あらゆる物価が高騰する昨今、エアコンまわりの電気代も気になる季節です。エアコンの電気代、三世代同居のわが家でも、家族間のとある揉めごとの原因となっています。

 

とにかくドアの開け閉めにうるさい娘

電気代の気になる季節、さらに今年からはまた電気代が上がるとのことで、6人家族のわが家でも頭を悩ませています。

 

特に電気代が気になるのが居間のエアコンです。どうしても広い範囲をカバーするので消費電力も多いし、なるべく家族が居間に集まって過ごすように気をつけているのですが、そうなると人の出入りも多くなり、玄関や裏庭への扉の開け閉めの回数も多くなります。

 

外からの熱気を取り込まないようにと、ドアの開けっぱなしには気をつけていますが、とりわけ熱心なのが中学生の娘。

 

学校でも地球温暖化をはじめとした環境問題についてしっかり学んでいる世代ということもあるのでしょうか。とにかくドアの開け閉めにうるさいのです。

 

家にいる間はほとんどの時間を居間で過ごす娘ですが、誰かが出入りして少しでもドアが閉まっていないと、すかさずバタン!と閉めてくれるのです。それはいいのですが…そのときの娘は大きなため息としかめっ面、ときには「ドア!なんで閉めないの!」と叱る声もセットになっています。

 

そして困ったことに、同居の義父母(娘にとっては祖父母)は、あまりドアの開け閉めに神経質ではないのです。きちんと閉まっていないことに気づいていなかったり、ときには大きく開けっぱなしなことも…。

娘と義父母の板挟みに

娘は当然、そんな祖父母が気に入りません。「何回言ったらわかるの!ドアちゃんと閉めてよね!」と、とても同居嫁の立場では言えない強い口調で祖父母を責めながら力一杯にドアを閉めたりします。

 

それに対して義父母はというと、「そんなに怒らなくてもいいのに」「言い方をもうちょっと優しくしてくれたらいいのに」という反応。

 

こうして、各世代の間に立つ私に、

 

娘からは「おじいちゃんおばあちゃんはどうしてちゃんとドアを閉められないの?そしてなんで私が文句言われなきゃいけないの?私何にも間違ったこと言ってないよね?」

 

義父母からは「ドアを閉めなきゃいけないのはわかってるけど、娘ちゃん、あんなに怖い声で怒らなくてもいいのに…」

 

という双方の苦情がなぜか寄せられることに。

 

最初のうちは私も双方の立場を尊重して、娘には「君は何にも間違ってないしドアはちゃんと閉めるべき。でも注意の仕方をもう少しだけ優しくしたほうがいいのかも…」

 

義父母には「言い方が怖いのはそれはもうその通りなんですけども、ドアを閉めたほうがいいのは間違いないのでなるべく閉めていただいて…」

 

とお互いをなだめいたのですが、ある日、ついにそんな私の堪忍袋の尾が切れるきっかけがありました。

ドアは閉めさえすればいい

居間にいるとき、またいつものようにドアを半閉めにして出ていく義母。また娘が怒る前に…と慌てて閉めに行った私に、少しして戻ってきた義母がこう言うのです。

 

「またすぐ戻ってこようと思って開けておいたのに!」

 

いや知らん。

 

すぐ戻ってくるつもりかどうかなんて、我々には預かり知らんことです。

 

それですぐ戻ってくるのかな〜ってずっとドアを開けっぱなしにしておいたら本当に閉め忘れたときはどうするんですか?

 

閉めろ。すぐ戻ってこようがなんだろうが毎回きっちり閉めろ。「言い方を優しくして〜」とか甘えるにも程がある。閉めろ。

 

そんな言葉にできない思いをたっぷりの沈黙にのせてから、居間にいた義父にも聞こえるように大きめの声で言いました。

 

「ドアは!毎回!必ず!閉めないと!電気代が!かかるし!環境にも!良くない!」「優しく注意してとか言ってる場合じゃなく!ドアも窓も冷蔵庫(たまに義母が開けっぱなしにしている)も!毎回絶対しっかり閉めてください!!!」

 

大きく頷く娘。

 

たまにしか出ない同居嫁のマジギレトーンに恐れ入ったのか、その後は義父母も少しは扉の開閉に気を使うようになってくれました。

 

そう、ちゃんと閉めさえすれば、誰も怒らずに穏やかにすむ…電気代にも地球環境にも優しい…すべてが解決するのですから…。


文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