46歳で出産した、だいたひかるさん。2度の乳がん発覚に夫のパニック障害が発症。どのように子育てに、人生に向き合っているのでしょうか。(全4回中の4回)
子どもの食育でケンカすることも
── だいたさん夫婦は、協力しながら子育てを楽しんでいる印象です。
だいたさん:がんを患ってから、自分ができないことは夫婦で協力しながら、子育てを楽しんでいます。ときには子どものしつけで夫とケンカすることもありますよ。私は、子どもが食べながら遊びだしたらすぐに食器を片づけます。夫は食べきる習慣を身につけさせるため最後まで子どもに食べさせようとするとか。
── お子さんは、好き嫌いなどはありますか?
だいたさん:息子は、青菜やお肉はあまり好きではないらしく、手でお皿を押し返してきます。逆に、イチゴとトマトは好きで、みずから手を伸ばしてパクパク食べます。最近、リンゴジュースやカルピスを覚えて、ジュースのパッケージを見ると興奮して自分で飲もうとします。まるで芸能界を引退するときの山口百恵さんがステージにマイクを置いたときのように、おしゃぶりを急に机の上に置いて、カルピスのパックをぎゅっとつかんで飲む様子は笑えます(笑)。
夫のパニック障害と育児
── 旦那さんはパニック障害があると伺いました。症状が出るようになったのはいつ頃からですか?
だいたさん:2020年頃でしょうか。夫ははっきりとは言いませんが、私ががんになったことで夫に心配をかけてしまったのかも。でも、子どもが生まれてからは、パニック障害で病院に通院する回数も減ったし、以前よりも症状が出にくくなっているように感じます。
── 旦那さんのパニック障害は、子育てに影響などはありますか?
だいたさん:夫は、暗い場所だと落ち着かず眠れません。そのため、いつも眠るときは、家族みんなで薄暗い中で寝ています。幸い、息子は寝室の暗さに慣れているので、自然に寝てくれます。夫は、自宅にいるときは、子どもの世話をよくしますが、ときどき不安感が募り、つらくなってしまうこともあります。そんなときは薬を飲みますが、今度はすごく眠くなってしまうようで。子どもと私に「今日は一緒に遊べなくてごめんね」といって、横になることがあります。疲れたら休む。がんばりすぎないくらいがちょうどいいと思います。
── 家族でお出かけする際などは大丈夫でしょうか?
だいたさん:電車や飛行機など、乗り物に乗るときにパニック障害の症状が出てしまったらどうしようと不安になることもあるようです。ただ、不安よりも楽しみが上回ると大丈夫なようですし、不安が強くなると、飴やフリスクを食べて気を紛らわせることもありますね。
また、家族でレストランに行って食事をしている途中に、苦しくなってしまうことがあります。そんなときは外に出て散歩したりして戻ってきたり。昔よりも自分で何となくコントロールできるようになったかなと思います。
子どもに手がかかることもあり、自分自身のことがあとまわしになりがちな部分もあると思います。一方で、子どもがきっかけで、夫自身が楽しかったり、リラックスできたりすることも大きいかもしれません。
人生を逆算して考えるように
── これまで、だいたさんは2度のがんと不妊治療を乗り越えて出産。今は育児に奮闘しています。がんになる前と比べて人生観は変わりましたか?
だいたさん:人生を逆算して考えるようになりました。昔は、なんとなく平均寿命くらいは生きられるんじゃないかと思ってたんです。がんを経験してからは、あとどれぐらい生きられるのかなと逆算して考えるようになりました。おかげで、やってみたいことが明白になってきました。物や人間関係も、断捨離するわけじゃないけど、他人のことに気を遣いすぎることをやめて、家族など自分が本当に大切にしたい人を大事にすればいいかなと思います。その結果、余計なことに時間を使わなくてよくなりました。
PROFILE だいたひかるさん
お笑いタレント。2002年『R-1ぐらんぷり』の初代王者。2016年、2019年と2回のがんを乗り超え不妊治療の末、2022年に第1子出産。
取材・文/間野由利子