「news23」(TBS)のキャスター時代、第一子誕生を機に3週間の育休を取得した国山ハセンさん。家事・育児への取り組み方が変わるきっかけになった一方、葛藤もあったと明かします。(全5回中の4回)

 

国山ハセンさん

転職を機に「子どもの成長を間近で見られるように」

── 現在一児の父でもある国山さんですが、転職して育児と仕事とのバランスは変わりましたか?

 

国山さん:いや、今はもうTBS時代の倍ぐらい育児の時間が取れているんじゃないですかね。今は自分でスケジュールを決めるので「週4日しか働かない」というのもできる。ただ、逆に言えば、ずっと仕事することもできてしまうので「休むときに休む」と決めています。

 

今日も午前中は子どもと過ごす時間がありました。「news23」のときも育児の時間はあったのですが、生活としてはやっぱり大変で。深夜に帰ってきて、朝子どもと一緒に散歩に行って、少し寝て出社する、みたいな。今のほうが子育ては充実していると思います。

 

国山ハセンさん
抱っこ紐姿もおしゃれ!国山さんのイクメンショット(写真提供/本人)

── 今お子さんは1歳2か月だそうですね。まだ手がかかる時期ですね。

 

国山さん:そうですね。僕は家にいない時間がどうしても多いので、今は妻に負担をかけていると思います。今もめちゃくちゃ育児ができているとは思わないんですが、体操教室に一緒に行ったりできるようになりました。子どもの成長を間近で見られるようになりましたね。

 

──「news23」時代、3週間の育休を取得したことも話題になりました。

 

国山さん:そうですね。ただ、2~3か月とか、長期は取れなかったですよね。今思えば取りたかったな、とは思うんですが…。「3週間ぐらいだったら取れそうかな」と思って提案したところもあったので。

 

── 3週間はご自身の提案だったんですね。

 

国山さん:はい。妻が里帰り出産で、2か月で実家から戻ってくることが決まっていたので、そのタイミングで取るということを、妻と話し合って決めました。

 

僕も当時、ウクライナの関係でルーマニアやモルドバで取材をしたりと、大事な仕事が入っていたタイミングでもあったので、時期を調整しながらゴールデンウィークから5月の終わりくらいまで休みました。

 

国山ハセンさん
0歳児との入浴は気を使うことも多いですが、首もしっかり支えて余裕の表情です(写真提供/本人)

育休後は再び激務になり「妻と衝突する原因に」

── 実は私の夫も第一子出産後、国山さんと同じように育休を取得したんですが、その後すぐ激務に戻ったことに当時は不満がありました。国山さんは、育休後の働きぶりはいかがでしたか?

 

国山さん:僕は「育休とったら育児は終わり」とは当然思ってないんですが、ただ僕もおっしゃる通り、仕事に戻ったら結局、朝から深夜まで働く日常に戻ってしまった。だから「なんちゃって育休」と見なされてもおかしくないな、というのは思います。

 

育児はずっと続くし、ゴールはない。とはいえ、今振り返ってみると、育休明けに仕事にすぐに戻って、翌日からまた朝から夜までいないとなると、妻からしたら「何だったんだろう」と感じてしまうのもわかります。そこは自分も歯がゆかったです。

 

ただ、「でも、どうしたらいいの?」という。そのあたりは、当時は僕も妻と衝突する原因になったりしましたね。

 

ただ、こういうふうに取材で取り上げてもらって、経験をお話しさせていただける機会を得られたので、育休を取ったことに意義はあったと思います。

 

国山ハセンさん
育休取得経験者としてのメディア露出も多い国山さん

── 同僚など周囲のサポートも必要ですよね。

 

国山さん:そうですね。企業も変わらなきゃいけないし、社会も変わらないといけない。
でもいずれにせよ、取得しないとこういう発信も議論もできない。だから僕は、まずみんな取ったほうがいいなと思っていますし、取ってよかったなと思っています。

 

── 社会や会社に対して、こんな支援や制度が必要だ、という提案はありますか?

 

国山さん:そもそも今の日本の制度や風土だと休むことのハードルが高いなと感じます。キャリアがある人こそ休んで、それでも組織が回っているほうが健全だと思うんです。別に社長が休んだって、組織は回る。今だって、僕が今日から1週間いなくたって「PIVOT」のコンテンツは出るし、メンバーみんなで補いあえる。

 

理想と現実は違いますが「仕事って、本当にそこまで大事なことなのかな」ぐらいの感覚でいたほうがいいなと最近は思っているんです。

 

── それはどういう感覚なのでしょうか?

 

国山さん:例えば、会社では「人がたりなくて仕事が回らない」ということになりがちですよね。でも従業員の生活やQOLと比べたら、その仕事は本当にそこまで重要なのかな、という。大切なのは生産性ですし、日本の状況は働きすぎだと思うんです。休んだほうがいいんですよ。ですから極端に言えば休みを義務化するべきかなと、僕は前々から思っていて。

 

国山ハセンさん
3週間の育休を取得したことにより、見える景色が変わったという国山さん

休んでもキャリアやスキルは意外と変わらない

── 休みを義務化、ですか?

 

国山さん:はい。育休も含めて、もっと男性も女性も、普通に休める仕組みになったほうがいいと思います。

 

これは、大企業が風土をつくっていく必要があると思います。日本はほとんど中小企業なので、結局中小企業では休みが取れない、というような話が毎回議題に出ますが、その点を補完するのが国の役割だと思うので。今は育児休業中は(育児休業給付金で育休前の賃金の)一定額のお金を受け取れますが、それも100%でいいんじゃないかと思っています。

 

海外に行くと、なおさらそう思いますね。フィンランドは人口比率は異なりますが男女平等の考え方が強いですし、残業もしない。夏が短いから夏休みはしっかり休む。日本人って、1週間くらいしか夏休みがないじゃないですか。僕もTBS時代は、10年間ほとんど休んでないし、有給休暇もけっこうたくさん残して辞めているんで。

 

── そうなんですね。

 

国山さん:でも、例えば、もし僕が有休を使って4か月間会社にいなかったとしても、普通にTBSは存在したでしょうし、僕のキャリアやスキルが変わっていたかというと、そこまで変わっていないと思うんですよ。

 

ただ、当時はそうは思えなかった。今やっと俯瞰して思えたことではありますね。そういったことは、今後、番組を通して伝えていけたら良いですね。

 

実際、僕自身がキャスターという立場にいながら「3週間育休を取りたい」と上司に言ったときも、周囲からは何のハレーションも起きませんでした。臆せず、まずは育休を取得してみないと、何の議論もできないと思います。

 

PROFILE 国山ハセンさん

プロデューサー・タレント。1991年生まれ。2013年TBSにアナウンサーとして入社。「アッコにおまかせ!」「news23」などで活躍。2023年1月から映像メディア「PIVOT」に参画。

 

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美