新年度が始まって数か月が経ちました。楽しく過ごしている子もいれば、まだ新しい環境に慣れない子もいるでしょう。今回は、友達づくりがうまくいかないお子さんを心配する親御さんからのご相談です。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】「友達ができない」と嘆いてばかり…

中学1年生の女子の母です。娘は、もともと引っ込み思案な性格で、人と交流するのが難しい子です。晴れてこの4月から中学に入学したのですが、席順がアイウエオ順で、たまたま四方を男子に囲まれてしまいました。それもあって、なかなか友達ができず、毎日つまらなそうに学校から帰ってきます。

 

入学してから話しかけてくれたお友達もいたようなのですが、残念ながら長続きはしなかったようです。「昨日は話しかけてくれたのに、今日は話しかけてくれなかった」などイジイジしていました。自分から話しかけるというアクションを起こすことができないようです。

 

「興味をもって相手に質問したらコミュニケーションが生まれるよ」「相手の髪飾りや筆記用具などを褒めてあげると喜ぶよ」などとアドバイスをしているのですが、なかなかうまくいっていないようです。友達づくり、どうしたらよいのでしょうか?

 

「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(1/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(1/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(2/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(2/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(3/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(3/7P)※4P目以降は本文の最後にあります

「相手に興味を持つこと」がカギになる

お子さんはもともと引っ込み思案な性格とのことですが、とくに人からどう見られているかを非常に気にするタイプだと思われます。

 

自分から話しかけてみて、もし話が噛み合わなかったり相手にされなかったりしたらと考えると怖い、という心理が働いている気がします。一方、周りから声をかけてもらえれば、「勇気を出して話しかけたのに、好きになってもらえなかったら…」とリスクに悩む必要はありません。だから、受け身で待つことを無意識的に選んでいるのだろうなと思います。

 

さらに、中学1年生ということでまさに思春期ですから、自分というものに対して迷いが生まれやすい時期でもあります。よりお子さんの引っ込み思案の特性が強化されやすくなっているのでしょう。

 

親ができることとしては、まずは、お子さんの気持ちをそのまま受け止めてあげることですね。彼女が抱いているであろう、誰かとコミュニケーションを取ることの怖さについて、「もしかしたら、こんな気持ちが生まれるのかな」と寄り添いながら聞いてあげましょう。そして、今すぐ何かを変えようとしなくても大丈夫だよという安心感を添えながら、「そういう不安が生まれるのは成長期として当然だね」「あなたの気持ちはわかるつもりだよ」といった言葉をかけてあげてください。

 

そのうえで、お子さんがクラスメイトの一人ひとりに対して、興味を持てるようなお手伝いをしてあげるとよいと思います。ご相談者様がこれまでお子さんにしてきたアドバイスのとおり、人間関係というものは相手に興味を持つことがカギになるからです。

「クラスメイトの情報収集」をサポートする

具体的な手順としては、まず、親子でクラスの子の情報収集をします。今の時代はクラス全員分のクラス名簿は配られないことも多いですが、緊急連絡網などクラスメイトの一部だけでも分かるものならお手元にあるのではないでしょうか。そうしたものを手がかりに、お子さんが知っている子から順番に、「この子はどんな子?好きなこととか、得意なこととか、わかることはある?」と、聞いてみましょう。

 

「わかんない」と言うかもしれませんが、その場合は「明日学校に行ったら、どんな話をしているか聞いてみて、また教えてよ」と声をかけ、クラスの一人ひとりについて詳しくなるきっかけをつくってあげてほしいと思います。

 

情報が共有できたら、「そういう子なら、こういう話が好きかもね」「こんなことを一緒にできたらいいね」とあれこれ親子で話をしてみましょう。そのなかで、「話してみようかな」とお子さんが興味を示した子から話しかけていくとよいと思います。

 

「面白くないと言われたらどうしよう」と不安を口にするときは、「あなたの話を聞く限り、その子はちゃんと楽しく話をしてくれそうだけどね」などと、人生経験に基づいたポジティブな予感を伝え、安心させてあげましょう。

 

人から「引っ込み思案」と受け取られる子たちのなかにも、ひとりでしっかり考えていろいろなことを解決できる、実は自立しているタイプの引っ込み思案もあれば、誰かに何かをしてもらうことを待っている受け身型の引っ込み思案もあります。お子さんの場合は後者のタイプだと想像できますね。

 

何かをかなえるには、多くの場合、誰かの協力や関わり合いが必要です。しかし、受け身のままで人からの関わり合いをただ待つだけのスタンスでいると、その協力や関わり合いを得ることが難しくなります。すると、これからの成長過程で、自分の思いを実現させていくことも難しくなってしまいます。お子さんには、人間関係は「まず与えること」が基本だということを教えてあげたいですね。クラスメイトのことをよく見て話しかける理由を増やしていく作業は、そういった人間関係の基本を学ばせてあげる機会にもなることでしょう。

 

学校での様子や休み時間にどう過ごしているかなどを、親が担任の先生に聞くこともひとつの方法ではありますが、友達関係について助言や介入を求めることまではお勧めしません。お子さん自身が自分の人間関係を築いていけるよう、陰ながらの応援にとどめてあげてほしいと思います。「あなたのことを知ってもらう前に、あなたが周りのことを知っていこうね」と、人間関係を築いていく一歩一歩を、焦らず、お子さんの様子を見守りながら教えていってあげましょう。

 

ご相談者様は、人間関係の基本をよく理解されていることがうかがえますので、きっとお子さんを上手にサポートできると思います。とにかくお子さんに今必要なのは、周りを見るということ。まずはそこからお手伝いを始めてみてください。

 

「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(4/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(4/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(5/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(5/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(6/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(6/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(7/7P)
「『友達ができない』と嘆く子が気づいていない人間関係の超基本」(7/7P)

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。最新著書は『子どもの頭のよさを引き出す親の言い換え辞典』。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!