今回は、小学4年生のお子さんに中学受験の勉強を続けさせるべきか悩んでいる相談者に、教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】嫌な思いをさせてまで勉強をさせるべき?

小学4年生の女の子の母です。近所に人気の私立中学があるので、小学校を卒業したらそちらに通うことができたらいいなと思い、中学受験塾に通い始めました。ただ、予想以上に勉強の内容が難しくて、正直、親子ともに戸惑っています。

 

先日は、社会の地図の縮図の計算が理解できなくて、子どもが「わからない」と。私も一生懸命説明したのですが、最後には子どもが泣いてしまいました。これからどんどん内容的に難しくなると思うのですが、4年生の段階ですでに親子間の関係に暗雲が漂っています。

 

泣くほどの思いをさせてまで勉強を続けさせるべきなのか、子どもに勉強を強いるのはやるべきことなのか、毎日のように悩んでしまいます。アドバイスお願いします。

 

「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(1/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(1/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(2/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(2/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(3/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(3/7P)※漫画の4P以降は本文の後に掲載しています

見落としがちな「体感的な理解」を育む働きかけ

心理学の分野では、興味や関心といった「内発的動機づけ」の重要性がとっくの昔に判明しています。つまり、「強制力で人は育たない」という結論が出ているこの令和において、子どもが泣くまで勉強を強いるなんて理性的な大人なら誰もやろうとはしませんよね。

 

ただし、お子さんに勉強の仕方が身についていて、「どうしてもこれくらいの成績を取りたい」といった目標を本人自身が持っており、その目標が達成できずに悔しいと泣いているのであれば話は別です。それだけ前に向かいたいと願うエンジンがあるわけですから、成長できる涙です。

 

では、ご相談者様のお子さんはどうかといえば、どうしていいかわからないと追い詰められて泣いている様子に見えますね。これは、非常に心配な状態です。放置すると「自分は勉強ができない」というレッテルを自分自身に貼ることになりかねず、勉強に対するトラウマのような心の傷が残るリスクがあります。今のままでは自己肯定感を下げる要因にもなるでしょう。

 

だからといって、受験勉強をやめたほうがいいとすぐに考えるのも短絡的です。受験をあきらめるという結論を出してしまうより前に、親御さんが学力の伸ばし方を理解することのほうが大切です。

 

まずご相談者様は、社会の地図の縮図計算について「一生懸命説明した」とおっしゃいますが、それはあくまで数式による計算方法だったのではないかなと思います。

 

たとえばこれまでに、ピザの生地をこねて広げるといった体験や、Googleマップなどを使って地図を拡大・縮小する遊びなど、伸び縮みの感覚を育んであげることは意識されてきましたか。

 

あるいは、1センチメートルと1メートル、1キロメートルの長さの違いがイメージできるよう、身のまわりにあるものと結びつけるような働きかけはされてきたでしょうか。

 

縮図計算の意味は、こうした伸び縮みや数の体感的な理解があって初めてわかるものです。しかも、体感を通じた学びは、子どもの感覚まかせにしていると子どもなりの視点でとどまってしまうので、中学受験の学習に求められるレベルに到達するには親が意識的に声がけをしていく必要があるのです。

 

書籍を参考にするのであれば、『理系が得意になる子の育て方』(西村則康、辻義夫/ウェッジ)という本は身体感覚を養う具体策がたくさん書かれていますのでおすすめです。

塾の先生にアドバイスをもらい「手立て」を明確に

また、塾で小学3~4年生の算数を担当されている先生に面談を申し込みましょう。プロの目から見てわが子の数に対する感覚や数量に対する理解はどう思うか、どんな学習に親が一緒に取り組んだらよいかなど、アドバイスをもらうといいと思います。

 

先生に相談すると、気づいていなかった視点、今すぐ実行できそうな工夫、受験学習の要求度など、いろいろなことが発見できると思います。その発見は、お子さんとも必ず共有してください。勉強がわからなくて泣いてしまうほどのお子さんは、それだけ「わかりたい」という渇望とその裏返しの不安感、恐怖心が強い子です。

 

そういう子は一度自分ができないと思うとその意欲があきらめに転じてしまい、自分は能力がないんだと思いこんでしまう傾向があります。ですから、「苦労したのはやり方を知らなかっただけだから、こういう方法を取るとだんだんわかるようになるらしいよ。だからあなたはあきらめる必要がないし、大丈夫だよ。ママも知らなくてごめんね。一緒に取り組んでいこう」といった形で、お子さんが自分の能力をあきらめる必要はないことを強調しながら伝えてあげましょう。

 

ご相談者様もお子さんもまっすぐに物事に向き合えるタイプでいらっしゃると思いますので、取り組む手立てさえわかれば、お子さんの力はすごく伸びていくと思います。

 

「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(4/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(4/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(5/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(5/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(6/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(6/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(7/7P)
「中学受験『勉強がわからない』と泣く小4の娘『親子の関係に暗雲が』」(7/7P)

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!