大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、学校の担任の先生を「怖い」という小学生の娘に対し、親ができることはないかと悩む女性の相談にお答えします。

【Q】理不尽なことで叱る小学校の先生

ひとりっ子の娘は公立小の新4年生で、わりと静かで争いごとが苦手なタイプです。新クラスの担任の先生は「厳しい」と評判の学年主任の中年男性で、娘によると、ロッカーの使い方や掃除の仕方が悪いなど、ちょっとしたことで声を荒げるそうです。

 

「これも社会勉強かな」とは思うのですが、穏やかに育ててきた親としてはモヤモヤします。娘は「先生怖い」と毎日のように言っています。これから1年間お世話になるので、娘と一緒になって先生の悪口を言うのも気が引けますし、学校に相談して気まずくなるのも避けたいところで、相談すべきか悩みます。親はどうすればよいでしょうか。

 

「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(1/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(1/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(2/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(2/7P)※漫画の3P以降は本文の後に掲載しています

怖い先生=立派なパワハラ!でも親は子の前で先生を悪く言わないで

これって社会では“パワハラ”って言われるほどのことですよね。こんな社会勉強を子どもがしなくていいです。

 

まずお子さんへの対応を考えてみましょう。

 

相談者さんは「娘と一緒になって先生の悪口を言うのも気が引けます」ということでしたが、それは正しいと思います。つい一緒に言いたくなるのですが、先生の悪口は一緒になって言わないほうがいいです。

 

というのも、学校生活するうえで、子どもたちにとって先生は尊敬する存在であってほしいのです。子どもが先生を下に見てしまうと、学校生活や学級が立ち行かなくなる可能性があります。先生のことを悪く思ってしまうと、挙げ句の果てには先生の言うことを聞きたくなくなってしまいます。

 

なので、子どもたちにはある程度先生を目上の存在としてとらえ、「この先生の話は聞きたいな」と子どもが素直に思える関係性をつくっておいたほうが、お子さんのためにも良いでしょう。

 

「担任の先生はちょっと怖い部分や嫌なところがあるかもしれないけど、きっとこういうふうに子どもたちのことを考えてくれているんだと思うよ。だからちょっと言い方厳しくなっちゃうのかもね」

 

などというように、お子さんの声に耳を傾けながらも、先生の悪口にならないようなフォローするのがおすすめです。

パワハラ相談は“モンペ扱い”にはならないのでは

次に、学校に対する対応について考えましょう。

 

相談者さんは「学校に相談して気まずくなるのも避けたい」とおっしゃっていますが、これは学校に相談してもいい案件のような気がしています。この相談内容はいわゆる“モンスターペアレント”の扱いにはならないでしょう。

 

ただ、曖昧な相談な仕方だとうやむやになってしまうかもしれないので、今はどんな状態なのか、どんな解決策を望むのか、先生にどうしてもらえると安心できるのかなど、できるだけ具体的に学校側に伝えたほうが、状況は改善されやすいと思います。

スクールカウンセラーへの相談も気兼ねせず

続いて相談先について考えます。このご相談の場合は、校長先生や教頭先生、養護教諭の先生、スクールカウンセラーなどいくつかの窓口が考えられます。ほかに信頼できる先生がいればその先生でもいいですね。

 

スクールカウンセラーに相談となると、ハードルが高く、おおごとのように感じる方もいるかもしれませんが、実はそんなことないんです。「学校には行けているけれどちょっと気になることがある」という程度でも大丈夫です。なかには「偏食が激しい」といった相談もあるくらいです。相談者さんの場合、「担任の先生が怖い」という悩みは、十分相談の理由になります。スクールカウンセラーによりますが、希望すれば学校側につないでくれる場合が多いです。「誰が言ったかわからないようにしてほしいんですが、この問題について校長先生や教頭先生に伝えていただけますか」とお願いしてみてもよいでしょう。

先生がアンガーマネジメントを知る必要も

学校側にお願いしたいのは、このお子さんが苦手な「担任兼学年主任」の先生に対し、学校側が怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」について伝えてほしいです。アサーティブな表現方法(爽やかな自己表現)をこの先生に伝えられると、より理想的ですね。先生個人に伝えにくい状況でしたら、スクールカウンセラーや養護教諭の先生が子どもたちに伝える機会を設けることで、先生にも知ってもらうことができます。アンガーマネジメントは子どもたちにも必要な知識ですから、ぜひ検討していただきたいです。

 

そもそもこの問題の先生は、子どもを下に見ているという前提がありそうです。目上の人には声を荒げたりパワハラしたりしませんよね。子どもたちはもっと尊重されるべき存在です。まだ小学生だと我慢が当たり前だと思ってしまい、なかなか行動を起こしづらいので、保護者主導で問題の改善に動いてみてはいかがでしょうか。

 

「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(3/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(3/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(4/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(4/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(5/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(5/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(6/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(6/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(7/7P)
「『先生が怖い』と悩む娘…理不尽な説教は学校に相談すべきなのか」(7/7P)

 

PROFILE 八木経弥さん

やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子  イラスト/まゆか!