。
毎日私がXに投稿して、リプライを本人にも見せていたので、みなさんの声が励みになっていました。茨城県の方には、「絶対に納豆がくると思っていたら、メロンが来た!」と喜ばれました(笑)。皆さんの反応のおかげで本人も続けられたのではと思います。
次作は「星座ネコ」シリーズ
── KENくんは、何歳ごろから絵を描き始めたのですか。
なみそさん:本格的に描きだしたのは年長くらいですけど、小さい頃から絵や工作は好きでしたね。家にネコが4匹いるので、ひたすらネコの絵を描いていました。そのうち切り絵にハマりましたが、切り絵は1枚仕上げるのに5、6時間かかるんですよね。最近はイラストのほうが楽しいみたいで、イラストをよく描いています。画風もどんどん変わっていますが、ネコがモチーフなのはずっと変わりません。人を描いてもどこかネコっぽくなるから、学校の先生にも「KENくんが描いた絵は、すぐわかる」と言われています。
── なみそさんはアドバイスをしたり教えたりはされないのですか。
なみそさん:描きかたを教えたこともないですし、余計なことは言わないようにしています。
私の役割は、子どもが好きなことを思いきりやれる環境をつくることかなと思っています。小さいころから、大きな模造紙を買ってきてボディペインティングをしたり、工場でもらってきた大きなダンボールで庭にダンボールハウスを作って、スプレーで思いっきり色を塗ったり、そういうことはよくやらせていました。どうせやるなら思いきりやったほうがいいと思って。今も、いつでも思い立ったら絵が描けるように、紙と色えんぴつはそこら中に置いてあります。
── 親御さんの懐の大きさに合わせて、KEN君の才能が伸びているんですね。
なみそさん:私も親に、危ないことや人様に迷惑をかけること以外はなんでもやらせてもらいました。ほめてもらえば嬉しかった記憶があるので、KENの絵もひたすらほめていたらどんどん描くようになりました。びっくりするような色使いをすることもありますけど、「きみらしくていいね!一度見たら忘れんやん」とほめまくります。
宿題をそっちのけで絵を描いていても、何も言わないようにしています。ゲームをしていたら「なにしとんかー!」と言いますけどね。
ただ、プレッシャーになってもいけないので、新たに描き始めた「星座ネコ」シリーズは、「やりたいときにやればいいよ」とは言っています。仕事みたいになってしまうと、楽しくなくなると思うので。
KENには姉と弟がいて、3人ともそれぞれ熱中していることがあります。子ども3人がそれぞれ毎日いろいろなことを言ってきますし、4匹のネコは寄ってくるしで、大変ですけど(笑)、子どもたちが熱中していることをサポートしながら、おもしろいネタを見つけて投稿するのが、今の私の趣味ですね。
PROFILE なみそさん
3人の子どもたちと4匹のネコの日常の投稿が人気(@omochi_nam01)。著書にフォトエッセイ『今日も猫だまり』(KADOKAWA)。NEKO KENくんと弟の涼介くんがコラボしてできた「ねこのせんぷうき」も発売中。
取材・文/林優子 画像提供/なみそ