最近は、舞台を中心に活躍している小島聖さん。自然豊かな郊外にも家を設け、スマホと距離を置きながら山登りなどをして、小島さんなりの子育てを模索しているようです。
母親という枠を壊したくなる
── 俳優業と子育ての両立はいかがでしょうか?
小島さん:私、子育ては向いてないと思うんです。自分勝手なんだなと再認識させられます。
── どういうとき、そんなふうに感じますか?
小島さん:自分のやりたいことをしたい気持ちが強いんです。子どもに時間を取られてイライラすることもありますし、私だって女性なんだからと思うときもある。ときどき母親という枠を壊したくなってしまいます(笑)。
子どもが産まれたら、子どもがすべてと言える人を本当にすごいと思います。もちろん自分で産みたいと思って産んだ子だし、大切ですけど、子ども最優先の生き方はまだみつけられていません。
── 実際はそう思っているけど、言わないお母さんは多いと思います。小島さんは潔癖なくらいに正直なのではないでしょうか。
小島さん:どうなんでしょう。ウソをついたり、カッコつけたりしてもしょうがないとは思っています。
子どもが歩けないころから交代で登山を
── ご主人と3人で登山もされているようですね。
小島さん:子どもがまだ歩けないころから、夫婦で背負子(しょいこ)を交代で背負いながら山に登っていました。子どもは「山が好き」と言う日もありますが、やる気がない日もあります。
主人と3人で行くと甘えが出ます。主人が助けてくれると思って「疲れた」「お菓子食べたい」なんて言い出しますが、私とふたりだと甘えさせてもらえないから、一生懸命に歩きます(笑)。
── 自然の中で心を動かす様子はみて取れますか?
小島さん:それは多いと思います。虫はイヤだと言いながらトンボをちょっと捕まえてみたり、小さいお花を摘んでみたり。この間、山登りの距離を延ばしてみたんですが、こんなに足元が不安定だったんだと気づかされました。大人だけで歩いているとわからないものです。
それでも、岩場だらけのところをがんばって転ばずに歩いていました。そういうことも本人の自信になると思うし、「この石、コケが生えているから転ばないように気をつけてね」と私に言ってくれる気遣いも出てきました。そういったことが良い経験になってくれたらいいなと思います。
── 素敵ですね。個人的に子どもは自然の中で、いろいろな菌に触れてこそ健康に育つのではないかと思います。
小島さん:そうですね。うちは消毒などもあまり過剰にせずに、基本的には自然のままがいいという昭和的な考え方です。それでやってきているから、子どもは健康ですね。体の造りもしっかりしています。
私の育児は偏っているかも
── 心身共にしっかりした大人に成長しそうですね。
小島さん:そうだといいですけど、ちょっと偏っているかもしれないです。今は子どももみんなスマホで動画をみていますが、小学生になれば授業でやらざるを得なくなるから、うちはほぼみせていません。私も動画をみるという習慣がないので、そもそも子どもへのみせ方もわからないんです。
たまに友達のおうちに行ってスマホに触れる機会があると、それに集中してしまいます。珍しいし、やっぱり興味があるみたいで。特に変わった教育をしたいわけではなく、特殊な自由な学校に入れる気もないのですが。うちの日常が、普通の家庭とちょっと違っているんだと思います(笑)。
── でも、小島さんのインスタグラムをみていると、通常では得がたい大切な機会をお子さんにつくってあげていることがわかります。
小島さん:今の時代はパソコンの中でなんでも体験できると言われていますが、やっぱり自分の足で出向いて行き、触ったり体験したりすることは、どんな時代になっても大切な気がします。だから、なるべく子どもと一緒にいろんな体験をしたい。そのうえで、新しい仲間や楽しいことを自分でみつけてほしいですね。
── お話を伺っていると、とても理想的な子育てをされていると感じます。
小島さん:ありがとうございます。このあいだ、子どもが誕生日を迎えたのですが、今年は形のないプレゼントをしたんです。バレエに興味があるみたいなので、『白鳥の湖』の公演を一緒にみに行きました。
3時間ある長い演目でしたが、子どもは最後まで真剣にみていました。去年は「形のない誕生日プレゼントはイヤだ」と言っていましたが。今年はそれを受け入れてくれたから、成長したんだなと思います。
PROFILE 小島 聖さん
1976年、東京都生まれ。1989年にNHK大河ドラマで俳優デビュー。映画『あつもの』で第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。著書にエッセイ『野生のベリージャム』、2023年11月には舞台『ビロクシー・ブルース』への出演を控える。
取材・文/原田早知 写真提供/小島聖