デザイナー兼イラストレーターのまるさんが、電車で子どもが声を上げないようにつくった一冊の小さな絵本。Twitterに投稿したところ話題になっています。
「でんしゃはしーっ」100均の推し活グッズを使った小さな絵本
「最近、駅などで息子が発する大声が気になってしまって、それが解決できるような本をつくろうと思ったのがきっかけです」。発達障害を持つ息子を育てているまるさんは、デザイナーでありイラストレータでもある特技を活かして、これまでも息子のために絵本を作ってきたのだそう。
今回息子さんのために製作した絵本は12ページで展開されるお話です。使ったのは100円ショップで売っている、小さな写真などを収納できるファイル型のキーホルダー。このアイテムは推し活グッズコーナーでみつけたものなのだとか。
絵本は、電車がホームに入線する場面から始まります。電車を見ると思わず「キャー!」と大きな声を出してしまう子ネコ。そんな子ネコにお母さんネコが「でんしゃはしーっ、しーっしーっ」と語りかけます。アライグマやパンダも「おおきなこえでみんなびっくりしちゃうよ」と教えてくれます。次の電車が来たときに再び大きな声で「ウィィィィ」と叫んでしまう子ネコ。フランミンゴやクマも 「しーっしーっ、でんしゃはしーっ」「ちいさいこえでね」。次の電車が来たとき、子ネコは「でんしゃはしーっ」と、みずから小さい声で言うとお母さんネコが「よくできたね」と頭をなでて褒めてくれます──。
「キーホルダーになっているので、お出かけ中に取り出しやすく手軽なサイズ感が息子の手のサイズにも合っていて『でんしゃはしーっ』読む!と頻繁に言ってくれるほど気に入ってくれています。リズム感の良い、言いやすいセリフを繰り返すことで、短い内容で飽きずに読めて、覚えやすいものにしました。うちの子は、言葉で言うより目で見たほうが頭に入りやすいこともあるので、この本はうちの子には大成功でした」
フォロワーからは「うちも欲しい!」の声が殺到
この投稿を見たフォロワーからは「ぜひ商品化を!」「素敵な絵本」「愛が詰まっていて涙出ちゃう」などの、絶賛の声が寄せられました。
「反響に正直驚きましたが、欲しいという声をいただいてありがたい限りです。発達障害の有無にかかわらず同じ悩みを持つお母さんがいかに多いのかを知りました。電車の中や公共の場所で大声で叫ぶ子どもに手がつけられないときは正直、親も逃げ場がなく、とっさに手で子どもの口をふさぐしかない事態もあったりもしますが、見た目はよろしくないですよね。本当にどうしたらいいのか難題でした。
でも同じように共感してくださる方が多くいて嬉しいです。この本を気に入ってくれた息子のために、実は次の困りごとができたときに備えて100均でもうひとつキーホルダーを買ってストックしています。今後も息子の好きな電車に紐付けてストーリーを考えるのには限界がありそうなんですが(笑)」
次回作の可能性について語ってくれたまるさん。特技を活かした愛情たっぷりの母特製の絵本。絵を描いたり物語をつくることが苦手と言う人にはなかなか真似できないことですが、この方法は、子どもに電車のマナーを教えるためのいいヒントになりそうです。
PROFILE まるさん
2018年4月生まれの男の子のママ。デザイナーをしつつイラストを描きつつパートで働きながら息子との日々の出来事をSNSで発信中。息子のためだけに数々の絵本を製作。著書、自閉症の息子とのエッセイ漫画『シンママのはじめて育児は自閉症の子でした』は現在好評発売中。
取材・文/加藤文惠 画像提供/まる