夏の肌トラブル。「スキンケア以外にも、食生活で改善できる」と医師の工藤あきさんはいいます。何を食べれば美肌を手に入れられるのか。具体的な食べ物も挙げてもらいました。
ダイエットや筋トレに励む人以外でもタンパク質は必要
── エアコンで肌が乾燥したり、汗でベタついたり、かゆみや湿疹ができたり。夏にはさまざまな肌トラブルがあります。スキンケアも大切ですが、食生活で改善する方法はありますか?
工藤先生:肌トラブルで共通して言えるのは、皮膚のバリア機能が低下していることです。バリア機能を高めて美肌をつくる栄養素には、ビタミンやミネラルが広く知られていますね。それに加えて、意識してとってほしいのがタンパク質です。
── タンパク質というと、ダイエットや筋トレをがんばる人が積極的にとるイメージがあります。美肌にも関係しているんですか?
工藤先生:美肌に必要と知られているコラーゲンも、皮膚の材料となるタンパク質の一種です。ほかにも、筋肉をはじめ、臓器や皮膚や髪や爪など、からだのあらゆる部位の細胞をつくるために、タンパク質は欠かせない存在です。
タンパク質が不足すると、生命を維持するために必要な部位へと優先的に届けられるため、皮膚や髪、爪などは後回しにされます。そうすると、健康な皮膚がつくられず、肌トラブルの原因となってしまいます。
1日あたりのタンパク質の推奨量は、18〜64歳の男性だと65g、女性だと50gとされています(※)。とくに女性は不足しがちなので、意識的にとるようにしましょう。
質のいいタンパク質がわかる「アミノ酸スコア」の正体
工藤先生:タンパク質といっても、食べ物によって発揮される効果が違います。より良質なタンパク質を摂取するためには、「アミノ酸スコア」に注目してみましょう。
── アミノ酸スコアとは?
工藤先生:タンパク質の栄養価のバランスを評価した点数のことです。そもそも、タンパク質は20種類のアミノ酸からできていて、そのうち9種類が「必須アミノ酸」といいます。必須アミノ酸は、私たちの体内からつくることができないため、食べ物から摂取しなければなりません。
9種類それぞれには必要量が決まっていて、9種類すべての必須アミノ酸のトータルバランスがいいほど、体内で十分なタンパク質が生成されます。
── つまり、9種類のうち1種類でも少ないと、バランスが崩れて十分なタンパク質がつくられないというわけですね。
工藤先生:その通りです。アミノ酸スコアが100に近いほど、質のいいタンパク質の食品となります。アミノ酸スコアが100の食品には、鶏肉、豚肉、牛肉、アジ(生)、鶏卵、牛乳、大豆などがあります。動物性の食品に多く含まれる傾向があります。
お米派は「白米に納豆」が美肌効果を高める
── 一方で、アミノ酸スコアが100に満たない食品もありますよね。
工藤先生: 100に満たない食品でも、食材を組み合わせればスコアを向上させることができます。例えば、精白米のアミノ酸スコアは61で、これはリジンという必須アミノ酸が少ないためです。その一方で、大豆にはリジンが豊富に含まれています。つまり精白米を食べるときには、大豆製品を組み合わせればアミノ酸スコアもアップして、タンパク質の生成に役立つのです。
──「白米に納豆」を追加するのは、タンパク質の生成の面から見ても、理にかなっているんですね。
工藤先生:上手に組み合わせながらアミノ酸スコアを高められるように工夫してみましょう。それに加えて、いろいろな種類の食べ物を一緒にとることも大切です。肌のうるおいをキープする脂質や、皮膚の抵抗力を高めるビタミンA、コラーゲンの生成を助けるビタミンCをはじめ、タンパク質のほかにも美肌をつくるために必要な食品はあります。
バランスの良い食事を心がけて、体の内側からケアしていきましょう。
PROFILE 工藤あきさん
消化器内科医・美腸・美肌研究科。一般内科医として地域医療に貢献する傍ら、腸活×菌活を活かした美肌・エイジングケアにも尽力。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。2児の母。
取材・文/大浦綾子
(※)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」