2013年に出版された『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の主人公である小林さやかさん。出版から約10年、今だから思う受験勉強や家族、メンタルについて。(全2回中の2回)
地頭がよかったから…
── 小林さんを題材にした本『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴 著)が2013年に出版され、映画にもなりました。小林さんは、当時のビリギャルブームについてどう感じていたのでしょうか。
小林さん:私の学生時代の話が、突然注目を浴びて驚きました。当時私はすでにウエディングプランナーとして働いていましたが、ブームの影響で講演の依頼が来るように。初めて講演したのは小学校。子どもたちから「ビリギャルだ!すげえ!頭いい人来た」と言われて、みんなビリギャルの話を知っているんだなとびっくりしました。
── 初めての講演から約10年が経ちます。話す内容は変わってきましたか?
小林さん:最初は子どもたちに向けて話をしていました。高校2年生で偏差値30から猛勉強して慶應大学に合格。私ができたんだから、みんな頑張れと伝えていたんです。途中から、親御さんに向けて話をしたほうが刺さるんじゃないかなと思い、徐々に話す内容も変えていきました。
── 保護者から「もともと地頭がよかったから慶應大学に受かったのでは?」と聞かれることもあるそうですね。
小林さん:ビリギャルブームから10年たった今も言われます。地頭がよかったから偏差値40も上げられたんでしょう。または、うちの子は地頭が悪いからムリと言う保護者の方もいます。実際、私の地頭がよかったかどうかはわかりませんが、子どもの地頭がいい・悪いはないとも思っています。
ほかにも、子どもを大手塾に入れたらなんとかなるんじゃないかと聞かれることもありますが、それだけでは必ずしも成績向上に繋がるとは限らないと思います。
周りが掛ける言葉とは
── では、本人はどのようなメンタルで勉強に望むのがベストでしょうか?
小林さん:自分が大学に行くことに対して価値を持てているのか。心から入りたい大学があって、自分なら頑張ればできると思えているか。もし、頑張っても無理、親に言われたから勉強しているといった気持ちで勉強しても、なかなかいい方向にはいかないでしょう。
本人の気持ちはもちろん、環境もとても大切です。周りから無理と言われても、「あなたなら大丈夫」と期待してくれる人がいるかどうか。これは心理学でピグマリオン効果といって、他者から期待されるとその期待に沿った成果を出すことができる現象をいいます。
逆に、ゴーレム効果といって「あなたは勉強してもムリ」「もっと頑張らないとだめ」などネガティブな言葉をかけ続けると、言われた本人はどんどんパフォーマンスが下がってしまいます。周りの大人たちがかける言葉はすごくパフォーマンスに直結しています。
受験に失敗はない?
── 小林さんは受験に成功していると思いますが、失敗についてどう考えますか?
小林さん:私は受験に失敗はないと思います。受験は合否が出るものなので、結果はきちんと受け入れます。一方、結果だけではなく、今まで取り組んできたプロセスの段階も含めて、未来にどう繋げるかが大切。今後の子どもたち自身の心境やパフォーマンスが大きく変わってくると思います。
PROFILE 小林さやかさん
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公=ビリギャル。『ビリギャルが、またビリになった日 勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで』(講談社)を出版。
取材・文/間野由利子