大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、夫の実家に帰省するたび、義姉からの無言の圧を感じると悩む女性の相談にお答えします。
【Q】帰省するたびに義姉のプチギレが伝わってくる
夫の実家には、夫の両親と義理の姉一家が2世帯住宅で同居しています。夫の希望でわが家はGW、お盆、正月と年3回帰省するのですが、義姉の存在が怖く、今からGWの帰省が憂鬱です。
というのも、気の強い義姉がちょこちょこプチギレてきます。面と向かって何か言われるわけではないのですが、私の前で「あー疲れた」「めっちゃだるい」の独り言を連発。考えすぎかもしれませんが、「あなたたちが来るから掃除や布団の準備で疲れた」と言われているような気がします。
さらに、洗濯物干しを手伝うと、無言で干す場所を変えられていたり、食器の片づけを手伝うと、棚から出し直されたりされ、無言の圧が怖くて帰省が憂うつです。どう対処すればよいでしょうか。
これって嫌味?性格?ご主人をもっと巻き込んで!
ご主人の希望で年3回帰省ということですが、ご相談内容からはご主人の姿が見えてこないですね。これは相談者さんだけの問題ではなく、夫婦や家族の問題でもあるので、もっとご主人を巻き込んでもいいのではないでしょうか。
たとえば「めっちゃだるい」というお姉さんの独り言について、「お姉さんって普段からあんな感じなのかな」とご主人に聞いてみるのもいいでしょう。そして、そうした独り言に対し、ご主人はどう思っているのか確かめてみてはいかがでしょうか。もしかしたら「姉ちゃん、高校生のときからずっとあんな感じだよ」という答えが返ってくるかもしれません。もしご主人が「わかんない」などと返してきて疎いようなら、こんな投げかけはいかがでしょうか。
「ねえ、お姉さん独り言多くない?」と、とぼけて聞いてみると、相談のきっかけになりそうです。ひとりで考え込むと言い出しづらくなるので、さらっと伝えてみてください。
これって「考え方のクセ」のせい?一度冷静に考えて
もし、ご主人が「昔からあんな感じだから気にしないほうがいいよ」などと言ってきた場合、「もしかしてわたしの考えすぎかも?」と一度立ち止まって考えてみてください。人は誰しも“考え方のクセ”というものがあります。相談者さんの心配がもし本当に勘違いだとしたら、「自己関連づけ」という思考のクセが強くなっているのかもしれません。このクセが強い人は、誰かの機嫌が悪いと「わたし何かしたかしら…」と考えがちです。
お姉さんの「あー疲れた」は、もしかすると夫婦げんかが原因かもしれません。寝不足だからかもしれませんね。また、相談者さんの考える「無言の圧」も、実はまるっきり勘違いかもしれません。だから嫌味かどうかの判断は、急がないほうがよさそうです。
年3回はしんどいかも…帰省回数を見直してみる
それからご主人の希望で年3回帰省ということですが、ご実家がそこそこ離れた場所にあるのであれば、いささか多い気もしますね。子連れの帰省は準備も大変だと思います。このままのペースで帰省を続けるのか、ご主人に相談してみてはいかがでしょうか。具体的に提案・相談してみるといいですよ。たとえば以下の通りです。
「子どもたちがこっちのお友達と遊びたがってるから、あなただけ帰ることってできる?」
「私は年3回の帰省を年2回にして、そのうち1回は家族旅行にしたいなぁ」
「嫁である私も行くとお母さんもお姉さんも気を遣うだろうし、お姉さんの負担も大きくなるだろうから、私はお留守番してようかなぁ」
モヤッとすることははっきり口に出して聞いてみる
手伝った家事をやり直されることで無言の圧を感じているのなら、こちらからアプローチしてはっきり聞いてみるのもいいと思います。
「洗濯物ってどう干せばいいか教えてください」
「食器も片づけのときってどこにどれを置けばいいですか」
こうしてはっきり聞いたほうが気持ちいいですよね。そこで「手伝わなくていいよ」と言われたなら、「じゃあ申し訳ないですけど、全部お願いします」ときっぱり言ってしまえばいいです。
ご主人に対してもお姉さんに対しても、自分の言葉で「伝える」ことが大事です。自分の心のなかで反すうしていても、解決につながることはほとんどありません。いやな思いは発酵しちゃうもの。ぜひそうなる前にガス抜きしてみてくださいね。
PROFILE 八木経弥さん
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。
取材・文/大楽眞衣子 イラスト/まゆか!