父親がイラク出身の国山ハセンさん。子どものころからマイノリティゆえの“窮屈さ”を感じてきたそう。「ずっと深いところにある」というルーツへの思いを聞きました。(全5回中の5回)
「日本の多様性のなさを時折感じる」
──「news23」では、イラク出身の父を持つ国山さんが、国内にムスリムのお墓がたりないという問題をクローズアップした企画が印象的でした。
国山さん: ありがとうございます。「news23」を辞める前に自分で企画したものでした。
── 振り返ってみて、ご自身のルーツは国山さんのパーソナリティにどんな影響を与えていますか。
国山さん:ルーツが海外にもあり「ハーフ」と呼ばれることに関しての違和感は、もちろんありますね。日本の多様性のなさを時折感じるというか。
また、こういうことを発言するたびに「日本から出ていけ」みたいにバッシングをどうしても受けてしまうこともありますし。そういうやりとりは、もったいないですよね。
── もったいない、とは?
国山さん:考え方としてもったいないな、と。僕個人は慣れてるので批判的な意見にそんなには凹まないんですが。
ただ、ずっとどこかで「自分は外国人と日本人のハーフ」というのは感じながら生きてきました。「どこの国のハーフなの?」とこれまで様々な場面で聞かれてきましたけど、毎回そう聞かれる気持ちは、多くの人にはわかってもらえない。
ましてや父の祖国は中東のイラクで、僕が生まれてからずっと情勢も不安定。そういう報道で見ながら育っているので、複雑ではありますよね。僕もまだ一度もイラクには行ったことがないですし。
── まだイラクには行かれたことがないんですね。
国山さん:はい。イラクという国への想いは心の深いとこにあって、いつか父の故郷に行きたいなと思っています。いいところとかを見つけて伝えたいなとか、今何か困っているんだとしたら、どう社会課題を解決できるのかな、という想いはあります。
周囲からの偏見「むしろ大人になってから」
── イラクにルーツがあることで、小さなころ嫌な思いをしたことはありますか?
国山さん:いじめられた、とかはなかったですね。不快な思いをしたのは、むしろ大学とか大人になってからです。「日本って、こんなドメスティックなんだ」と感じることは多いです。
大学でも、友人から“中東いじり”みたいなことはありました。「テロリストがいる国だ」と。今思えば、あり得ないですけど。
── それはあり得ないですね。
国山さん:でも当時、友人からそう言われたことで「潜在的にそういうイメージをもっているんだ」ということは感じましたね。それは、社会人になってからも、あまり変わらなかったです。テレビ局でも理解がない発言をされたりすることもありましたし。
── そうだったんですね。
国山さん:でも、「そりゃそうだよな」とも思います。そんなに簡単な話ではないのも理解しています。だからもったいないな、と思います。もっと日本に多様性があって、オープンマインドな社会だったら、海外に出て活躍する人も増えるんじゃないかなぁと。
僕は幸い、ハーフであることによって、いい影響もあるなと感じています。ハングリーさもそうですし、そもそも海外に視野が広がっているなど、自分の生き方に大きな影響を与えていると思います。
ハーフと呼ばれる窮屈さは「ずっとある」
── 自分のルーツをポジティブにとらえていらっしゃるんですね。
国山さん:もちろん、生きづらさとまでは言わないですけど、窮屈な感じはたまにはありますよ。海外から日本に帰ってきたとたんに、そう感じるようになるみたいな。細かいことまで含めれば、そういう窮屈な感じは「ずっとある」という感じです。
ただ、今はかつてに比べればグローバルでオープンマインドな人も多いし、周囲に僕と同じように海外にルーツがある人も多いので何も悲観はしていないです。世界中どこでも同様のことはありますから、大切なのは視野を広げて、相手を理解することだと思います。
── 今後やってみたいことや、目標にしていることはありますか。
国山さん:先が見えないことへの不安も含めて、わくわくしています。10年後、自分がどうなっているのか、本当に見えない。ただ、ずっと思っているのは、つねに挑戦したいなということですね。
スタートアップの世界にいるので、当然起業にも興味がありますし、社会をどう変えていくのかということにも関心がある。海外でも働いてみたいし。具体的には何も定まっていないんですけど。とにかく一生懸命に生きていきたいです(笑)。
PROFILE 国山ハセンさん
プロデューサー・タレント。1991年生まれ。2013年TBSにアナウンサーとして入社。「アッコにおまかせ!」「news23」などで活躍。2023年1月から映像メディア「PIVOT」に参画。
取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美