今回は、学校に毎日通うことが難しくなってしまったお子さんを持つ親御さんからのご相談に、教育家・見守る子育て研究所所長(R)の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】「群れ」と「ひとりぼっち」の間で揺れる娘

小学5年の女子を育てています。娘は、人に合わせすぎて疲れてしまうタイプで、昨年は1年間不登校になっていました。元々の性格がマイペースで、ひとりで行動するのが好きなタイプなので割りきってしまえばいいのに…と思うのですが、「群れるのが好きな女子」が大多数の中で、ひとりぼっちになっていると、とても辛いそうです。

 

4月からは、学校の先生の配慮で、優しくしてくれるお友達の席を娘の席の周りに配置してもらうことで、週3日学校に通えるようになりました。しかし、やはり人と交流する機会が増えると、人に気を使いすぎて疲れてしまうようで、最近また学校に行きたくないと言い出しました。「群れ」と「ひとりぼっち」の間で揺れる娘にどのように接したらいいかわかりません。

 

「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(1/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(1/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(2/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(2/7P)

5人に1人存在するという「HSC」の可能性を考える

ご相談者様はまず、ご自身の「娘はマイペース」という解釈が適切かどうか、見つめ直してみましょう。

 

なぜなら、娘さんはおそらくHSC(Highly Sensitive Child)の傾向をお持ちだと思うからです。HSCとは診断名ではなく、米国の心理学者が提唱した言葉。生まれつき敏感で繊細な気質を持つ子どものことを指し、5人に1人の割合で存在するといわれます。ちなみに、大人の場合はHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれています。

 

娘さんが疲れやすいのは、きっと学校に行くと周囲の声や様子などの情報がたくさん自分の中になだれ込んできてしまうから。それに対して人一倍反応しすぎるため、ひとりになって安定した状態をつくり、バランスをとっているのではないかと思います。

 

その様子が、マイペースに見えるのかもしれません。しかし、マイペースという言葉から連想され、わが道を行く強さや図太さのようなものを娘さんはおそらく持っていません。むしろその逆で、ひとりの時間を持たないと一日を過ごしきれないくらい繊細であるという理解をされたほうがよいと感じます。

 

HSCやHSPの関連書籍はたくさんありますので、ご相談者様もまずは勉強し、その気質や心の働きの傾向について理解を深められるとよいのではないかと思います。

 

娘さんは、きっと日常的に苦しくなる場面がたくさんあります。例えば、今はコミュニケーション力の育成が推進されていますのでグループ学習などが多いですが、そういった場面でも、娘さんは「人の話を聞かなければ、何か意見を言わなければ」と頑張りすぎてしまい、結果的に「何を言えばいかわからなくなる」という状態が起きているかもしれません。

 

どうかそうした一つひとつの状況や娘さんの言いたいことを聞いてあげてください。その際、「だから、しんどくなるんだね」と思いをくみ取ってあげることがすごく大事になります。

気質を認めて寄り添い、褒めてあげること

理解いただきたいのは、HSCは病気や障害ではなく、あくまで気質だということです。治す、変える、鍛えるという視点に立って接する必要はありません。自分と折り合いをつけていければよいのです。例えば、お友達との会話に疲れてきたら、ちょっとトイレに行くなどしてその場を離れるなども方法のひとつですね。

 

娘さんもご自身の気質を理解していないと思うので、「みんなと同じように明るくふるまおうとして疲れちゃうのは、あなただけではないんだよ」とご相談者様がHSCについて学んだことを教えてあげてください。「クラスの中にはあなたと似た子がいるかもしれないね」と、決して珍しいわけではないことを具体的にイメージさせてあげるのもよいと思います。

 

そして、「疲れちゃうのは当然だよね」と認めてあげて、「自分が苦しくならないよう、上手に自分の気質とつき合っていこうね」と寄り添ってあげてほしいと思います。

 

HSCは、そのように感度が鋭いので反応しすぎて疲れる一方、そのぶん、人一倍何かに気づくことができるという長所もあります。例えば、絵を描くと色使いが美しかったり、ノートがきれいに整っていたり、感度が高いからこそできることがあります。ぜひそういった得意なところや魅力を見つけて、娘さんを褒めてあげてください。

 

学校の先生も席を配慮してくださったということですから、娘さんの気質に気づいているのではないでしょうか。できれば先生とは娘さんの状況について共有を図り、娘さんが疲れきってしまったときに一息つけるよう、保健室などのエスケープゾーンを準備してもらうなど、娘さんに合った環境づくりを相談するとよいと思います。

 

「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(3/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(3/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(4/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(4/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(5/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(5/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(6/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(6/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(7/7P)
「『HSC』かも?気疲れしやすい不登校の子に親がすべきこと」(7/7P)

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!