ラグビーの山田章仁選手の妻で、コラムニストやタレントとして活躍中の山田ローラさん。2016年に双子を出産したのち、ハワイに移住して、1男3女の子育てに励んできました。ハワイに引っ越したきっかけは、夫の章仁選手が海外遠征中、妻のローラさんがひとりで育児に向き合う状況を心配してのことだったそうです。

 

アイオワ州に暮らす両親を呼び寄せてハワイ移住

── 双子のお子さんとともにハワイに移住したのはどんなきっかけだったのでしょう?

 

ローラさん:ラグビー選手の夫は国内遠征だけでなく、海外遠征もとても多くて、1か月以上家を空けることもありました。その間、私はひとりで子どもの面倒を見なければならないのですが、周りに頼るのがとても苦手な性格なので、それも含めて夫はすごく心配していたんです。

 

私は当時都内に住んでいたのですが、夫のご両親は福岡でお仕事もされていて、私の両親はアメリカ・アイオワ州に住んでいたので、それぞれの実家を頼ることも難しい状況でした。そこで日本からも比較的行きやすいハワイに移り住んで、そこに私の両親も呼び寄せて一緒に暮らすのはどうかと、夫のほうから提案してくれたんです。

 

私はかなりいっぱいいっぱいだったので、彼から提案してくれたのはすごく助かりました。

 

── ハワイに移住することで日本の友人と離れてしまう寂しさはありませんでしたか?

 

ローラさん:両親がいたので寂しいというほどではなかったし、コロナ禍になる前だったので、日本から遊びに来てくれる友人がとても多かったんですよ。月に1回のペースで誰かしら来てくれたのでうれしかったですね。

 

子どもがいるから現地のコミュニティにも溶け込みやすかったですし、すぐにお友達や知り合いをつくることができました。

 

ハワイと日本の二拠点生活を送っていたローラさん一家。一時期は章仁選手のレンタル移籍に伴い、シアトルでも暮らしていたのだそう

── ひとりで子育てに向き合う時間が長かった分、ご両親の手を借りられる環境はとても心強かったのではないでしょうか?

 

ローラさん:両親が助けてくれるのはもちろんですが、万が一なにかあったときに、すぐ頼れる存在が近くにいることが心強かったです。一緒に暮らしていたからといって、すごく頼っていたわけではないんです。基本的に子どものお世話は私がやっていましたが、緊急時にすぐ預かってもらえるのは助かりました。

 

ただ、それよりも話し相手になってくれる“大人の存在”というだけですごく有り難かったですね。

 

── 双子はそれぞれ授乳やオムツ替えのタイミングも違いますし、休む間もなく、誰とも話すことなく、一日が終わってしまうことも多かったのではと思います。気分転換も難しいですよね。

 

ローラさん:双子を連れてお出かけするのって、とてもハードルが高いんですよね。二人分の準備をするだけで疲れてしまいますし、お散歩に行こうとなっても、どちらかがグズってしまったらゲームオーバーなので。気分転換も兼ねて出かけるようにしていたのですが、その中でどちらかに泣かれてしまうと、余計にストレスを感じてしまう。毎日、一か八かみたいな気分で過ごしていました。

 

ハワイでは自然が多い地域に暮らしていたので、ちょっとだけ外に出て深呼吸したら、それだけで心地よくて安心するのも大きかったと思います。

ハワイは子育て家庭に優しい土地柄

── 日本では公共交通機関での双子ベビーカー乗車拒否などの問題がありましたが、ハワイで双子育児の壁にぶつかることはありましたか?

 

ローラさん:アメリカはニューヨークなど大都市に行かない限り、基本的に車移動なので、公共交通機関を使う機会がすごく限られています。なおかつ街の構造上、道がとても広いので、双子用ベビーカーをひいていると道がふさがり、通行人に舌打ちされる…みたいな問題が起こりにくい環境なのかなと思います。

 

あと、アメリカって子ども連れに優しい国なのだとすごく感じました。ベビーカーをひいているとすぐにドアを開けてくれますし、エレベーターも真っ先に譲ってくれます。ただ同時に、親がわが子に対してとても厳しくマナーを徹底していると思いました。

 

たとえば子どもがレストランで騒いだり、スーパーで泣き出したりすると、両親がそろっている場合、すぐにどちらかが子どもを外に連れ出して、静かになるまで入ってきません。公共の場でのマナーはとても厳しいなと感じます。

 

だけど、その分周りはとても優しく接してくれるんですよね。特にハワイは子どもが別の子どもに対して優しいのも印象的でした。

 

── お子さん同士の横のつながりがあるのは、とても素敵な環境ですね…!

