ラグビーの山田章仁選手の妻で、コラムニストやタレントとして活躍中の山田ローラさん。4児の母で、飾らない子育ての投稿に親しみが寄せられています。モデル活動中、産後の体型変化に悩んでいたローラさんでしたが、自身の身体とポジティブに向き合うマインドを見つけたそうです。
産後の体型変化に誹謗中傷…「体型を元通りにしなきゃ」と必死に
── 2015年秋のラグビーW杯イングランド大会で活躍した山田章仁選手の“美人すぎるアスリート妻”として大きな注目を浴びましたね。
ローラさん:恥ずかしい(笑)。複雑ですよね。そう呼ばれても困るというか…当時はどう反応してよいのか分からなかったですね。
その年の春の結婚当初はほとんど話題にならなかったんです。まだワールドカップの前だったので、ラグビーの認知度も低かったですし、私も雑誌のモデルをしていたわけではないので、お互いにそこまで世間に知られていなかったというか。
ラグビーワールドカップが終わってから、一気にメディアで取り上げられるようになりましたね。
── 当時はモデルとして活躍しており、2016年に双子のお子さんを出産した際は体型の変化に戸惑ったそうですね。
ローラさん:当時はモデル事務所に所属していましたし、周りからの「早く体型を戻して復帰してね」という無言のプレッシャーを勝手に感じていました。「双子だから戻すのは大変だろう」という理解もあったのですが、逆に自分を追い込んでしまい、周りが求める以上に「体型を元通りにしなきゃ」とプレッシャーをかけていたと思います。
── ただでさえ産後は心も身体も疲れているのに、仕事に復帰するためのダイエットは大変だったかと思います。
ローラさん:事務所の契約にも「体型維持」とありますし、仕事柄しょうがないこととは言えども、いま振り返ったら健康上、無理のあるダイエットをしていましたね。食事制限を徹底して、双子のベビーカーを押しながら激しい運動や筋トレをしていて。
当時、夫はラグビー日本代表に選ばれていて、海外遠征もすごく多かったので、頼れる人がとても少なかったこともあり、余計にメンタル面で追い込まれていたと思います。双子の育児で自分の時間さえなかなか取れないのに、どうやって体型を戻せばいいのだろう…と、いろいろと必死でした。
── モデルという仕事柄、産前産後の体型の変化に余計ギャップを感じやすかったのでは?
ローラさん:もちろんありました。アメリカで出産したのですが、産後間もなく日本に戻ってきて、わりと早い段階で仕事に復帰していたんです。一番ショックを受けたのは、お仕事に行くときにスタイリストさんが用意してくれた衣装に、自分が着られるサイズがないことでした。
ワンピースは着ることができても、下半身が大きいままだからズボンが入らない。そうなるとだいぶコーディネートが限られてしまうので、「あ〜…」って落ち込むことは多かったですね。
── ご自身の産後の体型変化に対する、SNSでの誹謗中傷にも悩んだそうですね。
ローラさん:たとえば、双子を出産した後にヨガインストラクター資格取得のレッスンに通い始めたのですが、その様子をSNSに投稿すると「こんな太ったヨガの先生なんてありえない!」ってコメントが届いたんです。すごく傷つきましたけれど、自分ではどうしようもできないですよね。
今でもやっぱり傷つきますよ。いまだに「元モデルなのにこんなに太っているの?」とか、悲しいメッセージをもらうことはあるので。でも、それで急に痩せたとしても「やっぱり太っているのを気にしていたんだ」と思われるだろうし、それもすごく複雑ですよね。
周りを喜ばせる見た目ではなく、ありのままの自分を愛せるように
── 3人目のお子さんを出産後に、ボディ・ポジティブ(ありのままの自分の愛そう)というハッシュタグとともに、ご自身の身体の写真を投稿したところ、産後の体型変化の悩みを持つ女性たちから大きな共感を集めました。出産を重ねるにつれて、ご自身の身体にポジティブに向き合えるようになったのでしょうか?
ローラさん:やはり出産するたびに体重が増えてなかなか減りづらくなりますし、身体の衰えもあって、以前のような運動をしてもなかなか変化が見られなくなるんですよね。
私は第三子を産んだときに、腹筋が真ん中で縦に裂けてしまう「腹直筋離開」になってしまって。お腹にまったく力が入らなくなるので、身体がずっとフニャフニャしていて、ベッドから自力で起き上がることも難しくなる。今後は体型を戻すためのダイエットよりも、身体の不調を整えるためのトレーニングこそ必要なのだと気づきました。
なので今は体重を減らす目的ではなく、健康維持に集中した運動をしています。それで体型によい変化があればそれでいいですし、周りを喜ばせる見た目に戻すのではなくて、自分の健康を保てる“幸せな体型”を考えていかなきゃと思えたんです。
── 過去にとらわれず、ありのままの姿で子どもたちと笑うローラさんの姿が素敵です。
ローラさん:自分の子どもたちが将来、周りから体型や見た目に対する中傷を受けたときに「自分はそのままでいいんだ」と強く伝えたいと思いますし、そのためにはまず自分の意識から変えていかなきゃと思うんです。
当時は「モデルのお仕事ができなくなるかも」という不安もありましたし、この考えに至るまでには時間はかかりましたけれど、健康であればどんな体重・体型でもいいと思っています。たとえ今後体重が増えたり減ったり、体型が大きく変わったりしても、そのときの自分を愛せるような努力を常にしたいですね。
── かつてのローラさんのように“産後ダイエット”の風潮に悩む女性は少なくないかと思います。
ローラさん:日本ってよくメディアで「妊娠後に体重がこれだけ増えて、ダイエットでこれだけ早く戻りました」と産後ダイエットを取り上げがちですが、それってすごくお母さんたちにプレッシャーを与えてしまうと思うんですよね。
母親は赤ちゃんという大切な命を懸命に守ろうとしているのに、それに加えて「体重を早く落とさなきゃ」というプレッシャーを与えてしまったら、それこそ産後うつにもつながりかねないと思います。なので、私は自分の具体的な体重変化についてはなるべく話さないよう心掛けています。
産後にハマったヨガは「精神安定剤」
── 現在はヨガインストラクターとしても活動しています。これも健康維持のために始めたのでしょうか?
ローラさん:本格的に始めたのは、双子がちょうど1歳半ごろでした。双子を産んだことで身体のダメージが大きかったうえに、夫が海外遠征で不在がちだったので、常にずっと子どもと一緒だったんですね。1歳半になると少しずつ自我が芽生えてきますし、イヤイヤ期で精神的に追い詰められることもありました。
そんなときに初めて近所のヨガスタジオに行ったのですが、そこには子どもを預けられるスペースがあって。子どもと離れて、自分と向き合う時間を設けたいなと思ったのがきっかけでした。
なので、ヨガは健康維持や運動目的というより、自分の精神安定剤として始めたんです。
── 現在はもうモデルのお仕事からは離れているのでしょうか?
ローラさん:モデルとしての私はいったん終止符を打った、という感じですね。今まではモデルの仕事を頑張る自分が大好きだったし、モデルという仕事自体もとても好きだったのですが、出産を機に自分のなかでのプライオリティーが変わったのだと思います。
PROFILE 山田ローラさん
1988年生まれ。アイオワ大学卒業後、モデルとしてデビュー。2015年、ラグビー選手の山田章仁さんと結婚。16年に男女の双子を出産。20年に第三子を出産。22年に第四子を出産し、1男3女の母として子育てに励む。現在はタレント・コラムニスト・ヨガインストラクターとして活躍中。
取材・文/荘司結有 写真提供/山田ローラ