今回は、小学校に入学したばかりのお子さんの登校しぶりに悩む親御さんに、教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】小学校に入学したばかりの息子。登校しぶりに悩んでいます

この春、晴れて息子が小学校に入学しました。新しい環境に戸惑いつつも、順調に通っていたのですが、「学校に行きたくない」と朝ごねるようになりました。話を聞いてみると、「学校の先生が厳しい」「楽しくない」「友達がちょっかいを出してくる」と。

 

私も仕事があるので大変な思いも抱えながら、何とか調整してしばらく付き添って学校まで連れていっていたのですが、最近は、家を出る時点で「おなかが痛い」といって石のように固まってしまうことも。

 

先生に話を伺うと、学校にいる間は楽しく過ごしているようです。入学後は緊張感もあったものの、GWで気持ちの糸が切れてしまわないか心配です。アドバイスお願いします。

 

「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(1/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(1/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(2/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(2/7P)

「理想とのギャップ」に戸惑い、疲れている

小学校の入学を控えるご家庭の多くが、「ちゃんとスタートしようね」「先生の話は聞こう」など、子どもの心の準備を整えてあげようといろいろな声がけをするものです。おそらくご相談者様も入学前にそういったお話を親子でだいぶされたのではないでしょうか。

 

それはよいことなのですが、子どものタイプによっては、逆効果になる場合があります。たとえば、慎重で完璧主義、周囲を観察する傾向がある子は、頭のなかで理想形を準備し、入学後の現実とのギャップに違和感や嫌悪感を強く抱いてしまうことがあります。

 

ご相談者様のお子さんも「小学校に入ったらこうなるはず」というイメージが強くあったのかもしれません。「友達がちょっかいを出してくる」という表現からも、真面目に何かをやろうとしているときに話しかけられたのが嫌だったのではないでしょうか。

 

おそらく理想を高く設定しているぶん、そこからズレることがすごく嫌で、「こんなはずではなかった」と戸惑っているのでしょう。そうした思いが生まれると、考えすぎて不安になり、明日がやってくるのが怖くなります。

 

そして、翌朝に起床すると今度は「学校に行ったらこうなるのか」などとまだ起きてもいないことを想像し、ますます学校に行くことに対して気が重くなる。きっとお子さんはそんなふうにシミュレーションができる頭のよい子です。真面目で考える力があるからこそ疲れてしまっているのではないでしょうか。

大切なのは「頑張っているわが子の心」に寄り添うこと

先生からは楽しそうに見えるということは、お子さんは校門に入ると腹を決めて過ごしているのでしょう。そのときは決して取り繕っているわけではなく実際に楽しいのかもしれませんが、想定外のことに対する嫌な思いを心の奥にしまって頑張っている様子がうかがえます。

 

ご相談者様も焦って「明日学校に行けるかどうか」に会話が終始してしまい、頑張っているお子さんの心に寄り添うことがあと回しになっていませんか。

 

まず家庭では、登校するかしないかはいったん横に置き、「いっぱい考えてるよね」とお子さんに声をかけ、話を聞いてあげてほしいと思います。

 

どんなときに友達といて困ってしまうのか、「本当はこうだったらいいのに」と思うことは何か。学校で楽しい場所はどこか、どの時間が好きか。先生のどんなところが好きか、先生が使う言葉で嫌いな言い方はどんな表現か──学校のさまざまな場面で感じていることや思っていることを具体的に聞いてあげるといいでしょう。

 

また、まだ小学1年生のため、自分の思いをきちんと言語化することは難しいと思うので、「こういうことを考えていたんだね。心配なら先生に言ってあげるよ」「〇〇君のお母さんとはお友達だからママから伝えてあげることもできるよ」など、解決の手立てを考えてあげることも大切です。

 

とくに大人から見て熱心な先生は、子どもからすると口調がきつく感じたり、言っている意味がわからなかったりと、ストレスになることがあります。「先生が厳しい」とお子さんが言っているわけですから、先生とお子さんの感覚に大きな隔たりがあるようなら、担任の先生に個別面談を依頼しましょう。

 

小学1年生を担任するというのは大変難しい仕事ですから、先生も慣れていない場合があります。「大人の私からすると先生がしてくださっていることは理解できますし、ありがたいのですが、子どもの受け止め方はこうなっているようなんです。うちでも理解できるようフォローしていきますので、先生のほうでも少しご調整をお願いできませんか?」といった具合に伝えると、うまくコンセンサスが取れると思います。

 

まずはお子さんが学校で何を頑張っているのかを知り、問題があれば解決の手立てを考えて助けてあげること。お子さんの心を理解し、寄り添ってあげてほしいと思います。

 

「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(3/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(3/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(4/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(4/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(5/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(5/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(6/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(6/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(7/7P)
「小1の息子が『登校しぶり』理想とのギャップに戸惑いと疲れが」(7/7P)

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!