 

ローラさん:ハワイは子だくさんの家庭が多いので、上の子が下の子の面倒を見るのが当たり前のようなんです。なので公園で遊んでいると、知らないお兄ちゃんやお姉ちゃんが集まってきて、「一緒に遊ぼうよ!」って面倒を見てくれるんですよね。とても温かい環境だなと思いました。

 

万が一、子ども同士でトラブルが起きても、その場にいる大人がすぐに駆け寄って、自分の子どもではなくてもしっかり注意するんです。それができるのはすごくいいなと思います。

 

第三子の次女・るーちゃんを優しい眼差しで見つめるローラさん

── ハワイで暮らしている間、章仁さんとはどのくらいの頻度で会っていたのでしょう?

 

ローラさん:コロナ禍になる前は、月に1回のペースで来ていました。中3日くらいのオフがあるとパッと来て、とんぼ返りしていて。私も日本とアメリカを行き来していました。

 

3、4人目はハワイで出産したのですが、夫も駆けつけて間に合ったんです。それぞれ所属しているチームは違ったのですが、両チームとも理解があって、育休というかたちでチーム合流を遅らせてくれました。

 

アメリカだとへその緒を切るのは夫の役割で、彼も2回切っているんです。なんだかうらやましいなあと思ってしまいます(笑)。

 

── 一緒に過ごしている間は、章仁さんも積極的に育児に加わってくれるのでしょうか?

 

ローラさん:夫は育児を手伝うというよりかは「俺がいないと育児は回らない!」と考えてくれていて、その意識はすごく高くていいなと思っています。

 

最初の出産が双子だったのも大きかったと思います。早産で低体重で生まれてきたので、ふたりとも3週間くらい入院していたんです。夫は出産に立ち会えなかったのですが、病院に到着した日に「パパにも教えるよ!」って看護師さんがスパルタ指導してくれて(笑)。双子が入院している間に、オムツ替えから入浴までとても手厚く教えてもらっていました。

 

自宅に帰ってからも、私の母親に「こういう場合のお風呂の入れ方はどうすればいいですか?」など、とても熱心に尋ねていたみたいです。彼の行動力には頭が上がりません。

心配性な妻と楽観的な夫でちょうどよいバランスに

── 頼もしいですね!離れて暮らしている間に、子育ての相談をすることもありましたか?

 

ローラさん:あります、あります。でも、彼に相談するときって解決策が欲しいというより、ただ共感してほしいだけなので、むしろ「こうしたほうがいいんじゃない?」とか言われると、理不尽ながらイラッとすることもあって…(笑)。

 

── それはよくわかります…(笑)。ただ心配事を聞いてほしいだけなんですよね。


ローラさん:彼も6年間一緒に子育てをしてきて、ようやくそれが分かってきたようで、最近は「これどうしたらいいかな?」って聞くと、いくつかアイデアをこちらに投げつつも、最終的には私が選んだほうをあと押ししてくれます。だいぶケンカをしながら今の状態に至る、という感じです(笑)。

 

結婚から7年が経つ今も変わらず仲良しな山田章仁選手・ローラさん夫妻

── たとえばどんな相談をするのでしょうか?

 

ローラさん:たとえば子どもが病気にかかったとき、私はすごく心配性なので、最悪なケースも含めていろいろなことを先回りして考えてしまうタイプなんですね。対して、夫はとても楽観的な人間なんです。

 

以前、子どもがソファから落ちて頭を打ったときに、私は「今すぐ救急病院に連れて行かなきゃ!」と焦っていたのですが、彼は「もう少し様子見たらいいんじゃん?」とおおらかに構えていて。ふたりとも両極端なので、結局「とりあえず病院に電話してみよう」と、ちょうど“中間”に落ち着くのが、一番わかりやすい例かなと思います。

 

── ふたりの間でちょうどバランスが取れているのですね!章仁さんとお子さんたちは離れて暮らす時間が長かったと思いますが、どのように父子関係を保ってきたのでしょう?

 

ローラさん:今の時代はすぐにテレビ通話で顔が見られるのでとてもよいですよね。子どもたちは寂しそうにすることもあるので、そんなときはすぐにパパに電話をしています。

 

夫婦間ではなりゆきで毎日連絡はしていたのですが、子どもたちは一週間話さなくても平気だったり、かと思ったら次の週は毎日電話していたり。離れて暮らしていても、みんなパパが大好きなので、会うとすぐにバーっと走っていって、ギュッと抱きついていますね。

 

私は何ならつきあっていた当初から遠距離だったので、逆に一緒に暮らしているほうがとても新鮮な気持ちがします(笑)。

 

PROFILE 山田ローラさん

1988年生まれ。アイオワ大学卒業後、モデルとしてデビュー。2015年、ラグビー選手の山田章仁さんと結婚。16年に男女の双子を出産。20年に第三子を出産。22年に第四子を出産し、1男3女の母として子育てに励む。現在はタレント・コラムニスト・ヨガインストラクターとして活躍中。

 

取材・文/荘司結有 写真提供/山田ローラ