50歳を超えても学ぶことは楽しい、と話す西村知美さん。でも、暗記中心に覚えていくようなものは長続きしない。西村さんがモチベーションを保てる学びの秘けつとは?(全4回中の2回)

 

西村知美さん
いやされる!西村知美さんの資格勉強の合間の仮眠姿

主人の母親は「60歳でダイビング」を始めた

── 55の資格や許可証などを持つ西村さん。50歳を迎えてからも、認知症介助士、整理収納アドバイザー2級など、新しい資格をとり続けています。年齢を重ねると、記憶力や体力が落ちて、やる気が出ないときもありそうですが…。

 

西村さん:それはもったいないですよ~。主人の母が、60歳こえてからダイビングのライセンスをとったんです。もうお義母さんを尊敬しますよね。自分で自分の賞味期限を決めるなんてもったいない。いつでもスタートできるって思います。

 

──「いつでもスタートできる」。まずはやってみることが大切?

 

西村さん:何かチャンスを見つけてほしいですね。前でも、横でも、下方向でもいいので一歩ふみ出してみて。まわりも変わってきますから。もしイヤになればやめればいいんです、私たちの年代になるとムリやり続ける必要はないですから。興味ある資格がなければ、あえて苦手なものに挑戦することで新しい魅力に気づいたり、新しいジャンルの出会いがあるので、ぜひ挑戦してほしいです。

 

好きなものが思いつかない方は、嫌いなものを探してみるとか。食べ物でも「まずい」って思ったら、「私はどうしてこれをまずいと思うんだろう?」と興味を持てば、そこから違う世界が広がるかもしれませんし、苦手だとわかれば違うものを探しに行けます。何がどうつながっていくか、わからないですから。

「まずやってみる」ダメなら途中でやめればいい

── 西村さんは、人生100年では短すぎるくらいの好奇心とやる気にあふれていますね。資格などの勉強は、どうやってモチベーションを保っているのですか?

 

西村さん:勉強は好きじゃないけど、資格などの試験はゲームをクリアする気持ちでのぞんでいます。娘が試験を嫌がったときにも「ゲームと同じで一生懸命練習していけば成果も出るでしょ」と、言い聞かせました。

 

ミステリーの謎解きみたいな気持ちでやれば面白い。数学のように答えがひとつのものもあれば、国語のようにいくつも答え方がある場合、自分のオリジナルの答えを見つけ出せたら、すごく面白いはずですから。

 

西村知美さん

── 面白がって試験に取り組める西村さんですが、途中であきらめたことは?

 

西村さん:もちろん、うまくいかなかったときもあります。国家資格の「保育士」は、筆記試験9科目を3年間かけてとればよいのですが、なかなか難しくて。あれだけ勉強してもダメなら、私にはあわないと判断してあきらめました。

 

「調剤薬局事務」は全国に薬局がありますから、仕事先がみつけやすい資格なので受けましたが、調剤の計算方法がまったく理解できなくて、2回落ちました。後から答え合わせをしても、何がどうなっているのか…。理数系が得意な方には、これで落ちる理由がわからないほど、単純な計算らしいんですが。でも、勉強したのはムダではないし、知らないのと知っているのは全然違いますよね。

絵を添えて暗記「桶狭間の戦いの覚え方はイチコロ」

── 結果はどうあれ、学んだ経験はムダにはなりませんよね。芸能活動や家事子育てで忙しいなか、どのように勉強しているのですか?

 

西村さん:私は夜に勉強するタイプで、一夜漬け。終わると忘れちゃうので、パソコンやスマホに勉強した内容を保存しています。コツは自分で書いて覚えること。

 

たとえば、日本史で「桶狭間の戦い」を覚えなきゃならないときは、できごとをノートに書いて、織田信長のイラストをその横にちょこっと描きます。年号を覚える語呂合わせも自分で考えて、ルビをふります。1560年なら「イチコロ」。

 

── 絵も描いてイメージで覚えるわけですね。

 

西村さん:左利きの人は絵で覚えると聞いたことがあって、私はもともと左利きなので絵なのかな?娘は右利きなので、ひとつの言葉から関連づけて、テーマを広げながら連想で覚えていくようです。

 

でも、私は文章でも覚えますよ。ノートの左右に用語とその説明文を分けて書いて、折り曲げて自分でクイズ形式にして解いてみたり。関係する用語を追加していくと単語帳ができあがります。このやり方だと確実に覚えられますし、テーマも広がります。

 

西村知美さん

── そのほかに、勉強方法で工夫していることはありますか?

 

西村さん:身体を使った暗記法を習ったことがあります。たとえば徳川15代将軍全員を覚えるなら、頭、おでこ、眉毛、目、鼻と身体のパーツにひとりずつ当てはめて覚えていきます。     

 

── 記憶法っていろいろあるんですね!番組出演やセリフを覚えるときにも使えそうです。

 

西村さん:トーク番組でも使えますよ。この順番で4つ話そうとか、ちゃんと自分で覚えておかないとわからなくなりますから。芝居のときも自分の頭の中だけのシミュレーション用として記憶法を用います。ときと場合に応じて使い分けていますね。

 

PROFILE 西村知美さん

1970年、山口県生まれ。1985年、第1回ミス・モモコグランプリ獲得をきっかけに芸能界へ。映画『ドン松五郎の生活』で主演でデビュー、日本レコード大賞新人賞獲得。映画やドラマ、バラエティ番組などに多数出演。2002年、「24時間テレビ」のチャリティランナーとして100キロ完走。55の資格や修了証・許可証を取得。家族は夫と長女。映画『SOMEDAYS』(2023年10月公開予定)に出演。

 

取材・文/岡本聡子 画像・写真提供/西村知美、株式会社芸映