笑い飯・哲夫さんは3歳と5歳の育児の真っ最中。そして、低料金での小中学生向けの補習塾も経営。家族と世間の子ども見守る哲夫さんの眼差しは、温かいものでした。

 

懐かしの肩かけかばん!名門校に通っていた高校時代の哲夫さん

「来年は奈良へ移住」子どもに自然を触れさせたい

── 仏教の本を6冊出されるなどインテリ系のイメージのある哲夫さんですが、趣味はサーフィンやモーグルと、意外にアウトドア好きだそうですね。

 

哲夫さん:意外ですか(笑)。僕、自然とたわむれるのが好きなんです。波は毎日違う。雪だって毎日滑れば違いがわかります。自然はほんまにすごい。自分は、地球という大きな生命体の一部なんやなぁと実感できます。そして、先人の智恵の積み重ねのなかで生かされてるという謙虚な気持ちになります。

 

── 哲夫さんご自身も、自然のなかで育ったのですか?

 

哲夫さん:僕の育った奈良県の桜井市は、自然豊かなところです。実家は農家もしていて、僕もずっと米作りを手伝ってきました。来年には3歳と5歳の子どもたちを連れて、実家に移住する予定です。思いきり川遊びをして、自然に囲まれて育って、心豊かな子になってくれたらいいなと思ってます。

汗だくになりながら工作に熱中した少年時代

── 奈良県に移住ですか。地域のつながりも強そうですね。

 

哲夫さん:そうそう、僕が小さいころは近所のおじさんによく怒られてました。地域みんなで子育てする感覚があったなぁ。最近は都会だと、お互い遠慮してなかなかそこまではいかないですが。僕らの格安補習塾「寺子屋こやや」も、地域みんなでの子育てを意識しています。学校や家庭以外の居場所であり、先生はお兄さん的存在。勉強以外でも、子どもの頼れる兄貴分でいたいです。

 

農業やわらじ作りも行う哲夫さん

── 哲夫さんが子育てで大切にしていることは?

 

哲夫さん:子どもが熱中する時間を大切にすることかな。僕もそうやって育ててもらったから。僕のおばあちゃんちが、ソーメン屋なんです。お店で使った割り箸を洗ってためといてもらって、飛行機や船を作りまくりました。お店のマッチでドミノ倒しをしたり、真夏にクーラーのない部屋で汗だくになりながら集中して遊んでましたよ。

 

何事も極めたら、何かを得られるし、それが後で役に立つものです。ちょうど、うちの娘がリカちゃん人形遊びにハマってるんですが、気がすむまで思う存分やればいい。ほっといたら、この間は5時間くらい遊んでましたよ。ひとつのことを追求するには時間が必要ですが、いまの子どもは忙しすぎて、好きなことをやりつくす時間がたりないんじゃないでしょうか。

 

うちの子たちも、水泳・体操・ピアノなどを習っていますが、僕はその年齢に応じたことをやればいいと思います。

志望校に落ちても「進化のプロセスをほめて」

── たしかに、いまの子どもたちは忙しいです。最近とくに、中学受験のために早くから塾に通ったりと大変。塾を経営する哲夫さんは、この風潮をどうご覧になりますか?

 

哲夫さん:本人の行きたいところに行くための受験は、いいと思います。でも、親のプライドや見栄があると、子どもがプレッシャーに苦しんだり、親もストレスを抱えたりいろいろありますよね。

 

志望校に合格するに越したことはないけど、だめでもそこまで頑張ったことは、本人の進化のプロセスだとほめてあげてほしい。僕も中学校のときは真面目に塾に通いました。第一志望の奈良高校に合格したときは、うれしすぎて母親の職場に電話。ほんまにうれしかった。大学は浪人したけど第一希望には受かりませんでした。でも、頑張ったし、確実に成長しました。ムダな経験なんかないです。

 

PROFILE 笑い飯 哲夫さん

2000年に西田幸治さんとお笑いコンビ「笑い飯」結成。2010年にM-1グランプリ優勝。2014年からは小・中学生向けの学習塾「寺子屋こやや」のオーナーも務める。仏教に関する書籍を6冊執筆。『ブッダの一生‐カネも妻も子も手放して仏教をつくったスゴい人‐』(ワニブックス)好評発売中。2020年より相愛大学人文学部客員教授。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/笑い飯 哲夫、吉本興業株式会社、寺子屋こやや