漫画家のmoroさんが、16年前の体験をもとにした漫画をTwitterに投稿したところ大きな反響が。夏休みに増える「放置子」の問題は、今も解決していません。

キッズゾーンで娘を突き飛ばしたのは「放置子」だった

moroさんが、当時1歳だった娘のこもろちゃんとショッピングモールにあるキッズゾーンを訪れたときのこと。見知らぬ5、6歳の男の子が、こもろちゃんに近づいてきました。まだ話せないこもろちゃんの口真似をする男の子。このときからなんとなく嫌な感じがしたmoroさんは、さりげなくその場を離れます。

 

こもろちゃんの口真似をする男の子
こもろちゃんの口真似をする男の子

ところが、男の子は後ろからついてきました。親御さんの姿を探したけれど見つからないので、「お父さんかお母さんはどこ?」と聞いてみると、「かいもの」という答え。そこは未就学児専用の有料の遊び場で「保護者様のご同伴をお願いします」という注意書きがある通り、子どもを預けられる施設ではありません。

 

「その子は、親に放ったらかしにされている子どもだったんです。保護者同伴の遊び場だからと安心して利用したのですが…。平日は時間無制限なので、親御さんは子どもを置いて買い物へ行ってしまったのだと思います。男の子の様子から、これはいつものことなんだろうな、という感じがしました」

 

こもろちゃんが男の子と一緒にいて楽しそうにしていたので、しばらくは静観していたmoroさんでしたが、見過ごせない事態が。男の子が、こもろちゃんを後ろから突き飛ばしたのです。
 

こもろちゃんを後ろから突き飛ばす男の子
こもろちゃんを後ろから突き飛ばす男の子

最初は「やめてね」と穏やかに注意したmoroさんでしたが、髪を引っ張ったり、頭を叩いたりと男の子の乱暴はエスカレート。

 

「子ども同士のトラブルに親がどこまで介入すればいいのか、当時は私も子育て初心者だったので、迷う気持ちもありました。でも、たとえ相手が子どもだとしても、娘が乱暴されるのは黙って見ていられません。本来は、乱暴する子の親御さんが注意してくれればよかったんですけどね」

 

moroさんが男の子の手をつかんで真剣に注意をすると、男の子は笑いながら「暴力だーっ殺されるーっおまわりさーんっ」と叫んだのです。

 

これは自分では「対応は難しい」と判断したmoroさんは、大声でスタッフを呼び、「親御さんがこの子をここに置いて出かけちゃったみたいで」と事情を説明しました。

 

ショッピングモールの管理人や警備員、迷子センターの人など、数人の大人に囲まれた男の子は、すっかりおとなしくなっていました。放置子をスタッフに引き渡し、moroさんはその場を離れたのでその後どうなったかはわからないそうですが、「放置子ダメ!ゼッタイ!」と漫画を締めくくっています。

 

「16年前の体験なのですが、今も似たような経験をされている人がたくさんいることに驚きました。放置子は、親御さんの知らないところでトラブルになったり、本人が巻き込まれる危険性もあります。当事者である親御さんに『気をつけなきゃ』と思ってもらいたくて漫画にしました」

夏休みに増える「放置子」は社会問題?

SNSでもたびたび話題にあがる「放置子」の問題。moroさんにも、放置子らしき子が無断で家に入ってきたという体験があるそうです。

 

「娘が小学1年生くらいのころ、公園にいた同じ年ごろの子が家についてきてしまったことがあります。親に放置されている子は、きっと寂しいんですよね。自分より小さい子だけでなく、同年代の子についてくるケースもよく聞きます。

 

その子は突然、うちの玄関の前に枯れ葉を大量にまいたんです。私たちが驚いているすきにサッと家に入ってきてしまいました。どこに住んでいるかも知らないし、親御さんの連絡先もわからないから『家には入れられないよ』と言いましたが…。近所には、その子に勝手に冷蔵庫を開けられ、ジュースを飲まれたという人もいました」

 

夏休みは、放置子の問題が顕在化しやすい時期でもあります。

 

「働いている親御さんにとっては、子どもの預け場所に苦労する時期ですよね。学童も全員が入れるわけではないですし、子どもによっては合わなくて行きたがらないということもあります。もちろん、親御さんが気をつけなければいけない問題なんですけど、これは社会問題ともいえるかもしれません。

 

親も安心して預けられて、子どもも楽しく過ごせる『win-win』な居場所がもっとたくさんあればいいのに…と思いますね。国や自治体が、子育ての環境整備にもっと力を入れてほしいです」

 

PROFILE moroさん

2児の母。子育てマンガやハンドメイドの記録をブログやTwitter(@moro00000)で発信している。著書に『誹謗中傷犯に勝訴しました~障害児の息子を守るため~』(竹書房)ほか。

取材・文/林優子 画像提供/moro