大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺います。今回は、長期休暇のたびに1〜2週間も平気で実家に居座る義妹に悩む女性の相談にお答えします。
【Q】敷地内同居とはいえ、長期滞在する小姑に…
私は長男の嫁で、夫の家族と敷地内同居しています。夫には妹が1人おり、実家から車で1時間の場所に家族4人で暮らしています。この小姑がしょっちゅう実家に帰ってきます。春休みや夏休みなど、子どもたちの長期休みになると、1〜2週間、平気で家に居座ります。敷地内同居とはいえ、小姑が帰ってくると、いろいろと見たくないものが目についてきます。たとえば、デパートの袋。義母とデパートに買い物に行って何か買ってもらったんだろうな〜と思うとイライラしてきます。
また、小姑は「お客様然」としていて家事は手伝わず、リビングでダラダラとテレビを見て過ごしているのも気に障ります。最初は、無神経な小姑にムカついていたのですが、最近はこの状況もよし、としている義母にも腹が立ってきました。結局、義母も子離れができていないのでは、と思います。このイライラ、どうしたらよいでしょうか?
「イライラめがね」かけてない?思い込みの可能性
なかなか難しい問題ですね。距離が近いだけに、妹さんのすべての言動が気になってしまいそうです。ただ、ここでいったん立ち止まって考えてもらいたいのは、「イライラめがねをかけて相手を見ていないかな」ということです。イライラめがねをかけてしまうと、どんな些細なことでもイライラしてしまいます。
たとえばデパートの袋に関しても「義母とデパートに買い物に行って何か買ってもらったんだろうな〜」と思い込んでいるだけの可能性もあります。本当はデパート好きの義母を、親孝行のつもりで連れて行ってあげたのかもしれません。はたまた荷物入れのためにたまたまデパートの紙袋を使っているだけかもしれません。相談者さんのなかで「お母さんに甘えている妹像」がイライラめがねによってできあがっているのかもしれませんね。
たった6秒間の深呼吸で落ち着くことも
また、イライラめがねをかけていると、「怒り」のスイッチが入りやすくなってしまいます。実は「怒り」というのは「二次感情」であり、その背後には「つらい」「寂しい」「疲れた」「不安」など、たくさんの感情が隠されています。相談者さんの場合も、もしかしたら「自分も甘えたい」「のんびりしたい」といった思いがあるのかもしれませんね。
もし、「怒り」のスイッチが入りそうなときは、6秒間、ゆっくり深呼吸してみてください。意外とそれだけでイライラが落ち着くこともあります。
また、原始的な方法かもしれませんが、イライラするその場から離れることも大切です。見たくないものが見えてしまう場合には、見えない場所に移動して、外の空気を吸う、好きな音楽を聴くなど、自分の気持ちが落ち着く行動をとってみるのもおすすめです。
独身時代の生活パターンが染みついてる?
ダラダラする義妹を許す義母も「子離れできていないのでは」とご相談内容にありましたが、もしかすると、独身時代に実家暮らししていたときの生活がパターン化していて、滞在中だけその生活リズムが戻っているだけかもしれません。相談者さんとは建物が別の敷地内同居ということですから、より気が緩んで「娘時代」に戻りやすいのかもしれないですね。
とはいえ、相談者さんも普段の生活があって毎日忙しくされていることと思います。自分が忙しくしているのに、実家でダラダラする小姑の姿を目の当たりにするとイライラしてしまいますよね。相談者さんが家事を手伝ってほしいと思う場面があるのであれば、「手伝ってもらえると私はうれしいな」とアサーティブ(さわやかな自己表現)なコミュニケーションで伝えてはいかがでしょうか。心の中で「手伝いもしないなんて!もう!」と思い続けるよりいい関係が築くことができそうです。
本当は義妹も大変なのかも?
妹さんの味方ばかりするつもりはありませんが、逆の立場で考えてみると、相談者さんの不快に思う気持ちが、態度に表れている可能性もゼロではないような気がしています。察するに2人の会話もそれほど多くないのではないでしょうか。
身内ですからつき合いはこれからも続きます。難しいかもしれませんが、一度イライラめがねを外して、視点を変えてみるのも関係改善のきっかけになるのではないでしょうか。
- 妹は「お客さま」であることを自覚して「出しゃばらないほうがいい」と遠慮しているのかな?
- 母をデパートに連れて行ってあげることは、親孝行のためかな?
- 休みのたびに1〜2週間も家を離れるのは、ワンオペ育児が大変なのかな?
などです。それなりに理由があるのかもしれません。事情によっては「甘えてくる娘と許す母親」の図式ではなくなってきます。今はあまりコミュニケーションがないのかもしれませんが 、いろいろ話をすることで分かる事実もあると思います。イライラしていると疲れてしまいますので、機会を見つけて妹さんと気さくな会話をしてみてくださいね。
PROFILE 八木経弥さん
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。
取材・文/大楽眞衣子 イラスト/まゆか!