2005年に海外の男性と結婚した井上晴美さん。長男の出産に伴い、東京から長野に移住しました。なぜ、縁もゆかりもない長野を選んだのか、自給自足をした理由とは。(全4回中の3回)
カナダ留学中に夫と出会って
── 旦那さんとは、語学留学していたカナダで知り合ったとのこと。そもそも、なぜカナダに留学しようと思ったのでしょうか?
井上さん:仕事で海外に長期滞在することはよくありましたが、カナダは行ったことがなかったんです。大人になると勉強に憧れが出るじゃないですか。日本とカナダを行き来したりしながら語学を学びました。
── 旦那さんは外国の方だそうですね。当時、井上さんも英語でコミュニケーションを取れるくらい、すでにお話ができていたのでしょうか?
井上さん:あんまり喋れなかったですよ。でも学校で学んだことを活かしながら、一生懸命話していました。
あと、こういった仕事をしていると、相手が思うイメージってあるじゃないですか。テレビのイメージ、映画のイメージ、先入観もあると思います。夫はそういうのがゼロだったから、私の職業がどんな仕事であれ関係ない。私をひとりの人間としてみてくれて、人と人とのつき合いができたのがよかったんだと思います。
── 2005年に結婚されて、第一子が誕生。それまで長野は縁もゆかりもなかったそうですが、なぜ長野に移住されたのでしょうか?
井上さん:夫の中で、子育てするには田舎がいいって理想があったみたいです。それが何で長野かはわからないけど。私も東京でずっと仕事していましたが、長男を出産してしばらくは何もできないだろうと思って行くことにしました。
── 長野では自給自足の生活をされていたそうですね。どのレベルまで自給自足をされていたのでしょうか?
井上さん:電気やガスは普通にあって、田んぼを借りてお米とか野菜を作ってました。夫がそういうのが好きみたいです。はじめは農業に使う機械も持ってないのですべて手作業でしたが、途中から地元の方が手伝ってくれたり、機械も貸してくれて助けてもらうこともありました。
また、元々夫は都会育ちなので農業の経験はゼロ。むしろ私のほうが実家が農家なので経験者ですが、夫は夫のやりたいスタイルがあったようなので基本的にはお任せです。
途中から近所の人が機械を使わせてくれたり、いろいろ手伝ってくれました。夫はそこに感謝をしつつも、機械がなくても手作業でできるかどうか探ってましたね。
── 自給自足に憧れがあったのでしょうか?
井上さん:自然災害もいつ起きるかわからないから、食糧難になる前提で動いてたんです。何か起きると物流も止まりますし、ないなら買えばいいというスタイルで生活していると、災害が起きたときに人間パニックになりますよね。自分たちで自給自足できたら、災害の影響も少ないだろうと夫婦で話をしていました。
シーズンのものってありますよね。お米も野菜のベストシーズンや収穫の時期ってあると思うんですけど、夫はあえてシーズンと関係ないものを作って、「なんでできないんだろう…」と言いつつも、研究も兼ねてチャレンジしていたようです。
長野と東京を行き来して
── 長野に移住後、昼ドラマにも出演されました。長野と東京を往復する日々だったそうですが、かなり大変だったのではないでしょうか?
井上さん:もう死ぬかと思いました(笑)。撮影日もなるべくギュッと日にちを合わせてスケジュールを組んでくださいましたが、なかなかハードな日々でした。まだ母乳をあげていたので、母乳をあげたり家のことをしたりしつつ、長野と東京を行ったり来たり。滞在しても一泊くらいです。搾乳も一時期チャレンジしましたが、仕事とのタイミングが合わなくて、助産師さんと相談してやめました。常にどの方法がいいか迷いながら撮影に臨んでいたと思います。
── 長野の自宅から東京の撮影現場まで、車で片道どれくらいでしたか?
井上さん:高速を使って片道3時間くらいだったかな。新幹線に乗れる時間帯に帰って来られたらいいんですけど、そうとも限らないですし。あまりの疲労でパーキングエリアで寝ちゃったこともありました。
以前に比べたら変化しているかもしれないですが、まだまだ小さい子どもを現場に連れていくのって難しいですよね。プライベートを現場に持ちこまないといった空気もあるでしょうし。私が長野にいたころは、どうにか頑張って撮影が終わりましたが、今考えてもかなりハードな日々を過ごしました。
今は長野から地元の熊本に移住して生活をしています。長男の出産を機に長野に移り住みましたが、慌ただしい日々を過ごしました。それでも新しい環境や出会い、自給自足など発見も多く、今思えば貴重な時間だったと思います。
PROFILE 井上晴美さん
1974年生まれ。熊本県出身。1991年16歳で芸能界入り、ドラマ・映画・舞台など数多くの作品に出演。2005年に結婚し、現在は3児の母。家族との日常をインスタグラム(@harumi_inoue_)でも発信中。
取材・文/松永怜